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金持ちから貧乏転生~金を取るか人を取るか~  作者: 有明


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13/20

第13話:うまくいきすぎている

金運最強、人運最悪だった男が――

異世界で“真逆の運命”を背負わされます。


ゆるく読める逆転系コメディです。

その日は、最初から流れが良かった。


「これ、全部買う」


 俺が言うと、商人は少し驚いた顔をしたあと、すぐに笑った。


「毎度ありだな、坊主」


 前よりも量が多い。それでも問題なく仕入れられる。

 後ろにいる“存在”が、確実に効いていた。


(もう止まらねぇな)


 そんな感覚があった。根拠はない。

 でも、今なら何でもいける気がした。


「それ、売ってくれる?」


「いいよ」


 即決。迷いすらない。

 俺が出せば、相手は受け取る。それが当たり前になっていた。


「……銀貨二十二枚」


 レナが言う。


「過去最高」


(マジか)


 思わず口元が緩む。

 今までで一番の数字。しかも、まだ回せる余裕がある。


「もう一回いけるな」


「やめときなさい」


 即止められた。


「でも――」


「ダメ」


 食い気味に切られる。


「今日の分で十分すぎる」


「まだ余力あるだろ」


「あるけど、やらない」


 レナの声は冷静だったが、少しだけ強かった。


「……なんでそこまで止める」


「流れが良すぎるから」


「は?」


「こういう時は、大体崩れる」


(またそれか)


 正直、ピンとこない。

 今はうまくいっている。それが全てじゃないのか。


「気にしすぎだろ」


「あなたが気にしなさすぎ」


 ピシャリと返される。


「今、完全に目立ってる」


「今に始まったことじゃないだろ」


「レベルが違う」


 言葉が少し強い。


「周り、見て」


 言われて、視線を動かす。


 人はいる。でも、少し距離がある。


(……あ)


 気づく。


 前みたいに気軽に声をかけてくる感じじゃない。

 様子を見ている。観察している。


「“近づいていい相手かどうか”見られてる」


「……」


「あなたじゃなくて、“後ろ”を」


 盗賊たちの存在。それが空気を変えている。


(まぁ、そりゃそうか)


 理解はできる。でも――


「別にいいだろ」


 そう思ってしまう。


「売れてるんだから」


 その一言で、レナの視線が変わった。


「……本気で言ってる?」


「は?」


「それ、“前と同じ”」


 一瞬、意味がわからなかった。


「何が」


「周り見ずに、目先の利益だけ追うところ」


「……」


 言い返そうとして、止まる。


(……そうか?)


 前世の自分が、少しだけよぎる。


「違うだろ」


 否定する。


「今はちゃんと考えてる」


「考えてない」


 即答だった。


「流れに乗ってるだけ」


 少しだけ、イラつく。


「じゃあどうしろって言うんだよ」


「止まる」


「は?」


「一回止めて、整理する」


「今?」


「今」


(意味わかんねぇ)


「そんなことしてる間にチャンス逃すだろ」


「逃していい」


 即答だった。


「その代わり、崩れない」


 静かな声。でも強い。


「あなたは今、“稼ぐこと”しか見えてない」


「……」


「その先、見てない」


 何も言えなかった。


 その時。


「おい」


 聞き慣れた声。


 振り向く。


 盗賊の男だ。


「今日は調子いいじゃねぇか」


「……まぁな」


「ほら、分け前」


 手を出される。


 袋を渡す。


 銀貨二十二枚のうち、十一枚。


 過去最高の“支払い”だった。


「ははっ、すげぇな」


 男が笑う。


「お前ら、使えるじゃねぇか」


(……使える?)


 その言葉が、引っかかる。


「明日も頼むぜ」


 軽い口調。でも、その中にあるのは“当然”だった。


 俺たちが稼ぐこと。渡すこと。

 それが前提になっている。


 男が去る。


 少しの沈黙。


「……ほらね」


 レナが言う。


「もう、“抜ける前提”じゃなくなってる」


「……」


「“使われる側”になってる」


 否定できなかった。


 稼いでいるのは俺たちなのに、主導権は向こうにある。


 その時だった。


「お前ら」


 別の声。


 振り向く。


 知らない顔。だが、雰囲気でわかる。


(……同じだな)


 盗賊。ただし、さっきの連中とは違う。


「面白いことやってるらしいな」


 にやりと笑う。


 その背後にも、数人。


(……増えたな)


 レナの言葉が頭をよぎる。


 目立ちすぎ。


 その意味を理解するには、もう遅かった。


 こうして俺たちは、稼ぎのピークと同時に、崩壊の入り口に立っていた。

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