第16話:仕込み
金運最強、人運最悪だった男が――
異世界で“真逆の運命”を背負わされます。
ゆるく読める逆転系コメディです。
やることは決まった。
あとは、順番と精度。
それだけだ。
「どっちが強い?」
人通りの少ない場所で、俺は小さく聞く。
レナは即答した。
「元からいる方。人数が多い」
「新しい方は?」
「少数。でも荒い。統率は取れてないけど、その分読めない」
(なるほどな)
数で押すか、質で荒らすか。
タイプが違う。
「ぶつけたらどうなる」
「普通なら、数の多い方が勝つ」
「普通じゃない場合は?」
「両方消耗する」
短い答え。
でも、それで十分だった。
(それでいい)
勝敗はどうでもいい。
重要なのは、“余裕をなくすこと”だ。
「火種は新しい方にする」
「理由は?」
「荒い方が先に乗る」
感情で動くやつの方が、煽りやすい。
理屈より先に手が出る。
「納得」
レナが頷く。
話が早い。
「で、どうやって?」
「簡単だろ」
俺は袋を取り出す。
中の銀貨を数枚、取り出して別に分ける。
「これで“取られたことにする”」
「……」
「元の盗賊に、“別のやつらに奪われた”って言う」
「証拠は?」
「これ」
減らした分の袋を軽く振る。
「半分減ってれば、それっぽく見える」
人は“見た目”で判断する。
特に、損をしてる時は。
「雑だけど、通る可能性は高い」
レナが呟く。
「あなたが言うと、余計に」
(まぁな)
それが、俺の武器だ。
正直、気分はよくない。
でも――
(使えるなら使う)
そう割り切るしかない。
「次は?」
「逆もやる」
「……同時に?」
「時間ずらす」
俺は指を立てる。
「先に元の盗賊を煽る」
「そのあと新しい方に“向こうが怒ってる”って流す」
「タイミングが重要」
「そういうこと」
ズレたら意味がない。
うまく重なって、初めて爆発する。
「失敗したら?」
「その場で終わり」
「成功したら?」
「しばらく自由」
レナは少しだけ黙った。
そして――
「……やるしかないか」
小さく呟いた。
その声は、覚悟の音だった。
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