反省とこれからの動向
「――今回の依頼は失敗に終わりました」
「……そうか」
冒険者ギルドにある会議室では、およそ二十人の冒険者とギルドマスターである『オーウェン』が、長方形の巨大な机を囲んでいた。その面持ちは曇っており、この部屋には暗い雰囲気が漂っている。
「最初は何事もなく、順調に進んでいました。しかし、しばらくしてテラーベアーに襲われまして。その個体は無事討伐したのですが、続けざまに多数の魔物に襲われました。群れは多種多様な種によって構成され、共生関係はありませんでした。どうやら、我々は魔物たちの狩りに巻き込まれたようです」
「なるほどな。遭遇した魔物の数は?」
「不明です。あまりにも多く、次々と数を増やしていったため、正確な数は図り切れませんでした。ただ、少なくとも二百頭は討伐したかと」
確かに、俺たちは優に二百頭は討伐しているはずだ。なんなら三百近くにすらなるだろう。
魔物の死体を回収することはできなかったが、あそこにはそれだけの死体が転がっていた。まぁ、今ごろは全部捕食されてしまっただろうが。仕方ないことだが、少しもったいないことをしたな。
「街道にそこまで魔物が現れるのは明らかにおかしい……どうやら、ただ事ではないようだな」
オーウェンは難しい顔を浮かべ、そう口にした。
「幸い死者は出ませんでしたが、戦闘を続けていれば確実に誰かは死んでいたでしょうね」
「これだけ腕利きを集めても失敗するとなると、まず間違いなくなにかよくない事が起きているな。縄張り争いか、強力な存在が移動してきたか……」
「そうなります。正直、なめていましたね。これだけの戦力があれば余裕だと思っていましたが、それがこのざまですから」
「それも無理はない、俺だってそう思っていたからな」
今回のメンバーであれば、Sランクの魔物も討伐することができるだろう。二頭同時となれば厳しいだろうが、一頭であれば余裕を持って戦うことができるはずだ。
低ランクの魔物の群れは、はっきり言って余裕と言える。しかし、今回の群れは桁違いだった。
長時間の戦闘というのは、時にSランクの魔物よりも危険なことがある。数分程度の戦闘であれば問題ないが、それが数十分にもなればいろいろと問題が出てくるのだ。
長時間戦闘すれば体力を消耗して動きが鈍くなっていく。そして多数の魔物を相手にしていると足場が悪くなっていき、今回のように周りを囲まれていれば加速度的に状況が悪くなっていくことだろう。
俺にも慢心があった。
多少強力な魔物に出会ったとしても、このメンバーであれば問題なく討伐することができると思っていた。しかし、その結果がこれなのだから笑えない。
「とにもかくにも、魔物の動向を調査する必要があるか。もう一度雪かきしようとしても、また同じことになるだろうしな」
今回の依頼で出会った魔物の数は、明らかに異常だった。偶然が重なってあれほどの数が襲い掛かってきた可能性もあるが、楽観的に考えるのはやめておいた方がいいだろう。
「今から再度人数を集めるのには時間がかかる。だからこのメンバーで調査に臨みたい。協力してくれるか?」
そうオーウェンに問われ、俺たちはしばし沈黙した。
確かにもう一度構成員を見直すのは時間の無駄だろう。ここには腕利きが多数いるし、それならもう一度この構成で行動するほうが断然効率がいいはずだ。
あまり時間をかけていられないのが現状である。少しでも行動は早い方がいいだろう。
俺はアリスとアルバニアの二人と顔を見合わせる。すると、二人からうなずきが返ってきた。二人はこのまま調査に参加するのは賛成のようである。
「自分はかまいません。この時期に依頼を受ける高ランクの冒険者は少ないでしょうし」
「俺らもかまわねぇよ」
「私も問題ない」
「俺たちもだ」
「……そうか。すまないな、助かる」
この場にいる全員が、調査に意欲的だった。一人くらいは降りる者がいるかとも思っていたんだがな。
ここにいるのは、全員が高ランク冒険者と言われる者たちだ。それ相応のプライドはあるし、依頼を失敗したことを気にかけるのは当然だろう。
「今からいろいろと準備するにしても、少し時間がかかる。今日明日は無理だとして、調査を開始するのは二日後にしよう。具体的な内容は決まり次第、明日中に追って連絡する。今日は疲れただろう、ゆっくりと休んでくれ」
俺たちは軽く挨拶を交わした後、屋敷に帰るのだった。




