二人の新たな装備(2)
アルバニアは『無限の矢筒』で作り出した矢を、『パワーショットボウ』で構える。
的との距離は約二十メートル。的は動いていないし、これくらいの距離ならアルバニアにかかれば百発百中だろう。
この屋敷の庭にも当然かなりの雪が積もっていたのだが、現在は雪かきをして一か所に固めてあった。そのため、庭の端っこには雪の山ができていたりする。
身体強化の魔法を使っていたとは言え、雪かきというのはなかなかに面倒な作業だった。装備の使用テストをするための場所確保に、三時間ほどかかってしまったしな。
「――いきます」
そう言って、アルバニアは矢を放った。
ヒュンッ……という小さな空を切る音を立ながら矢は的へと飛んでいき、そして――。
「……ん? どうなったんだ?」
「えっと……もしかして外した?」
「いえ、そんなはずは……」
的は直径五十センチの円形と、決して小さいわけではない。いくら使い慣れていなかったとはいえ、これでアルバニアが外すというのは考えづらかった。
無限の矢筒で作り出した矢は数分ほどすれば消えてしまうらしいが、それでも先ほどの矢はまだ作り出してから一分と少しほどしか立っていなかったはずだ。なら、どこかには必ずあるはずである。
俺たちは的へと近づき、あたりをくまなく見回した。しかし、一向に矢は見当たらない。
半透明とはいえ、気を配っていればしっかりと見えるのだ。にもかかわらず、誰も見つけられないというのは少し考えづらかった。
「……あっ、二人ともこれを見て!」
そう呼びかけられ、俺とアルバニアはアリスの見ていたものを見た。
それは、先ほどアルバニアが射ようとしていた的。よく見てみると、そのど真ん中に小さな穴が開いていたのだ。
もしやと思い、俺たちは的の向こう側にあった雪の山を見た。
すると、そこには半透明の矢が突き刺さっていた。そして俺たちが見つけたと同時に、その矢は光となって消えていく。
的の厚さは十センチほどと、それなりに厚みがあった。的は木製だが決して脆くはなく、それどころか堅い部類の木材でできている。
これをなんの抵抗もなく貫くためには、相当貫通力がないとできないことだろう。
「これは……うれしい誤算ですね」
「どうやら、思っていたよりも貫通力が高かったみたいだな」
先ほどアルバニアはあまり力を込めていなかったが、それでこの威力である。力をめいっぱい込めて放てば、さらに威力が増すことだろう。
――次は無限の矢筒のモードを切り替えて、残り三種の矢を試した。
『炸裂矢』は勢いよくなにかに当たると小爆発を起こし、破片をまき散らす矢だ。
狙った的はズタズタになっていたし、攻撃力はかなり高い。ただ、周囲に破片が飛び散るという性質上、標的の近くに人がいる状況では使えないだろうな。
『炎上矢』はいわゆる、一般的に火矢と言われるものだ。
当然水につけると火は消えてしまうのだが、なんとこの矢は水から上げると再び火が付いたのだ。消えてしまってもわざわざつけ直す必要がないのは便利だな。
なお最初は燃えておらず、弓から放たれると同時に火が付くようできているようだ。
そして最後に『毒矢』だが、本当にその名と通りの矢だ。
毒性は体内に入ると激痛が走る神経毒のようなもので、痛みは一時間ほど続くとイグニスは言っていた。
人間にも魔物にも作用するようなので、使い勝手はかなりいいんじゃないか? まぁ、毒性の操作はできないようだが。
それぞれ一長一短といった感じで、得意不得意があるようだ。状況に合わせて使い分けるのがいいだろう。イグニスもそれを想定して作ったんだろうしな。
続いて、次に試すのはアリスの『ネビュラワンド』だ。
アルバニアの新しいダガーは本当に頑丈なだけで、なにか特殊な能力があるわけではない。なので、別に試さずとも問題ないだろう。
「――ウォーターブラスト!」
アリスはネビュラワンドを構えると、先ほども使った的目掛けて爆発する水球を放った。水球は真っ直ぐ飛んでいき、直撃すると的は粉々に砕け散る。
相変わらずの威力だが、水球を放った張本人のアリスは渋い顔をしていた。
「どうしたんだ?」
「いや、思っていた以上に扱いづらくて。確かに性能はかなり高いみたいだけど、前の杖と微妙に感覚が違うせいでうまく魔法が使えないのよ」
アリスは再び水球を放つ。
そう言われてみれば、心なしか魔法を発動するのに前よりも時間がかかっているように思えた。それに、威力も前とあまり変わっているようには見えない。
『スターサファイアのバングル』を身につけているので、水と聖属性魔法の安定性が上がっているはずだが、それでもあまりにも変化がなかった。
前に使っていた杖よりも明らかに性能は高いが、感覚に慣れていないと思うように扱えないなんてことがあるのか。
「この感覚に慣れれば、前よりもうまく魔法を使えるようになると思うけど、しばらくは練習が必要ね」
アリスとアルバニアは新たな装備を手にならすため、しばらく鍛錬を行うことにした。俺はそれに協力し、しばらく手伝うのだった。




