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二人の新たな装備(1)

 俺たちがチェイスに帰ってきてから、しばらく時間がたった。アルバニアも無事に帰ってきて、以前のような日常は完全に取り戻されている。


 今まで感じてきた苦悩のすべてをアリスにこぼしたためか、現在の俺は不思議と清々しい思いだった。

 トラウマがフラッシュバックして、やけになっていたのは否定できない。でも、俺はあれでよかったんだと思う。


 黙っていれば余計心配させていただろうし、あのタイミングで言わなければ今後一生言うことはなかったはずだ。

 だから、あの行動はきっと正解だったんだろう。俺はそう確信している。


 ――  ――  ――  ――  ――


 現在の季節は、すでに冬真っただ中。しかも、今年の冬は特に厳しそうである。


 気温もそうなのだが、特にすごいのが『積雪』だ。少し前から雪が降り始めて、現在では五十センチ近くも積もっている所さえあった。

 昨年は最高でも十センチくらいしか積もっていなかったのを考えると、今年の降雪量は明らかに異常である。


 ただ、こういう大雪は十年に一度ほどあることらしい。そのため、それほど珍しいことでもないようだ。


 俺の感覚では、一センチでも積もっていれば『今年はよく降るなぁ』という感じだ。それこそ五センチも積もれば、大雪と言っても過言ではない。

 俺が住んでいたのは関西の、それも雪がほとんど降らない所だった。スキーなどのウィンタースポーツをしに遠くへ行くこともなかったし、こっちに来るまでは積もった雪というのはほとんど見たことがなかった。


 こっちに来て、俺は始めてまともに積もった雪を見た。予想以上に足を取られたし、雪の中では何倍も動きづらかったのを今でも覚えている。

 去年の量ですら驚愕だったのに、今年はその約五倍だ。俺はまたもや驚愕することになった。



「――これ、最初はどれから試すの?」

「まずは『通常矢』でいいんじゃないか? 一番最初だし、威力を見るっていう意味でもそれがいいと思うな」

「そうですね、まずは通常矢から試したいと思います」


 アルバニアは背負っている、青い筒状のものについているボタンを押す。すると、瞬時に、中に半透明の矢が一本生成された。

 生成された矢を手に取ると、アルバニアはそれを眺める。


「……問題はないみたいですね」


 そして、アルバニアはそう言葉を漏らした。


 ――現在、俺たちは屋敷の庭にいた。イグニスに頼んでいた二人の新しい装備が完成したので、今はそれの使用テストを行っている。

 新しい装備は計四つ。アルバニアの弓と矢筒に二本のダガー、そしてアリスの魔法の杖だ。


 矢筒は『無限の矢筒』といい、その名のとおり無限に矢を生成することのできるマジックアイテムだ。

 そして、この無限の矢筒にはイグニスが遊び心でつけた機能がある。それは前述のとおり、生成する矢の性質を変えることができるというものだ。


 つまみがついており、それを回すことによってモードを切り替えることができる。

 モードは全部で四つあり、それぞれ『通常矢・炸裂矢・炎上矢・毒矢』になっていた。


 イグニスが以前説明していたように、無限の矢筒はマジックアイテムではあるが、魔力を勝手に使ってくれるタイプなのだ。そのため、魔力が操作できないアルバニアでも問題なく扱うことができた。


 そして無限の矢筒で作り出した矢を打ち出すのは、『パワーショットボウ』というコンパウンドボウである。

 コンパウンドボウというのは、てこの原理を利用して引きやすく、そして威力を高めた弓のことをいう。そんなコンパウンドボウをさらに強化したのが、この『パワーショットボウ』なのである。


 魔力を使って強化することに加え、パワーショットボウには以前のものにはなかった便利な機能がついている。それは、無限の矢筒についている機構とドッキングさせることによって、より持ち歩きやすくなったのだ。

 以前、アルバニアは肩にヒモかけるようにして持ち運んでいたのだが、それによっていくらか動作の妨げになっていた。パワーショットボウはそれが改善されたので、より動きやすくなっていることだろう。


 次に二本のダガーは、ミスリルで作られておりとにかく頑丈だ。魔法金属で作られているので、これもいちおう『魔剣』に分類される。

 アルバニアのサブ武器であり、二本とも同じ形状だ。なにか能力があるわけではなく、本当にただ頑丈なダガーである。


 アリスの杖は『ネビュラワンド』と名付けられた、俺の『黒白の鎧』を思わせるデザインをした魔法の杖である。


 柄は白っぽい金色の金属で作られており、『パワーストーン』と呼ばれる先端についる宝石は、黒く星雲のような模様があった。

 柄にはオリハルコンと天上希石が使われており、パワーストーンには『死と破壊の権現』のコアが使われているようである。


 『魔法の杖』というのは、魔法の発動を効率化するために使用されるマジックアイテムのことだ。

 大まかに、『魔力の消費低減・魔法の安定化・発動の高速化』といった効果があるが、『ネビュラワンド』はその効果がとんでもなく高いらしい。


 向き不向きがあるらしいが、杖を使用することで二倍ほども魔法を効率化できることもあるそうだ。

 杖自体も武器になるので、杖を持つ魔法使いは結構な人数いるそうである。


「――では、さっそく引いてみます」


 そう言い、アルバニアは的めがけて『パワーショットボウ』を構えた。

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