レストラン
太陽が頂点へと差しかかった頃、俺とアリスは貴族街にあるレストランにいた。
ただのレストランではなく、れっきとした高級レストランである。
昼食にいい場所はないかとクレアに聞いたら、真っ先にここを勧められた。
なんでもここのローストラムのステーキは格別らしく、一度食べただけでとりこになったそうだ。
まぁほかにも昼食をここで食べることにした理由はあるが、大体はそんなところである。
今日はおもちゃ屋と本屋をアリスと一緒に見て回った。
俺たちが行ったおもちゃ屋は、貴族街にあるかなり大きな店だ。育児グッズや絵本なども置いてあり、様々な層をターゲットにしている店だったのだろう。
その一角にぬいぐるみのコーナーがあり、数多くのぬいぐるみがそこには置いてあった。
アリスはよくその店に行くそうで、なかなかに慣れているように見えた。
俺はあまりのファンシーさに全く心が休まらなかったのだが、アリスが楽しそうにしていたのが印象的だった。
あそこまで楽しそうなのは、あまり見たことがない。
結局そこでは中くらいの羊と鳥のぬいぐるみ、そして黒色とクリーム色の小さなクマのぬいぐるみを買った。
クマのぬいぐるみは『ペアぬいぐるみ』と言うそうで、やたら店員に勧められたのだ。
店員は『かなり貴重で、今では手に入らない』と言っており、確かにかわいかったので、俺たちは即決で購入を決めた。
そして本屋だが、ここは俺の希望だ。
商業街にあり、すでに何度か行ったことはあるものの、店の雰囲気がいいため今日もいくことにしたのだ。
さすがに目新しいものはなかったが、目に留まったものは何冊かあった。
あまり新刊が入荷されることはないのだが、たまたま今日は運がよかったのだろう。
俺は魔法の本五冊と物語の本を十冊ほど購入した。アリスはしばらく悩んだ結果、一冊のよくわからない本を買っていた。
題名に『恋の魔法』と書かれていたが、魔法関係の本なのか? ……いや、物語の棚にあったものだし、小説なのかもしれない。
ともかくそういうことがあり、現在はレストランで注文した料理を待っていた。
この時間帯は比較的すいているらしいのだが、念のため事前に予約を取っておいた。予約を取っていたのでスムーズに席にも案内してくれたし、予約したのは正解だっただろう。
「――お待たせしました、こちらが当店自慢のローストラムのステーキ、スープそして白パンでございます」
店員がサービスワゴンに料理をのせて俺たちのいるテーブルまでやって来た。そしてテーブルに料理を置き、かぶせてあった金属のふたを取る。
すると、モワッと湯気が上がり、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐった。
「ごゆっくり」
そう言うと、店員は下がっていった。
俺たちはローストラムのステーキに口をつける。
さすがは高級レストランなだけはあり、かなりおいしい。俺の貧相な語彙力では言い表せないほど、絶品だった。
しっかりとした肉の歯ごたえもあるのだが、筋がなく溶けるようにきえていく。それに臭みが全くなく口当たりもいいため、いい肉であり手間暇がかかっているというのがすぐにわかった。
しばらくしてステーキを食べ終わる頃、俺は口を開いた。
「――思えばアリスたちと会ってから結構時間がたっているな。あまり意識していなかったが、もう一年以上にもなるのか」
「そうね、確かにあまり考えたことなかったけど、もうそんなにたつのね」
なにか感慨深いものを感じる。
一年少しとだけ聞けばあまり長くないようにも思えるが、いろいろとあったためかそれが途方もない時間のように感じられた。
「本当にいろいろあったな、強力な魔物を討伐したりだとか、戦争に参加したりだとか」
「そうね。――でも、私はけっこう楽しかったわよ?」
「俺もだ。……まぁ、もう一度経験したいとは思わないけどな」
俺たちはこれまでにあったことを話し合い、会話に花を咲かせる。
行事が悪いと言われそうだが、食べながら会話していたためかあっという間にテーブルの上にあった料理を食べ終えてしまった。
料理をすべて食べ終えると、店員が食後のデザートであるシャーベットを持ってきてくれた。とある地方にだけ自生する希少な果物を使っているらしく、それなりの値段がするものである。
アイスなんて食べるのはいつぶりだろうか?
「――ソータ、私はあなたに感謝しているわ。最初に出会ったときにもし助けてくれなかったら、私たちは死んでいただろうから。そして、それ以外にも何度も助けてもらったしね」
シャーベットを味わっていると、アリスがそう話題を切り出す。
アリスの口元は、小さく弧を描いていた。
「……俺もだよ。励まされたこともあったし、叱られたこともあった。でも……だからこそ、俺はアリスに感謝している。最後には笑って許してくれたし、一緒に打開策も考えてくれた。……俺はアリスに頼りすぎだな」
「ふふっ、もっと頼ってくれてもいいのよ?」
「あぁ、今後ともよろしく頼む」
俺たちは共にほほえみを浮かべた。




