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堪えぬ恋情

 たくさんのブックマークと評価をありがとうございます!

 太陽が頂上へとさしかかり、さんさんと陽光が降りそそぐ。だいぶ暖かくなってきたため、町には薄着の者も増えてきた。

 もう少しすれば初夏も終わる。次に来るのは、本格的な夏だ。


 ただ蒸し暑く、じめじめとした都市部の日本とは違って、ここは比較的涼しかった。舗装されていない森林が町の外にはたくさん広がっているからかもしれない。

 どうやら、『ヒートアイランド』というのはかなり深刻な問題らしいな。


「――はぁ……」


 俺は自然とため息をついた。

 別に暑かったりするわけではない。実は一つ、悩み事があったからだ。


 これは最近……いや、ちょっと前から自覚していたことだ。

 ただ、以前は目をそらしていたというか、後回しにしていたというか……ともかく、最近やっと自覚したことである。


 ――俺は、ア(・)リ(・)ス(・)が(・)好(・)き(・)だ。


 友人や仲間に対してのものではなく、異性としてだ。

 以前は友人や仲間に対しての好意だったが、それはいつの間にか恋愛感情へと変化していたようである。

 いつ頃そうなったのかは覚えていないが、気がついたときにはすでにそうなっていた。


 それを自覚したとたん、なにもかもが手につかなくなり、食事も思うように喉を通らなかった。

 胸が締めつけられているかのように苦しくなり、なにをしていても全く落ち着かないのだ。気がついたら、無意識のうちにアリスを目で追っていたこともあった。


 なので、現在は気分転換と気持ちの整理をするために、気晴らしとして散歩をしていた。

 特に用はないが、今は屋敷にいるだけでも落ち着かないのだ。だから、少しでもそれを落ち着かせるためである。


 うぬぼれているつもりはないが、アリスは少なからず俺に好意を持っているはずだ。

 願わくば相思相愛でありたいが、今の俺ではまともな判断ができそうにない。

 だからこそ、いまいち踏ん切りがつかなかった。


「――ソータ君、こんな所で会うなんて奇遇ね」

「……え? あぁ、クレアか」


 ボーっと歩いていると、クレアが唐突に後ろから話しかけてきた。いきなりの事だったために、一瞬反応が遅れてしまう。


「……どうしたの? 元気がないみたいだけど」

「あー、えっと……別にそこまでのことじゃないから、気にしなくて大丈夫だ」

「とてもそうは見えないけどね」


 クレアはいち早く俺の異変を見抜いた。

 あまり表には出さないようにしているつもりだったが、クレアには意味がなかったか。


「なにか悩み事? 私でよければ、話を聞くわよ?」

「いや、でもな……」

「ここでは言いづらいのなら、近くの店に入る? あそこなら落ち着いて話せると思うけど」

「あー……じゃあ、お言葉に甘えて」


 心配してくれているのにそれを無下にするというのも憚られ、俺はクレアと一緒に近くにあったカフェのような店へと入っていく。

 クレアは店員に希望を伝え、俺たちは店の奥の方にあった角の席についた。そして二人分の飲み物を頼むと、クレアは真剣な表情で俺を見る。


「さて、なにを悩んでいるのか聞かせてもらうわ。自分で言うのはなんだけど、それなりに人生経験は豊富だし、きっと力になれるわ」

「……わかった。俺は――」


 クレアへ、俺がアリスに惚れていることを正直に話した。

 驚いたり笑われることもなく、クレアは真剣に俺の話を聞いてくれる。


「……なるほど。もちろん、本気よね?」

「あぁ、それは間違いない」


 これは噓偽りのない、俺の本心だ。

 それに、もしも本気でなかったのなら、ここまで悩んではいなかっただろう。遊びならクレアにも相談はしないはずだ。


「なら、できる限り協力させてもらうわ」

「そう言ってもらえると心強いよ」


 一人だけで考えるよりは、誰かと一緒の方がいい結論が出るはずだ。

 必ずしもそうとは限らないが、今の状態ではまともに考えることができそうもないので、協力してくれるのは願ったり叶ったりだった。


「じゃあまず聞きたいんだけど、ソータ君は恋愛ってしたことある?」

「だいぶ前だが、いちおう」

「そのときはどこまでいった?」


 『どこまで』とは、どういう意味だろうか?

 いまいちピンと来ないが、恋愛の進展具合のことを言っているのかもしれない。


「恋人になったところまで。その先は小さかったからなかった」

「そう……じゃあ、実際に付き合うまでの流れは大体わかるわね?」

「まぁ、大体は」

「そういうことなら大丈夫よ、自信を持ちなさい」


 クレアはほほえんだ。そこに欺瞞(ぎまん)は見当たらない。


「でも、そう言われてもな……」

「まぁ、そうよね。なら、最初はデートをしてみたらどう? 別に知り合ったばっかりじゃないんだし、断られる心配はないわ」

「……デートか」


 ちょっとブランクがありすぎて、『デート』とはどういった所に行けばいいのか、どういったことをすればいいのか忘れてしまった。


「デートって、どういった場所にいけばいいんだ?」

「そうね……そこは一緒に考えましょう。別に正解はないんだし、そこは自由でかまわないわ」


 俺はクレアと、デートのプランを考えることになったのだった。

 この章では、主にソータたちの内面に触れていきます。

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