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轟く破砕音

「――きゃあっ!? 急になに!?」

「うおっ!? こ、これは」


 急に部屋の灯りがすべて消えて辺りが真っ暗になったためか、あちこちから悲鳴や戸惑いの声が聞こえてくる。

 皿の割れる音までもが聞こえてくるが、少しの間我慢してもらおう。


 俺がミーナから預かっていた物とは、『帝城のメイン魔力供給機構』を一時的に停止させるボタンだ。

 これを押すことにより、魔力で動作するすべての照明器具を一瞬にして消すことができるのだ。


 少し前に魔力供給機構へ小細工を施していたそうで、こういう時のために温存していたそうだ。

 パーティー会場で仕掛けると言ったら、ミーナはこれを貸してくれた。

 一時的だが、即座に遠距離から灯りを完全に消すことができるというこれは、使い方次第では相当危険なものになる。

 だからこそ、チャンスは一度きりだ。


 俺は灯りが完全に消えると、《ナイトビジョン》という魔法を使った。

 即座に目を暗順応させ、暗闇の中でも物を見えるようにするという、身体強化魔法の一種だ。


 魔法を使った瞬間、視界が明るくなりパーティー会場の様子が鮮明に見えてくる。

 持っていた皿を落としている者や、転んでしまっている者などがおり、とても酷い状況だった。

 カイルを見ると、怯えた表情を浮かべながら姿勢を低くしていた。


 俺は《ウインドカッター》をカイルの上部へと放つ。

 直接カイルを狙ってもよかったんだが、控えていた宮廷魔法使いが『対遠距離攻撃用の防御魔法』を発動させたのを見て、即座に違うプランに変更した形だ。

 見ればカイルの護衛も辺りを警戒しているので、直接狙っていれば防がれたかもしれなかった。

 こういうこともあるだろうと事前に予想していたので、すでに対処済みなのである。


 風の刃は一直線に飛んでいくと、天井から生えていた一本のくさりを切断した。するとそ(・)れ(・)は落下し、ガシャアアアァンッ!! という強烈な破砕音を立てる。


「きゃあああぁっ!?」

「だ、誰か明かりの魔法をっ!!」


 唐突に鳴り響いた大きな音に、会場は一気にパニックとなった。

 複数人がほぼ同時に《ライト》を使い、少し会場が照らされる。しかし、それで明るくなるのはごく一部だ。


 会場にいた者たちがなにがあったのかと見回し始めたそのとき、魔力供給機構が再び稼働し始め、会場が再び灯りによって照らされた。

 それにより、会場の混乱は収まり始める。だがしかし、舞台の上を見た者が悲鳴をあげた。


「へ、陛下!?」


 一人の執事が膝から崩れ落ちる。


 ――そこには、落ちてきたシ(・)ャ(・)ン(・)デ(・)リ(・)ア(・)によって押しつぶされたカイルの姿があった。

 見えているのは片腕だけだが、相当量血があたりに広がっているため、無事ではないことはすぐにわかる。


 会場が再びパニックになる。

 一人だけ冷静なのもおかしいので、俺も驚愕に目を見開くふりをしておいた。

 ミーナもしているし、おかしくはないはずだ。


「皆さん落ち着いてください!」


 そんな中、一人の男の声が会場内に響く。マイルズだ。

 マイルズが声を上げた事により、いくらかパニックは収まった。


「非常事態につき、私がこの場の指揮を執らせていただきます! 貴族の方々は早急に避難をお願いします! メイドや護衛の方々も気を抜かないでください!」


 貴族たちはすぐにでもこの場を離れるために、そそくさと会場を出ていった。マイルズも護衛を連れて貴族たちについていく。


 あまり現場を見られるのも嬉しくないしな。

 ばれないとは思うが、推進派の者に詳しく調べられるのはできるだけ避けたい。


「私たちも場所を移しましょうか、ずっとここにいるのも変だわ」

「うん、そうだね」

「ふふふっ……」


 ミーナとベストの二人と共に、俺はパーティー会場を後にするのだった。

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