酔いと狂気(2)
酒というのは、薬であると同時に毒のようだと思う。
適度な量であればいい薬になることもあるのだろう。だがしかし、何事も度が過ぎるのはよくないことだ。
それは、今をもって確信に変わる。
「――すー……」
「あははっ!! アルバニアが、アルバニアが寝てる!」
「ねぇー聞いてるのー? だから、ソータはもっとおしゃれに気をつかった方がいいと私は思うのよー」
「それで私はその子にこう言ったの! 『助けてあげるから私の後ろに隠れてなさい』って! それでその子がねー!」
――その場を支配するのは、『酔いと狂気』。
各々が好き勝手に行動し、もはやそこには正気な者が誰一人として存在しなかった。
誰がいけなかったのか? それは、誰にもわからない。しかし、こうなった明確な理由はいくつかあった。
まずは人選である。
アリスとアルバニアは、そこまで酒というのを飲んだことがなかった。そして、クレアも二人と同じようにあまり飲んだことがなかったので、セーブする者が一人もいなかったのである。
ソータは酒を飲んだ経験がなく、誰も加減が分からなかったので、結果的に気がつけば相当な量を口にしていたのだ。
そして、これは酒側の問題である。なぜかといえば、ビンに貼ってあるラベルには、アルコール度数などというものは一切書いてなかったのだ。
ラベルには製品名や原材料くらいしか書かれておらず、成分表や賞味期限などは載っていなかった。
そしてそれに加え、あまりにも飲みやすかったがために、四人はアルコール度数を一切気にも留めていなかったのだ。
四人のそばには空いたビンが何本も転がっており、その中には度数が二十パーセントを超えるものも含まれていた。
ソータが店員に、『飲みやすい酒を一種類ずつ売ってくれ』と言ったのがあだとなった形だ。
「こんど私が『こーでぃねーと』してあげるわ! だから、よろこびなさい!」
「アリスが! あははっ! アリスがー!」
「そしてその男を背負い投げしてその子を助けたのー! そしたらその子の表情がねー!」
「んー……」
アリスはソータに絡み、ソータはとにかく笑い、クレアはずっと武勇伝を語っていた。アルバニアにいたっては熟睡している。
普段の様子とは比べものにならないほど、今の四人の様子はひどいものだ。
その地獄のような酒盛りは、夜明けごろまで続くのだった。
―― ―― ―― ―― ――
「――ぐっ、うぅー……」
俺は痛む頭を我慢しながら体を起こす。
俺がいたのはリビングだった。そして、なぜか俺はベッドではなくソファーで寝ている。
「あー……? なんでアリスとアルバニアとクレアがいるんだ?」
そこには今言った三人が寝ていた。
ただ普通に寝ていたわけではなく、アリスはクッションを抱きながら寝ており、なぜかアルバニアとクレアは抱き合いながら寝ている。
しばらく気だるい頭を動かしていると、ある程度のことを思い出してきた。
――確か、俺は昨夜三人と酒盛りをしたんだったな。しかし、それがどんなものだったのかは、まるで思い出せなかった。
「……これを見る限り、相当酔っていたみたいだな」
俺たちの周りには酒瓶が無造作に転がっており、その数は優に十本を超えている。
窓の外を見てみると、日は完全に昇りきっていた――いや、むしろ少し傾いてさえいる。壁にかかっている時計を確認すると、二時半あたりを示していた。
……特にやることがなかったとはいえ、さすがにこれは時間を無駄にしすぎだろう。
「とりあえず、なにか飲もう……喉が渇いた」
俺はストレージからコップを取り出すと、その中に魔法で作った水を入れて、一気に飲み干した。
……以後、酒には気をつけることにしよう。




