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酔いと狂気(1)

※お酒は二十歳になってから

 俺がリビングに入ると、アリスは何かを飲んでいた。


「アリス、何を飲んでいるんだ?」

「これ? 『ワイン』よ、クレアにもらったの」

「……え? ワイン?」


 アリスは透き通った赤い液体の入っているグラスを俺に見せてくる。グラスからは濃厚なブドウの香りが漂ってくると、俺の喉を鳴らした。

 ――いやまて、そうじゃない。


「アリスはいま十(・)七(・)歳(・)だろ? 未成年は酒を飲んだらダメだぞ」


 そう、アリスはまだ十七歳なのだ。

 確か誕生日は秋だったので、最初にあったときよりは年齢が一つ上がってはいる。しかし、未成年なのに変わりはない。


「未成年? あぁ、そういうこと。ソータ、この国では飲酒は十(・)二(・)歳(・)からしていいのよ?」

「えっ……それ、本当か?」

「えぇ、ソータも飲む? これ、おいしいわよ?」


 俺はアリスからグラスを受け取った。

 なんとなく成り行きで受け取ったが……飲んでも問題ないんだよな? まぁアリスも飲んでいるし、問題はないのか。


「……本当に飲むのね」


 グラスに口をつけると、アリスがなにかを言った気がした。しかし、俺は構わずにワインを口にする。

 ワインが口に入った瞬間、口の中がブドウの芳醇な香りに包まれた。そして次の瞬間には、豊かなワインの甘みが広がる。喉に通すと、喉がわずかに熱を持ったように感じた。


 初めてワインを飲んだが、思っていたよりもおいしかった。

 このワインが特別そうなのか、それともすべてがそうなのか。俺にはわからなかったが、いろいろと興味がわいてきた。


「どう?」

「おいしい。甘くて飲みやすかったが、これって高かったりするんじゃないか?」

「そうね、ワインって一括りに言ってもピンキリだから価格はそれにもよるけど、これは一本金貨五枚くらいじゃないかしら?」

「……結構するんだな」


 飲み物に五万円も出すのは、さすがに憚られるな。


「そんなことないわよ? 高いものだと一本で豪邸が立つものとかもあるらしいし、嗜好品だからこれくらいは普通にするわね」

「そうか……まぁ、とりあえずいろいろと酒類を買ってみるか。――よし、ちょっと行ってくる」

「……買い過ぎないようにね」


 興味が出てきたので、俺は様々な種類のものを飲んでみるために、酒類を買いに外へと出ていった。


 ――  ――  ――  ――  ――


 私の目の前には、アルコール飲料の入ったビンがたくさん置かれていた。これは、全部ソータが買ってきたものだ。


 私が分けてあげたワインを飲んだと思ったら、すぐに家を飛び出していったのだ。

 なんでもワインを気に入ったらしく、いろいろとお酒を飲んでみたくなったらしい。……ほんと、興味がある物には一目散なんだから。


 その結果集まったのは、赤と白のワインに果実酒、そしてエールやビールなんかだ。

 『とりあえずいろいろと買ってみた』っていうのが丸わかりね。


「――じゃあ、さっそく『酒宴(しゅえん)』を開催しようか」

「酒盛りでしょ?」

「……少しぐらい、気取らせてくれたっていいと思わないか?」


 私がつっこむと、ソータは拗ねた。

 ソータ的には気取ったセリフを言ったつもりみたいだけど、一周回って私には少し滑稽に思えた。


「別に意味自体は間違ってないけどね」


 すると、そこへソータをフォローするような声が聞こえてくる。クレアだ。

 この場には、私のほかにも姉さんやソータ、そしてクレアがいる。ソータは『買いに行っている途中で会ったから誘ってみた』と言っていた。


「でも、少しくどくない? 普通に酒盛りって言った方がよかったと思うけど」

「……もう俺が悪かったってことでいいから、さっさと始めるぞ」


 ソータは弁明の匙(さじ)を投げると、お酒の入ったビンを机の下にのける。そして、端に置いてあったジャーキーやドライフルーツにナッツ類などのおつまみを、机の中心に置いた。

 逃げたわね、もうちょっとからかいたかったのに。


「よし、じゃあ開けるぞ」


 ソータはそう言い、ワインのコルクを引き抜いた。

 ポンッ! という音と共にコルクは抜かれ、柑橘系のような香りが漂ってくる。ソータが開けたのは白ワインだ。


「あれ? 赤と匂いは違うんだな」

「そうね。香りがけっこう強いし、このワインは若いものじゃないかしら?」

「へぇー、そんなことまでわかるのか?」

「私もそんなに知らないから当てずっぽうよ?」


 そこまで私はワインを飲んだことがないしね。……父さんなら、もっと違う感想が出てくるのかもしれない。

 ソータはグラスにワインを四人分注いだ。グラスを手に持ったらダメって注意するのは無粋かしら?


 私たちはグラスを受け取ると、ワインに口をつける。すると、しっかりとした酸味とまろやかな風味で口が満たされた。

 なかなかおいしいわね。


「これもうまいな!」

「たくさん種類があるし、いろいろと楽しめそうね」


 私たちはいろんなお酒を飲み比べしながら、長い夜を過ごすのだった。

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