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二人の装備(2)

「――ローブは特に問題ないからいいとして、私は新しい杖がほしいわね。単純に攻撃力がもっとほしいわ」

「私は新しい弓とダガーですね。服は心配ではありますが、弓士ですので対象に近づくことはあまりありません。ダガーは保険といった意味合いが強いので」

「うん、なるほどなるほど……」


 イグニスは適当な無地の紙を取り出してくると、メモを取った。

 走り書きであり読み取ることはできなかったが、自分さえ読めれば問題ないのだろう。


「じゃあまずアリスさんから聞くけど、どういった杖がほしいんだい? いろいろと形式はあるけど、僕は自由にやるからその辺は気にしなくてもいいよ」

「そうね……近接戦闘をすることがあるから、できるだけ頑丈なものがいいわね。先端につける『パワーストーン』は鋭くとがらせて、長さは身長よりも少し短いくらいで」

「なるほど、わかった。アルバニアさんは?」

「まず弓ですが、可能ならば引きやすくしたり、矢の威力を増幅させるような機構が備わったものが望ましいですね。ダガーに特殊な機能は必要ないので、扱いやすいようにしていただけると。――あっそれと、矢筒も改善したいですね。激しく動いたりすると、矢がこぼれてしまうことがあるので」


 そういえば、確かにアルバニアが肩にかけている矢筒から、矢がこぼれ落ちるのを何度か見たことがあるな。

 矢は俺のストレージに何百本と入っているので、別にそこまで問題ではない。だがしかし、使わずに無駄になるのは気持ちのいいものではないのだ。

 拾えばまた使えはするが、戦闘中にそんな暇はない。連続して魔物などと戦っていれば見失ったり、踏んで折れてしまったりする。

 アルバニアはそういうことを気にしているのだろう。


「なるほどね……じゃあ、ちょっと待ってて」


 イグニスは再び素材を眺め始める。その眼差しは真剣そのもので、さきほどよりもより一層強い視線を向けていた。

 しばらくして、イグニスはこちらに振り返る。


「大体の構想は固まったよ、まずはアリスさんから。アリスさんの杖だけど、ちょっと前に『オリハルコン』と『天上希石(てんじょうきせき)』が入荷しているから、それを使って柄を作るのはどうかな? ちょっと値は張るけど、この中には杖の柄に使えそうな素材はないからね」


 『オリハルコン』は金色の金属で、青い金属である『ミスリル』よりも硬い金属だったはずだ。

 そして、『天上希石』は雲よりも高い山の上でしか採掘できないという、特殊な金属だったか。

 名前に『石』とついてはいるが立派な魔法金属の一種であり、とても希少な鉱物だったはずだ。


「天上希石には触れた魔力を安定させる性質があるんだ。だから、杖に組み込むと発動した魔法の安定性が上がるんだよ」

「そういうことならそれで頼むわ」

「了解。それでパワーストーンの方だけど、こっちは外注にした方がいいかな」

「どういうこと? あなたではできないの?」

「いや、別にできなくはないよ? でも僕の腕にも限界はあるからね。知り合いに一人、こっち関係に精通している人がいるんだ。だから、その人に委託した方が出来はよくなると思う」


 そういえば、イグニスって物理的な形状や機構を作るのは得意だが、魔術的な方面にはめっぽう弱かったな。

 すこし前に雑談したことがあるんだが、そのときに聞いた覚えがある。


「わかったわ、それでお願い」

「うん、承ったよ。さて、それじゃあアルバニアさんの番だね。アルバニアさんは『パワーショットボウ』って知ってる?」

「はい、確か魔力によって矢の威力を高めるという『魔弓』でしたでしょうか?」


 魔弓とは、魔剣と同じように特殊な効果が付与されていたり、魔法金属が使われた弓のことである。


「そうそう、どう? この素材たちなら作ることができるけど」

「……お言葉はありがたいのですが、私は残念なことに魔力はあつかえません。ですので、あまり意味はないかと……」

「そうなの? まぁでも、そのことなら特に問題はないよ」


 そう言うと、イグニスは近くにあった本棚から一冊の本を取り出した。そして、それを開きアルバニアへと見せる。

 俺もなにが書かれてあるのか見てみるが、どうやら専門的な本のようで小難しいことが淡々と書かれていた。


「長いから要約すると、パワーショットボウは自動で魔力を使うタイプだから、特に魔力の操作は必要ないんだよ。だから、どんな弓士でも使うことができるんだ。魔力はソータ君とアリスさんに補充してもらったらいいしね」

「なるほど……そういうことなら、ぜひお願いします」

「わかったよ。それで次は矢筒の方だけど、『無限の矢筒』はどう? 魔力を使って矢を生成するマジックアイテムだけど、これなら矢が落ちないようにする仕組みがあるし、今よりも便利になると思うよ。それに、これも魔力の操作は必要ないから、そこは安心してね」


 矢を生成するマジックアイテムか。確か、『マジックアイテム大全』とかいう本に載っていたな。

 なかなか便利で、一度使ったら手放せなくなると書かれていたはずだ。


「それでお願いします」

「うん、期待しといてね。さて、それじゃあソータ君は防具のメンテナンスをしておいた方がいいか。前にしてから一ヶ月はたっているし、そろそろ頃合いだしね」

「あぁ、頼む」

「アリスさんとアルバニアさんは後で身長とかを測ってもらうよ。装備を作るのに参考にさせてもらうから。お二人の装備がいつ頃できるかはわからないけど、目処が立ちしだい使いを出すことにするね。ソータ君の防具は二日後の昼ぐらいに取りに来て」


 俺は二人が身長などを測っている間、イグニスと雑談しているのだった。

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