二人の装備(1)
産業街にある、見慣れた無骨な建物。俺たちはそこに向かっていた。
取手をつかみ中へと入る。すると、そこには手袋のようなものを縫っている、『イグネイシャス』の姿があった。
「よっイグニス、元気そうだな」
「うん、ひさしぶりだね。ソータ君も元気そうでなによりだよ」
声をかけると、イグネイシャスは手を止めて俺たちのいる方向へと顔を向ける。
イグネイシャスとはそれなりに長いつき合いだ。いつからか、俺はイグネイシャスのことを『イグニス』と愛称で呼ぶようになっていた。
「今日は見ない子を連れているね。もしかして、前に言っていた同じパーティーの子かい?」
「あぁ、ちょっと頼み事があってな」
俺がそう言うと、イグニスは少し驚いた顔をした後に、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「はじめまして、アリスよ、よろしく」
「アルバニアです、お世話になります」
「僕はイグネイシャス。知ってると思うけど、この工房でいろんなものを作っているんだ。腕には自信があるよ」
「腕がいいのは知っているわ。ソータの防具を見たら、かなり腕のいい人が作ったのはすぐに分かったもの」
俺の防具――イグニスが手がけた『黒白の鎧』だが、性能はもちろんのこと見た目も見事なものだ。
これがなかったら、今ごろは何度か死んでいるだろう。
「そう言ってくれると嬉しいよ。じゃあソータ君、さっそく頼み事というのを聞かせてもらってもいいかい?」
「あぁ、実は二人に新しい装備を作ってほしいんだ」
二人をここに連れて来たのは、肉の柱・骨の巨人・陰のドラゴンと戦い、二人の装備不足が否めないと感じたからだ。
別に二人の装備は安物というわけではない。それなりに高価なものらしく、まだまだ現役で使えはする。しかし、どうしても俺のものと比べると、見劣りしてしまうのだ。
そういうわけで、今回は二人に新しい装備を作ってもらうことにしたわけである。
「なるほど。さしずめ強力な魔物と矛を交えて、現状を不安に思ったのかな?」
「そんなところだ。今のままでもさして問題ではないんだが、攻撃が全然通じない奴らに出会ってな。そういうわけで、ここに来たんだ」
「わかった。それで、有用な素材は持っているかい? ソータ君のことだから、ストレージの中に入っていると思うけど」
「いっぱいあるな。ちょっと待ってくれ、すぐに出す」
俺はそう言い、近くにあった何も置かれてない机に、ストレージから様々な素材を取り出しては置いていく。
しばらくすると、机の上にはもう置き場がないほどに多種多様な素材が置かれていた。
「――ずいぶんと溜め込んだねぇ……僕の知らない魔物の素材もあるし、これは楽しくなりそうだ」
あきれ半分歓喜半分といった様子で、イグニスは素材を手にとっては眺め始めた。その目には、強い好奇心の色がある。
「ほうほう……ん? これはなんだい? 見たところ、アンデッドコアにも見えるけど……」
イグニスは虹色に輝く一・五メートルほどの結晶を眺めながら、そう言葉をもらした。
「そのままアンデッドコアだ。確か、少し前に言ってただろ? 依頼で聖王国にいったんだ。そのときに、勇者と巨大なアンデッドを討伐してな。それはそいつのコアだ」
「……これ、半分くらいになってるよね? そいつはどれだけ大きかったのさ?」
「百メートルは普通に超えていたな」
今でも、よくあれを討伐できたなと思う。もしあれを一人で戦うことになったら、俺は尻尾を巻いて逃げ出すことだろう。
討伐できたのは、氷室を含む仲間の協力があったからこそだ。
「なるほど、そんな事が……まぁ、そんなに大事だったのなら、遅かれ早かれ情報はここにも届くか。――さて、じゃあそろそろ素材鑑賞はいったん切り上げるとして、二人に聴きたい。君たちは、どんな装備をご所望なんだい?」
イグニスは二人の方へ向き、そう問いかけた。




