男子会
春らしい陽気がただよい、もう春を迎えたんだと感じる。窓の外にある花壇では、色とりどりの花々が凛と咲き誇っていた。
すでに、俺たちはチェイスへと帰ってきていた。やってきたことをアベルに報告したり、館にたまっていた埃なんかの掃除を済ませ、現在は帰ってから三日がたっている。
「――なるほど、どうやら聞いていたよりも激動の依頼だったみたいだな。お前が転移者だったってことにも驚かされたが、勇者が知り合いとはねぇ……」
「前の世界のな。ともかく、なかなかハードだったな。得るものはあったが、けっこう疲れたぞ」
ここは、商業街の一角にある高級店の個室だ。本格的な食事をするような場所ではなく、軽い食事やお茶をするような店である。そして、ここには俺以外にももう一人、オーウェンがいた。
ちなみに、代金は全部オーウェンのおごりである。それと、アリスとアルバニアはクレアと約束があってくることはできなかった。
「まぁ、なんにせよ無事に依頼を達成できたならよかった。そして、そんなお前たちにプレゼントがある、受け取れ」
そう言うと、オーウェンは近くに置いてあったカバンから六枚のカードを取り出した。内三枚は同じカードだが、残りのカードは少しずつ違う。
そこには俺たちの名前や性別などが書いてあり、目立つように『ランクB』と書かれていた。
「ギルドカードとパーティーカードか。今回はランクが上がるのに時間かかったな」
「いやいや、これでも充分早い方だぞ。あのクレアはランクBになるのに、Cになってから一年はかかったからな。……まぁ、それでも早い方なんだが」
「そうなのか。あー……前のカードはどうすればいい? 確か、新しいカードをもらったら要返却だったはずだろ?」
俺の分はすぐにでもオーウェンに渡すことができるが、二人の分は今すぐにというわけにはいかない。それなのに、いま受け取ってしまってもいいのだろうか?
「確かに、その辺の奴らなら不正な事に使われる可能性があるからな。でも、お前たちなら大丈夫だろ、その辺信用してるさ。前のものは適当に捨てておいてくれ」
「そういうことならありがたく受け取っておくが、そんなんだから『アベル』にどやされるんじゃないのか?」
「はははっ、違いねぇな」
けたけたと笑い、オーウェンはグラスに入ったワインに口をつけた。
「――あー、アベルで思い出した。これはアベルから聞いた話なんだが、今はまだ公にするつもりはないらしい。だから、これは身内以外他言無用でたのむ」
「なんだ? またやっかい事か?」
「そうだな、やっかい事だ。レナード帝国と戦争したのはまだ記憶に新しいよな?」
「あぁ。……まさか、それ関連か?」
秋に帝国と戦争をしてから、それほど時間はたっていない。だが、それがどこかもっと昔の事のように思えた。
それだけ、時間が濃密だったということだろう。
「そうなる。では、言うぞ? どうやら、帝国の政治体制にいちじるしい変化があったらしいな」
「具体的には?」
「第一皇子の『カイル・メルキオール・ヒドルストン』が、軍部を使って独裁政治に持ちこんだらしい。そういうわけで、現在の帝国は独裁状態にある」
「うっわ……また面倒な」
カイルとかいう奴は、一応情報としてある程度知っている。帝国に行った際に、そいつの情報も少しだけ耳に入っていた。
とりわけ我が強く、軍事に精通しているらしい。見たことは一度もないが、悪辣という言葉が似合う男だと聞いている。
「だからな、今年の戦争は前と同規模――いや、さらに規模が大きくなる可能性さえもある。カイルは前の皇帝、『リロイ』と同じような思想を持つ。つまり、ベネット王国からすれば確実に仇をなす存在だ」
「はぁ……こりないな、あの連中は」
俺の口から深いため息がもれた。
また相手をしなくてはならないのか、めんどくさいな。と言っても、対処なんて……いや、あるにはあるか。
簡単な話だ、カイルとかいう奴が問題なら排除してしまえばいいのだ。そうすれば、今の独裁体制は崩壊するだろう。
しかし、うまくやらないとドミノ倒しに国自体が崩壊してしまう可能性がある。どうすればいいのか……。
「まぁ、だから秋に向けて備えておいてくれ。戦争が始まったら、お前たちにも参加してもらいたいからな」
「……わかった、そのときは言ってくれ」
俺はこの先どう動くか、頭を悩ませるのだった。
たくさんのブックマーク、そして評価をありがとうございます!




