揺れる大地
「な、なにっ……!?」
「揺れが……っ」
「地震だな、震度は四か三ぐらいか? ちょっと大きいな」
「たぶんそれぐらいだね」
アリスとアルバニアは突然起きた地震に戸惑い、キョロキョロとあたりを見まわしている。しかし、俺と氷室はそこまで驚くことはなかった。
「……いや、なんでそこまで冷静なのよ! 地震って大事じゃない!」
「生まれてから何度も地震は経験しているし、慣れているんだ。これくらいならそこまで慌てる必要もないしな」
「こっちに来てからは一度も遭遇していなかったけど、僕も奏多と同じだよ。それと、すぐに大きな揺れが来たから、どうやらここと震源は近いみたいだね」
ここにきてあからさまに揺れたんだ、この地震と肉の柱はなにかしら関係があるのかもしれない。
俺にはそれがどんなものかは分らなかった。しかし、こんなはかったかのようなタイミングで地震が起きるなど、どれほどの確率なのだろうか? 少なくとも、確率論などでは説明できないだろう。
一分ほど地震は続いていたが、しばらくするとピタリと収まった。それも、何事もなかったかのように。
「……収まったかしら?」
「あぁ、もう大丈夫だぞ。地震って、そこまで怖いものか?」
「……えぇ、昔寝ているときに地震に襲われたことがあったのよ。そのときは周りに誰もいなくて……それでちょっとトラウマなのよ」
あー……確かに、子供のときに怖い思いをしたらトラウマにもなるか。それは痛いほど共感できる。悪いことを言ったな……。
「……ごめん、馬鹿にするようなことを言って」
「別にいいわよ、それよりこれからどうするの? もういいなら早くここを出たいんだけど」
アリスは顔をしかめながら、肉の柱があった場所を見る。
もはや肉の柱の原型は跡形もなく消え失せ、そこはドロドロとした赤黒い液体で濡れていた。その液体は強烈な悪臭を放っており、あまりここにいて気持ちのいいものではない。
「そうだね……とりあえず、一度町に帰ろうか。肉の柱のことは、すぐにでも報告した方がいいだろうしね」
「だな。――それで、どうするんだ? 階段はいろいろと酷いことになっているが」
上から下まで続いていた階段は触手が叩きつけられ、いたる所がぐちゃぐちゃに壊れてしまっていた。
頑丈なはずの金属パイプはへし曲がり、金属板は真っ二つになっている。とても正常に使えるような状態ではなかった。
「あー……どうしようか」
「ノープランだったのかよ……。俺は飛行魔法を使えるからどうにでもなるが、三人はどうだ?」
「僕は身体強化の魔法を使えば、階段を飛び越えたりして上にあがることができると思う。二人は?」
「私もヒムロさんと同じよ。だけど、そうなると姉さんが厳しいわね」
アルバニアは魔法が使えるわけではない。そういう意味では、確かにここを上がるのは厳しいだろう。
だが、氷室はともかくアリスに問題がないなら、なんら支障はないだろう。
「じゃあ、俺がアルバニアを背負えばいけるな。それでいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
俺は確認を取ると、アルバニアは躊躇なく頷いた。
もう少し安全面を心配されたりするかと思ったのだが……これは信頼してくれていると喜べばいいのだろうか?
「じゃあ、それで決まりね」
俺はしゃがむとアルバニアを背負った。
……うん、早く上にあがろう。なにがとは言わないが、いろいろと罪悪感がすごい。
飛行魔法を発動すると、俺は地面から飛び上がった。やはり一人のときとは違い、魔法の維持が安定していない。
人一人を背負い、両手が空いていないというのもあるが、気を抜くとひっくり返ってしまいそうだった。
これは本当に早く上がった方がよさそうだ。
アリスと氷室は俺たちを追うようにして、階段を上がっている。崩れた場所は飛び越え、塞がった場所はパルクールじみた動きで乗り越えていた。
身体強化の魔法を使っていると知っているので、そこまで驚くことではなかった。だが、それでも異様な光景ではあった。
俺は攻撃の影響がなかった場所まで飛んでくると、アルバニアをそこへ降ろす。そしてそこからは二人と合流し、普通に階段を上がっていくのだった。




