聳える肉柱(2)
「――ひあい……いのち……かぎり……」
「な、なぁ、どうする?」
俺たちは肉の柱の様子に戸惑っていた。
単語を発する――ということは、少なからず知性があるはずなのだ。しかし、話しかけても全く反応はなかった。
情報収集はできればしておきたかったのだが、話が通じなければそれもできない。
「……とりあえず、討伐しよう。一度アンデッドになってしまえば、どうせ助からない。――ごめんよ、助けてあげられなくて。《シャイニングレーザー》!!」
氷室は光線を肉の柱へと照射した。すると、レーザーは肉の柱を貫通して向こう側の壁を焼き付ける。
……分厚い肉を貫通させるなんて、いったいどれだけの威力があったんだか。
「ゴギャアアアアアアァッ!? イギッ、ガアアアアアアアアアァ!!」
肉の柱は悲鳴を上げると、触手をあたりに叩きつけた。まるで錯乱しているかのように、標的もなくただただ無意味に振るわれる。
俺たちは叩きつけられる触手をよけながら、それぞれの方法で攻撃を開始した。
触手を斬り裂き、焼き、氷柱が突き刺さる。しかし、一向に触手の数は減ることがなかった。
どうなっているのかと思い攻撃しながら観察していると、触手がみるみるうちに再生しているのが見えた。……いや、触手だけではない。氷室が光線を放ってつけた傷もいつの間にか完全に再生し、元通りになっている。
どうやら肉の柱は強力な再生能力を持っているようで、今までの攻撃は全くダメージになっていないようだった。
どうするか考えながら肉の柱と戦っていると、下の方にあった大きな口が急にゴポゴポという音を立て始めた。そして、そこから見覚えのある肉塊が這い出てきた。
――そう、ここに来る途中にも見たあの肉塊だ。……こいつが親だったのか。
「ブラストウォーター!!」
アリスが爆発する水球を放つ。
よけられることなく水球が直撃すると、肉塊は粉々に砕けちった。だが、肉の柱からは際限なく肉塊が生まれてくる。それも、様々な大きさの者がずらずらと。
「私が始末するわ! ブラストウォーター!!」
先ほどと同じように、アリスが爆発する水球を放った。
しかし、今回はその数が決定的に違う。前は一つだったのだが、今回は十を軽く上回る。
肉塊は鈍足なおかげで水球はすべて直撃し、赤黒い血液が周囲に飛び散る。
水球の一つが肉の柱へと当たったのだが、まるで傷がついていなかった。どうやら、肉の柱の防御は相当高いようだ。
「これ、切りがないわよっ!」
「なら俺が叩く! ウェアフレイム!!」
俺はバスタードソードをストレージに収納すると、今度は槍を取り出した。
これは『ジャベリン』という投擲用の槍で、前にイグネイシャスからもらったものでる。
どうやらまだ試作品の段階らしく、まだいろいろと未完成らしい、だがしかし、この槍には『魔法残留効果』というのが付与されているそうだ。
なんでもこの槍に魔法を掛けると、その効果が長く残るらしい。
俺は《ウェアフレイム》という炎を纏わせる魔法を使い、身体強化の魔法を使って思いっきり投擲した。
槍は真っ直ぐと飛んでいくと、肉の柱の中心部に突き刺さる。そして炎を纏わせていたので、突き刺さった周囲を焦がし始めた。
「ゴギャアアアアアアアアアァッ!?」
肉の柱は嫌がるように、触手を上下や左右に振り乱す。周囲にあったよくわからない装置がその攻撃に巻き込まれ、凄まじい音を立てながら破壊された。
……ちょっと失敗したかもしれない。
「グギィイイイイイイイイィッ!!」
「――っ!? アリスっ!!」
「……えっ!?」
触手の一本が、アリスの死角から横薙ぎに振るわれた。アリスは俺の声でその存在に気がついたが――このままではよけられない。
俺は転移魔法を発動してアリスのそばにくると、アリスを遠くに突き飛ばした。
「ちょっ……!? ソータっ!!」
なんとかアリスを触手の攻撃範囲外まで出すことができたが、今度は俺がよけれない。
アリスを突き飛ばしたので、今から回避できるような体勢ではない。さらに、再び転移魔法を発動したとしても間に合わないだろう。
腕を頭の前で交差させ、防御の姿勢を取る。俺が咄嗟に思いついた手段は、これしかなかった。
「がはぁっ!?」
まるで猛スピードの車に轢かれたかのような衝撃を受け、俺は吹き飛ばされた。それでもこの防具の防御力が高いおかげもあり、なんとか耐えることができた。
しかし、目を開けるとそこには新たに振るわれた触手があった。俺はそれを視認したと同時に、なにも反応できずに意識を刈り取られたのだった。




