聳える肉柱(1)
通路の先にあったのは、地下深くへと続く円柱状の縦穴。下はかなり深く、あまり鮮明に見ることはできなかったが、なにか大きいものがあるようだった。
そして、いまいる場所からは下へと続く階段があったので、そこから下に行くことができそうだ。
なお、エレベーターのような装置もあったが、現在は動かなくなっているようだった。まぁ動いたとしても、いろいろと怖くて乗れないのだが。
製造されたのは相当前だし、ろくにメンテナンスはされていないだろう。最初は動いたとしても、途中で落下でもしたら普通に死ぬからな。
俺たちは階段をおりる。かなり長いので全く降りれている気にならなかったが、二十分もすればある程度下へと降りてくることができた。
そして、俺たちの目に入ってきたのは――肉の柱。それも今までに見てきたどのアンデッドよりも、より一層おぞましい見た目をしていた。
肉の柱のいたる所には歯をむき出しにした口が無数についており、それがカチカチと意味もなく音を立てていた。
「き、気持ち悪いわね……」
アリスは眉間にしわを寄せながらそうつぶやいた。
肉の柱は何やら台座のような物の上にあり、柱の上下からは触手が伸びてそれが体を支えている。そして、どうやら現在は休眠状態のようで、寝息のような音が聞こえてきた。
「こいつが今回の元凶、じゃないのか?」
「ちょっと……いや、かなりその線が濃厚だね。いろいろと調査した後、これを討伐すればそれで解決す――っ!?」
氷室が喋っていると、触手の一本が俺たちのいる反対方向に反った。どうしたのかと思っていると、その触手は鞭のようにしなって俺たちのいる場所に叩きつけられた。
俺たちは咄嗟の判断で、触手をよけるために階段から飛び降りる。最下部とは十メートルほどしか離れてなかったため、なんとか無事で済んだ。
触手が叩きつけられた場所を見ると、階段は金属製だったにもかかわらず、いとも簡単にへし折れていた。今の攻撃にどれほどの力がかけられていたのかは、想像に難くない。
「――ウ、ウゥ……ウアァー……ウアアアアアアァッ!!」
「うわ……っ」
肉の柱は意味不明な叫び声を上げると、いたる所にある切れ込みが開いて、そこから目が現れた。
あまりの気持ち悪さに、俺の口から声が漏れる。
「グッ、ウゥ……ギイイイイイイイィッ!!」
肉の柱は再び触手を俺たちに叩きつけてきた。その触手をよけたが、さらに新たな触手が何本も伸びてきて、何度も地面に叩き付けてられる。
「おいおいっ!? 何なんだこいつ!?」
「わからないっ!! けど、まずはこれを討伐しよう!」
俺はストレージからバスタードソードを取り出すと、触手に向かって振るう。
触手はなんの抵抗もなく切断されると、その触手は引っ込んでいった。しかし、また新たな触手が何本も伸びてくる。
これではキリがないな……。
「シャイニングアロー!!」
「ギイイイィッ!? オガアアアアアアアアァッ!!」
氷室が光の矢を放つと、それは肉の柱本体に突き刺さった。それによってか、触手が一斉に俺たちから離れていく。
「グッ、オアァー……。――ふういん……たいざい……かいじょ……」
「……は? まさかこいつ……しゃべれるのか?」
肉の柱から出た声、それは個別の『単語』のように聞えた。
『封印・大罪・解除』と。なにを意味するのか全く分からないが、こいつには少なからず知性があるように思えた。
「――ゆえ……はいじょ……われ……きさま……」
「しゃべる……とは違うみたいだけど、意味のある言葉を発しはいるみたいだ」
「封印、大罪、解除……なにを言いたいのか全然わからないわね」
俺たちが話している間にも、肉の柱は単語を発し続ける。一つ一つの単語の意味は理解できるのだが、意図がまるきり分からない。
そもそも、アンデッドが言葉を発するというのはかなり珍しい……いや、なかなかないことだ。
アンデッドの中には人が元となった者もおり、そういう者がしゃべるという事もなくはなかった。……まぁ、ないに等しいと言えるほどだが。
「もしかして、こいつは元々人間だったのか?」
「……あんまり想像はしたくないわね」
「むき出しにしている歯は人のものにも見えますが、あまりにも原型を留めていませんので、判別できませんね……」
肉の柱の発する単語を聞いてしばらく聞いていたが、やはり意味はわからなかった。
――さて、これからどうするか。




