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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第六章:伝説巨竜と灼熱の巨人

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第四〇三話:統合鉄血学園の、鉄則


『……名乗り遅れました。(わたくし)電熱巨人ギデオンの中枢制御回路、ギデオ・セントラルと申します。久しいものはセント君と呼んでおりますな』


 どうでもいい情報を述べる触手人形あらため、ギデオ・セントラルであった。

 大きさは俺より一回り大きいくらいだろうか。

 形は電熱巨人と似ていたが、いかんせん触手で構成されているため、不気味さがより増している。


「第二陣、攻撃用意――」

『ちょ! まって! 痛いからやめて! 地味に効くから!』


 かなり切羽詰まった様子で懇願するギデオ・セントラルであった。

 どうやらこのまま押し切ってしまえばいいらしい。


『よろしいですか!? (わたくし)はなにも戦うために現れたのではないのです! (わたくし)が提案したいのは交渉! そう、交渉なのです!』

「命乞いなら、受け付けないが」

『命乞いではありません! ちゃんとそちらに利があるからこそ交渉なのです!』

「貴様の命が手に入るのなら、十分に利があるのだが」

『こちらに利がいっさいありませんよねぇ!? 古代の魔王ってどうしてそんなに殺伐としているんですか!?』


 別に殺伐としているつもりはない。

 当時だって、諸魔族から思ったより穏健派だと評価を受けたくらいである。


『それに、(わたくし)が交渉したいのは貴方ではありません。鉄血生徒会ア・シモフ生徒会長と話がしたいのです!』

「ほう?」


 弾倉を取り替えたア・シモフが片眉をあげた。


「すまぬ、ちょっとこの紐人形と話をさせておくれ」

「承知した」

「あ、今のうちに装填しておくのおすすめ」

「それも承知した」

『ちょっと!?』


 ギデオ・セントラルが抗議の声を上げるが、こちらとしては警戒を解く理由がないし、決裂したらそのまま押し切る気満々である。

 おそらく、ア・シモフも同じ認識であろう。


「そんでギデオ・セントラルくんとやら、交渉というのなら君は一体何をさしだすんだい?」

『交渉に乗っていただき、感謝致します。(わたくし)が提供したいのは、量産型ギデオンことレ・ギデオン、略してレギオンでございます』

「既に暴走しておるのに、量産型が欲しいというアホはおらん気がするんじゃが?」

『仰りたいことは重々。どこで(わたくし)の設計図を手に入れて建造したのかはわかりかねますが、このように(わたくし)には自らの意思がございます。ですが、こちらの簡易電熱巨人レ・ギデオンは魔力炉以外は完全に機械式でございます。中枢制御回路もございません。詳しくはこの設計図をご覧ください』

「ふむ……マリウス卿? すまないが――」

「俺にもみせてくれ。精査しよう」


 魔力による立体映像で表示されたものを隅々まで眺める。

 なるほど、確かにこれは巨大な機動甲冑といった趣である。

 大きさと出力は変わらず、武装が減る代わりに大口径化している。

 そしてギデオンがギデオ・アルス、麒竜、キデオ・ノヴァと変形合体するのに対し、

 レ・ギデオンはレギオ・アンバー、レギオ・バニアー、レギオ・コンバーの三隻の飛行船艦が変形合体する仕組みらしい。

 乗員は各二名の計六名、自動化されているとはいえ雷光号と違う中枢が制御されていないとそれがギリギリの乗員数であろう。


「ふむ……たしかにこっちの方が魅力的ではあるね」

『興味をもっていただきありがとうございます』


 ギデオ・セントラルが、大仰に一礼する。


「――で? その代価として君はなにを要求する?」


 底冷えする声だった。

 返答を間違えたら容赦しない。そんな決意を込めたア・シモフの声である。


(わたくし)が要求するのはただひとつ。麒竜でございます』

「――あ?」

『ああ、お気持ちは重々。特にアイアンワークスの主戦力であることは重々承知しております。ですが……どうでしょう? 麒竜一騎に対し、レギオン四十騎……でしたら?』


 クリスが固唾を飲んだ。

 たしかにその数であったら、麒竜より脅威である。


「どうやって四十騎も用意するんじゃい?」

(わたくし)には製造機能もございます。製造に集中すればそうですな……三年もあれば、四十騎ご用意できるかと』

「書記はどうなる?」

竜公主(ドラゴンマスター)でございますね? ご安心ください。その資格は剥奪致しません。ただし、優先順位はこちらにあることをご了承いただければ』

「ふぅん……」


 ア・シモフが背負っていた背嚢をおろした。

 それを前に置くと、中に手を突っ込む。


『いかがでしょう? そちらの古代の魔王が竜公主(ドラゴンマスター)に興味を抱いておりますが、その資格が剥奪されていないのでしたら問題ありますまい?』

「そうじゃねー」

『――では?』


 ギデオ・セントラルの声が、少しだけ弾む。


「正式な回答を伝えようか、ギデオ・セントラルくんとやら」


 背嚢に両手を突っ込んだまま、ア・シモフは顔を上げていった。


「統合鉄血学園アイアンワークスの校則は、鉄則って名前なんじゃが」

『興味深いですね』


 いけしゃあしゃあと、ギデオ・セントラル。やつにとっては、交渉が成立することがなにより大事なのだろう。


「その鉄則第二条補足。統合鉄血学園アイアンワークスは――」


 背嚢から両手を引き抜き、ア・シモフは続ける。

 その手に持っていっているのは――散弾銃!?


「――盗人とは、交渉しない!」


 直後、散弾銃が火を噴き、七色の光を曳いた散弾が、ギデオ・セントラルに襲いかかったのであった。

「散弾銃、あるんだ!?」

「割と歴史は古いですぞ。自動拳銃があるならこちらにあってもおかしくありませぬ」

「ふぅん……扉こじ開けるの、楽そうね」

「現代的な用途を述べるのはおやめくだされ!?」


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― 新着の感想 ―
そりゃあ量産機40機あげるからオンリーワン1機よこせと言われても、交渉になるわけないんよねぇ…
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