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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第六章:伝説巨竜と灼熱の巨人

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第四〇二話:これよりオペをはじめる!


「素人からみた意見ですけど……」


 それを見上げて、クリスは呟いた。


「ベ・スターさんはともかくとして、どうやって麒竜を分離させるんですか?」


 より近くで見ることによりわかったのだが、巨人の体内から伸びている触手は、麒竜と完全に融合していた。


「たしかに、書記だけを救出するのなら話は早いな」


 幸い、巨人の触手は竜公主(ドラゴンマスター)であるベ・スターとは融合していない。

 ならば、半ば強引に引き抜くことも可能であった。

 もしベ・スターと触手が融合していたら、俺達は先ほどのように犬耳族(コボルト)の話をしていられなかっただろう。


「すまんが……」


 真面目な貌で、ア・シモフがいう。


「麒竜も救い出しておくれ。ワシらアイアンワークス最大の戦力を失うわけにはいかんし、なにより書記が哀しむ……」

「もとより、そのつもりだ」

「すまんね……いや、ありがとう。マリウス卿」


 ア・シモフには言っていないが、俺達は図書館塔の主と、すべての竜公主(ドラゴンマスター)を連れてくると約束している。。

 ここで麒竜を見捨てた場合、ベ・スターは竜公主(ドラゴンマスター)でなくなる可能性がある以上、ベ・スターのみの救出は最初から考慮外であった。


「でもマリウスさん。これ、切ったり抜いたりしたらどうなるんですか?」


 アリスが心配そうに訊く。


「おそらく切った時点で巨人が気づくだろうな。そこから何らかの対策をしてきかねない。そして抜くと、麒竜が怪我をするだろうし、その傷の深さが想像できない以上、抜くこともできない」

「では、どうするんです?」

「まず偽の経路をつくってな」

「はい」

「そして触手を凍らせる」

「凍らせるんですか!?」

「そうだ。凍らせたあとに、切る。おそらくこの触手は魔力の経路だからな。偽の経路さえあれば、そう簡単にはきづかれまい」


 そうして、麒竜をベ・スターごと確保できたら、後は適当に大穴をあけて脱出すればいい。

 この巨人を保全するつもりは、さらさらないからだ。


「というわけで、俺が偽の経路を作る。ア・シモフ卿、冷凍装置か魔法を頼めるか?」

「まかしとき」

「では、皆はア・シモフ卿の補佐を頼む」


 俺の方は経路の魔法を作ればいいだけだが、ア・シモフの方となるとそうはいかない。


「ところで、資材は足りるか?」

「最初の一本分は余裕よ」


 みるからに頑丈そうな背嚢を下ろしながら、ア・シモフ。


「残りはどうする」

「そりゃあれよ、切った触手がそこらへんに転がるわけじゃろ?」

「……なるほどな」


 おそるべき、アイアンワークス筆頭の技術力だった。


「んじゃ、やりやすそうなやつからいこうか」

「ああ、これだな」


 他のより長くて、少し細いものに目星をつける。


「マリウス卿、はじめてくれい」

「心得た」


 触手の周りに魔力を組み上げる。

 属性は俺の得意な雷でいい。

 これは繊細に扱えば、神経の疑似動作を行うことができるからだ。

 たとえば、相手にかけてこちらの思うように操ることもできるし、逆に麻痺させることもできる。

 今回は、後者だった。


「よし、基本はこんなところか」


 擬似的な神経網を作って、触手に沿わせる。

 この時点では、まだ接触させない。

 麻痺と同時に疑似間隔に切り替える必要があるから、慎重に機を狙わねばならないからだ。


「――いくぞ」


 目を細めて、絞りに絞った雷の魔法を二種類同時に使う。

 片方で本来の魔力経路を麻痺させて遮断、もう片方に雷の魔法で擬似的に魔力経路が動いているように錯覚させる。


「なんつー繊細な……これが古代の魔王!」


 なぜかアリスとクリスがそろって胸を張っていた。


「よし、上手くいったはずだ。ア・シモフ卿」

「まかせんしゃい!」


 俺が作ったアーチ状の経路の内側に、ア・シモフがふたつ一対の大柄な輪をはめ込む。


「これでよしと。マリウス卿のそれとはちがって危ないから、みんな離れるんじゃよー」


 ア・シモフに促され、数歩さがる。

 自身も下がっていたが、どうも手に持っている遠隔操縦装置で起動させるらしい。


「こんなもんじゃろか。ほんじゃ、いってこーい!」


 装置をア・シモフが押し込むと、一対の輪が青白く光った。

 そしてそこからお互いめがけて氷の魔法が展開される。


「十二秒でマイナス八〇度まで冷却じゃよ!」

「よくやった」


 想像していたより、早いし冷たい。

 これなら光帯剣で切るよりも――。


「ふん」


 指をパチッと鳴らす。

 それだけで、触手は輪のすぐ内側ですっぱりと切れたのであった。


「いま、何を使ったんですか?」


 クリスが興味津々といった様子で訊く。


「風の魔法だ。いわゆるカマイタチ現象だな」


 気圧差を利用し、ごくごく薄い空気の刃をぶつけたのだ。

 一見すると柔らかいものの方に効きそうだが、実は粘りがないくらい固い方が都合がいい。


「なるほど。原理はわかりましたが……カマイタチ?」


 しまった! この世界にはもうイタチはいないのか……!


「もしかして、人斬りラッコのことですか?」


 アリスが助け船をだしてくれる。

 だしてくれたのだが……。


「なんだその物騒な名前の生き物は」

「想像上の動物ですよ。お腹に乗せた貝に特殊な石をぶつけた衝撃波で、人を斬りつけるラッコがいるという伝承があるんです」

「なる……ほどな?」


 カマイタチも伝承上の生き物であるから、反論しづらい。


「ま、とにかく素材手に入れたから次いこうかい」


 ア・シモフが厚手の手袋をはめて凍った触手を持ち上げたときである。


「ア・シモフ会長!」


 理緒が一息で間合いを詰めた。

 ア・シモフの背後に触手が降りてきたのだ。


「ていっ!」


 渾身の蹴りはしかし、柔軟さで吸収される。

 その間にも触手は何本も降りてきて四肢を形成し――。


「総員、攻撃開始」


 俺が言うが早いが、アリスとクリス、それにア・シモフが射撃を開始。続いて理緒が連続で殴打する。


『ちょっとまってもらえませんかねぇ!?』


 触手人形が抗議するが、知ったことではなかった。

「人斬りラッコなぞ、知りませんぞ……」

「あ、タリオン君が作ったわけじゃないんだ」

「臣はそこまで暇ではありませぬ」


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― 新着の感想 ―
人斬りラッコすごいな!? まあカマイタチも生態なんか分かってないですが 触手が合体して人間型に???しかも喋る??
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