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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第六章:伝説巨竜と灼熱の巨人

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第四〇四話:七色散弾


 散弾銃そのものは、単純な仕組みの銃である。

 長銃や拳銃のように弾丸を旋回させながら発射しないため、製造難易度は先のふたつよりも楽な場合が多い。


「ふぅ……」


 ア・シモフが背嚢から取り出した散弾銃は、前後を切り詰めて拳銃を一回り大きくした程度に収めていた。

 おそらく、命中や安定よりも携帯性を重視したのだろう。

 その構造は、俺が封印される前に主流であった中折れ式である。

 いまア・シモフがやっているように、銃身を蝶番に沿って四十五度ほど折り曲げることで、前弾の排莢と次弾の装填、そして撃鉄の準備を一度にやれるなかなか合理的な構造であった。

 ただし、その単純な構造故連射はできない。

 撃つ毎に銃身を折って排莢と次弾の装填を行わなければいけないので、かなりの手練れでも他の形式の連発銃には及ばない。

 だが、問題は弾丸である。

 散弾とは、割と自由な弾丸である。

 銃身に弾丸を旋回させる施条がほどこしていないため、激発用の火薬と薬莢に、好きな弾丸を詰めて紙かなにかで封をすればいい。

 たとえば、威力重視で大口径の鉛玉を一発だけ込めてもいいし、広範囲にばらまくため、小さな鉛玉を数個から数百個まで込めていい。

 元は、鉛玉の他にネジや石、はては砂を詰めて撃ったそうである。

 それで、ア・シモフが何を撃ったのかというと。


「属性弾か」

「そうじゃよー」


 俺がよくアリスやクリスのもたせるのは、相手を拘束する氷の魔法が入った弾丸や、相手を行動不能にする雷の魔法が入った弾丸だ。

 普通はそうする。

 相手にとって弱点となる属性を選んで装填すればいいからだ。

 だが、ア・シモフは違った。


『熱い! 凍る! 痺れる! 切れる! 痛い! 眩しい! 吸われる!』


 ギデオ・セントラルが実に多彩な悲鳴を上げる。

 それはそうだろう。

 火の魔法、氷の魔法、雷の魔法、風の魔法、土の魔法、光の魔法、そして闇の魔法を同時にくらったのだ。

 つまりア・シモフは散弾の中に七つの魔法が入った子弾を仕込んでいたのである。


「おやまぁ……得意属性とかなかったんかい」


 やや呆れた様子で、ア・シモフ。

 既に次弾は装填済みであり、狙いはしっかりと定まっている。


「随分とまぁ……大雑把な攻撃だな」

「いいじゃろ。相手の属性を考えながら撃つ必要の無い、ワシのとっておきじゃよ」


 確かにその通りだが――もっと、こう……なんとかならなかったのだろうか。


「こいつはワシがみておくから、マリウス卿は他のみんなと一緒に、書記と麒竜の救出をおたのむぞい」

「わかった」


 すでに交渉は決裂しているし、このあと俺達がなにをするのかもばれている。

 だから俺は光帯剣を引き抜くと麒竜に絡まっている触手を片っ端から斬っていったのであった。

 もちろん、魔力が逆流したりしないよう、斬る直前で一度氷の魔法で凍結させている。

 それは規模も繊細さも違うが、外科手術を魔法で代行するときに似ていった。


『あ、ちょっと!?』

「残念だが、発言権はないんじゃよ」


 ア・シモフが素早く三発目と四発目を放つ。


『ぐわああああああああ!?』

「いいわすれとったんじゃけどね」


 素早く次弾を装填しながら、ア・シモフ。


「麒竜おいてけとかいわれて、ワシ結構トサカにきておるのよ」


 普段から飄々としているア・シモフだが、どうやら怒ると相当容赦がないらしい。

 そういうところはどこか、(さき)の陛下を思い起こす俺であった。


「あのことわたし、似てる?」

「似ておりませんなぁ」

「だよねー。例のネジとか詰める銃、わたしの世代では禁止にしていたし」

「陛下はともかく、臣は無視しておりましたがな——あ」

「ほう。じゃあ、少しお話ししようか?」


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