第四〇〇話:It’s自動拳銃
「なるほどつまり、初弾はこの銃身の覆いを引くことで装填と撃鉄を起こすのを同時に行い、次弾以降は初弾発砲時に発生するガスでこの覆い――」
「ワシらは遊底と呼んでおるよ」
快く貸してくれた鉄血統合学園アイアンワークス生徒会長、ア・シモフにそう解説される。
なるほど、スライドとはよく言ったもので、本来閉鎖機構であるはずの遊底を固定させず、あえて後退させることで初弾の薬莢排出、次弾の装填、そして撃鉄を起こす作業を一度にやっている。
しかしこれ、どうやって戻しているのか――。
「そうか、本来の銃身が発条を通っているのか」
「透視魔法使った?」
「いや?」
スプリングこと圧縮コイル発条は、俺も雷光号やその他の道具でよく使っている。
なにかの反動を受け止めたり、それを逆に利用して押し返したりと、何かと便利な部品だ。
今回の件でいえば、激発時に発生したガスでスライドを後退させ排莢、装填、そして撃鉄の引き起こしまでを行い、そこで圧縮されたスプリングが戻る力を利用して元の位置にもどししているということだ。
「――と、構造を推察してみただけだが、間違っていたか?」
「むしろあっているから驚いているんじゃよ……よくもまぁ初見でわかるもんじゃね」
どうやら俺の推定は間違っていなかったらしい。
ただ、ここに至るまでの試行・試作は相当なものであったことが想像できる。
それだけ、この拳銃は洗練されていた。
「ちなみにいま研究中の次世代銃では、引き金をひくだけで撃鉄が起きるようになっておる」
「それって引きしろが多くなっていないか? 命中精度が下がるような気がするんだが」
「だからなんで訊いただけで構造を理解するん!?」
そういわれても、積み重ねた経験が勝手に弾き出すのだからしかたない。
「これが最終魔王かぁ。怖いなぁ!」
「俺自身の前でその称号は言わないで欲しいんだが」
どうも、他校では最終魔王で通っているらしい。
「うちの副生徒会長はファンタジーといいきっておったが、実際のとこどうなん?」
「一万年間封印されていたのは、事実だ。――そのファンタジーってなんだ?」
もしかして俺は物語の登場人物扱いされているのだろうか。
「ああ、うん。そういう認識でいいんじゃね? もっというと絵本の英雄と同一視みたいなもんじゃろね」
「恐れ多すぎる……!」
物語の英雄と同列に語られるほど、俺はたいした魔王ではない。
そもそも数多の英雄のように、護るものを護れなかった敗北者である。
「マリウスさん、ア・シモフ会長。準備ができました」
そこで、アリスが声をかけてきた。すぐ後ろにはクリスと理緒の姿もある。
「さてと、そろそろやりますか」
「ああ」
俺とア・シモフはただずっと駄弁っていたわけではない。
本来の目的である書記のベ・スター、および麒竜の奪還という目的は変わっていないのだ。
ここは螺旋階段をのぼった先の最終通路。
であれば、幾重にもわたる罠を敷設してくるであろうことは予想済みである。
なので――。
「まずはワシの凍結地雷、全部起動!」
通路の前の隔壁が吹き飛び、瞬時に凍結された。
火薬の力で吹き飛ばした後に氷の魔法を吹き付けて、進軍経路を作るためのものらしい。
「一時、十一時、三時、九時方向から同時に敵です!」
アリスの報告は、方向ではない。
突入坑を作ったときにその円型のどこから敵が出てきても対応できるよう、あらかじめ決めておいたのだ。
「やはり残るか!」
「しゃあないのじゃよ!」
俺が光帯剣と雷の魔法で、ア・シモフが雷属性に変えた自動拳銃てそれぞれ一体を落とし、アリスとクリスが連携してもう一体を撃破。
そして信じがたいことに最後の一体を理緒がただの蹴りで沈黙させていた。
「さてィ……なんじゃこりゃあ!」
巨人の魔力炉は、奇妙極まりなかった。
本来は中央の麒竜を魔法の障壁で包み込み、麒竜は水平を保ったまま、背中に乗っている竜公主が操縦する仕組みであったらしい。
だが、そこにあったのは植物とも動物とも着かぬ触手でがんじがらめにされていた麒竜の姿があった。
どうもその触手から出力が奪われているらしい。
「マリウスさん、あそこに!」
「書記か――なに?」
麒竜は垂直に縛り上げられていた。
その胸部に埋もれる形で、マスターであるベ・スター書記も囚われている。
俺が驚いたのは彼女の耳だ。
一万年にわたる封印から解かれて以来、ずっとみていなかった――。
「犬耳族だと……?」
「折角の触手なのに、使いどころがなっておりませんな! もっとこう、服の中に潜り込むように――」
「タリオンくん? 少し、頭冷やそうか……?」
「冷やすはずなのに火の玉出すのはおやめくだされ。その火力では消し炭も残りませんぞ」
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