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6回、アゼリア国


 練習後。俺たちは誰からともなく柔らかな芝生の上に寝転がり、茜色の空を見上げていた。乾いた風が汗まみれの身体を撫で、ゆっくりと熱を奪い去ってゆく。いったいいつ以来だろう。こんなに心地良い疲労感は。

「おい、リョウ。あの下に曲がる変化球」

「フォーク」

「フォークは禁止だ。あれはずるい」

「なにが」

「ストレート、スライダー、高速スライダーの三つで十分だろ。じゃんけんだってグーチョキパーの三つじゃねぇか。四つも使われたら勝負になんねぇよ」

「意味わかんねぇ」

 今日の三球勝負は俺の勝ち。敗者の一人、ウィルの戯言を適当に聞き流していると、頭の上から足音がザッザッと近づいてくる。


「はい、リョウ。これ差し入れ」

 急に空を遮り、逆さまに現れたオズの顔。にっこりと笑みを浮かべ、手に持っているのはラップに包まれた――パン?

「それは?」

「コッペパンにハンバーグを挟んでみたの! 男の子って皆ハンバーグが好きでしょ?」

 ……好きだけど、正直今は胃がもたれそうだ。「ほら、皆の分もあるよ!」オズの言葉に、案の定なんとも言えない空気が流れる。困った。


「オズ、こういうときの差し入れは相場が決まってるんだよ」

 続いて逆さまに現れたのは眉を八の字にしたロブ。彼の手にはタッパーが乗っており、甘い香りを隙間から辺りに漂わせている。

「えっ! ロブ、それは?」

「レモンのはちみつ漬けだよ。皆も食べる?」

「「「「「「「食べる!」」」」」」」

 弾かれたように立ち上がり、一斉にロブのタッパーに群がる面々。「うめぇ!」「染みるぅ!」などと大盛況の中、俺はおそるおそるオズの顔を盗み見る。

 ……あーもう、そんな寂しそうな顔すんなよ。

「オズ! パン一つくれ」

「! リョウ……うん! たくさん食べてね!」

 パァッと明るくなるオズの顔に、皆が「やっちまった」と「やられた」の中間ぐらいの顔をしている。「レモン食い終わったら食べる予定だったんだよ! 最初から!」そう息巻くウィルをはいはいとあしらい、ハンバーグパンにかぶりつく。うっま、なんじゃこれ!


「楽しそうですね、私も混ぜてくださいよ」

 出し抜けに、知らない声が後ろから聞こえた。「もちろんいいぜ」と言ってしまいそうになるほど、自然な呼びかけだった。振り返ると、清潔感のある黒い短髪に色素の薄い瞳が俺を見つめている。着物を着た、東洋的な雰囲気の色男だ。

 彼の姿を認めた瞬間、オズたちは懐から拳銃を取り出して男をぐるりと取り囲み、銃口を向けていた。

「貴様、なんでこんなところにいる!」

「リョウ! 早くそいつから離れて!」

「? ちょっと待て。なにがなんだか」

「その男はアゼリア兵団兵士長です!」

 アゼリア……アゼリア国。俺がこの世界に来た日、そこのスパイと間違えられて国王のところに連行されたんだっけ。確か「喧嘩中の隣国」とオズは言っていた。

 俺が慌てて起き上がる前に、今度はオズたちの周りを武装した男たちがさらにぐるりと取り囲み、日本刀のようなものの刃先を首元に突きつけた。異様な殺気の中を、呑気なカラスの声が闊歩してゆく。


 おいおい、なんだこの展開は。勘弁してくれよ。俺もカラスと一緒に帰りたいんだが。死ぬ前に殺されそうなんだが。

 しかし俺の心配は外れ、兵士長と呼ばれる男が右手をスッと顔の横に掲げると、オズたちを取り囲む男たちは一斉に刃を下ろした。

「やめなさい。我々は今日、戦いに来たわけではないでしょう?」

「ハッ! 飛燕(ひえん)兵士長!」

 ヒエンと呼ばれた男は、銃を突き付けられたまま不敵に笑った。

「もう一度だけ聞く。貴様、なんでこんなところにいる!」ウィルの顔は緊張で引き攣っている。ヒエンはぐるりと周りを見渡した後、もう一度俺に視線を戻してから穏やかに言った。

「あなたたちの国王にお呼ばれしただけです。和平交渉を兼ねた、国際親善試合の話し合いのためにね」

「こ、国際親善試合?」

「時にあなた。名前は?」

「おい、無視すんなよ!」

 吠えるウィルに構わず、ヒエンは俺から目を離さない。

「宮下、涼」

「殺気の勝負を遠くから見ていました。リョウさん、あなた、いい球を投げますね」

「は?」

「あなたの球を打席で見てみたい。どうです、私ともぜひ三球勝負、していただけませんか?」

 まさかの提案に、全員がぽかんと口を開けて銃口を地面に落とした。


/


「さ、いつでもいいですよ」

 軽く言ってバットを構えたヒエンの姿に、俺は全身総毛立つのを感じた。わずかにかがみこみ、腰の後ろでほぼ水平にバットを寝かせている。まるで抜刀直前の侍のように。

なんだ、あの構えは。

一球目。俺は外角低めいっぱいに、全力のストレートを投げ込む。ヒエンはピクリとも動かない。一ストライク。

二球目。背中の後ろを通りそうな軌道から急激に曲がり、内角ギリギリに決まる大きなスライダー。ヒエンはまたも動かない。二ストライク。今まで初対戦でこの球に対して少しでも腰が引けなかったやつなんていなかった。一度乾いたはずの汗が頬を伝う。暑いのに、寒気が止まらない。

「素晴らしい。もっとよく見せてください」

「クソッ、どのみち次で終わりだ、よっ!」

 三球目。ど真ん中から外角低めに落ちながら逃げる高速スライダー。これを初見でバットに当てられたのはオズだけ。どうだ、打てるもんなら打ってみやがれ!

 刹那、ヒエンは抜刀した。目にもとまらぬ居合斬りの如きスイング。ぼてぼてのゴロがフェアグラウンドに飛ぶ。

「ショートゴロだな」

「いえ。ヒットです」

「? なんだって?」

 勝利宣言とともにヒエンは納刀した。

 ヒットだと? どういう意味だ。完璧に打ち取った当たりだった。はったりか? けど、そんな見栄を張るような男にも見えない……

 原因不明の薄気味悪さを感じながらも、その真意を訪ねる間もなくヒエンは身を翻した。

「少々遊びすぎました……行きますよ皆さん。国王陛下をこれ以上お待たせしてはいけません」

「ま、待て! 貴様らが本当に国王に招かれてきたのかわからない以上、このまま通すわけには……」

「これ、招待状です」

 ヒエンは白い封筒を懐からピラリと取り出した。そこにはすっごく下手な文字で「しょう待状 アゼリア国兵団 卸おん中」と書かれている。

「国王様だな」

「ええ、国王様ですね。どうぞ、城の入口はあちらです」

 即答し、案内までするウィルとジョナー。それでいいのかダイヴァー国。困惑する俺に、ヒエンは一度こちらを振り向いた。そして意味深な言葉を残し、今度こそ去って行った。


「それでは、また三ヶ月後に」


/


 俺たちが国王の元に呼ばれたのはそれから一週間後のことだった。

 いつものように城の庭で練習をしていた俺たちは、久しぶりに登場した側近セバス・チャンに連れられて王のもとに向かう。

「うむ、よく来た諸君。今日は諸君らに話が……あっヤバい上がってきた。というか下がってきた」

 国王は真っ青な顔に苦悶の表情を浮かべ、椅子から若干腰を浮かせつつ言う。曰く、朝から下痢が止まらず大変なのだとか。

「ふぅ、ふぅ……えっと、どこまで話したっけ?」

「まだ何も話してません。国王様」

「そうか、では最初からは話そう。このたび、アゼリア国との和平交渉を兼ねたスポーツ交流を行うことになった。そこで和平の証として国際親善試合を行うのだが、」

「あぁ、ヒエンの言っていた」

「そうだアッ……。そしてアゼリア国側との協議の結果、競技種目に野球が選ばれた」

「なんですって!? ……あれ、この部屋なんか臭くね?」

「ん゛んっ! 漏らしてない! 漏らしてないからな! とくかく諸君らには国の代表として戦ってもらいたい試合は三ヶ月後大々的にテレビ放送するから恥をかかないようしっかりと練習に励むようにあと本当に漏らしてないからなマジで(ここまで一息)」

「あっ、はい」

 気まずそうに鼻の頭をポリポリ掻く国王の姿に何かを察し、全員無言で足早に王の間を去る。触れないのが思いやりというやつだ。


「ねぇ、さっきなにげにすごいこと言ってなかった?」

 帰り道、嬉々として言うオズに俺は尋ねる。

「なにが?」

「なにがって、親善試合のことだよ! 大々的にテレビ放送するってことは、野球を広めるための大チャンスじゃん! それがこんなタイミングで、偶然降ってくるなんて!」

「……」

「どうしたのリョウ、嬉しくないの?」

「ああ、いや。嬉しいよ」

「?」

 ふと疑問が湧き上がる。果たしてこれは、本当に偶然なのだろうか?

 神ははじめ、俺の命を人質にとって「野球を国技にしろ」と、交渉という体の命令を下した。その後彼は国王として再び俺の前に現れ、「人気スポーツにならない限り野球を国技にすることはできない」と言った。自ら国技にするよう命じておきながらだ。


 彼の本心を推測するに。神としては国技にすることを望みつつ、国王としての立場上簡単に許容することができないという、板挟みのような状態なのではないか?

 では、野球を国技にしたい理由とはなんだ? いったいなにを目論んでいる?


 それと気がかりはもう一つ。

「あのヒエンとかいうやつ、ショートゴロをヒットだと言ったよな?」

「気にすんなよ。あんなのただの負け惜しみだろ」

 ウィルは楽観的だが、俺にはそうは思えない。

「やつの打撃フォーム覚えてるか?」

「ん、ああ。お前から教わったやつとはずいぶん違ったな。ああいう変わったフォームもあるんだな」

「いや、俺がいた世界ではあんなフォームは見たことも聞いたこともなかった。たぶん、アゼリア国の野球文化の中で独自に発達したフォームなんだろう」

「ふーん」

「ふーんじゃねぇよ。まさかお前、あれを見て何も気付かなかったのか?」

「は? うっぜぇななにその言い方だから友だちできねぇんだよお前」

「やめろ、それは効く」

 唐突な心理攻撃に胸を痛めていると、ジョナーが見かねたように俺の意図を代弁してくれる。

「あのフォームでは長打、とりわけホームランは絶対に打てない。そういうことですね?」

「……あぁ。そういうこと」

 ヒエンの打撃フォーム。バットを腰の後ろあたりで構えた状態から、地面に対して水平よりやや下方向へと振り抜く。あれはいわゆる「ダウンスイング」というやつで、打球角度が上がりにくい。むしろ彼の目的は最初から、ボールを地面に転がすことのようにすら見えた。

 あれにはどういう狙いがあったのだろう。そしてなぜ、あれがヒットだと自信を持って言えるのか。わからないが、得体の知れない違和感を拭えない。


「ま、今から考えすぎてもしかたないよ! それより、三ヶ月後に向けていっぱい練習しなきゃ!」

 オズの言葉を受け、俺も一旦考えることをやめた。彼女の言う通りだ。相手がどんな野球をしてこようと、俺たちは俺たちの野球をするだけだ。

 そしてこの三ヶ月は、その「俺たちの野球」を見つけるための時間でもあるのだろう。セオリーに縛られず、野球というスポーツを真正面から見つめ直す。それはきっと野球の隠れた魅力を改めて探す作業でもあり、結果的に野球を人々に伝え、普及することにも繋がるはずだ。

「よーし! それじゃ気合い入れるために、円陣組も!」

 無邪気に提案するオズ。なんだかむず痒くて最初は抵抗していたが、例の如く話を聞かないオズに無理矢理流され、結局九人で輪になって肩を組んでいた。「行くよー! 私がチーム名を叫んだら、全員でファイオー! ね!」オズが元気よく宣言する。

 ……が、次の言葉が聞こえてこない。

「どうした、オズ」

 ウィルの問いかけに、オズはこてんと可愛らしく首を傾げた。

「ええっと。そういえばチーム名って、決めたっけ?」


/


 国王に親善試合のことを告げられた日から二ヶ月、俺たちは毎日猛特訓を続けている。最初のうちは九人だけでやっていたが、いつからかガルシアのソフトボールチームと合同で練習することが多くなり、最近ではしょっちゅう野良試合をして貴重な実戦経験を積ませてもらっている。

 ちなみに野球ルールとソフトボールルールを交互に行っていて、今のところ勝敗はほぼ五分だ。


 今日は久しぶりのオフ。「休むのもトレーニングのうちです」とはジョナーの言葉だ。だけど本当は一番練習したがりなあいつのことだ、どうせ今頃一人、内緒で素振りでもしているに違いない。

 ウィルなら……昼過ぎまで布団の中でゴロゴロしてそうだ。なんとなく。彼女と同棲してるなんて話、俺はいまだにちょっとだけ信じていない。


 オズは朝からなにやらオシャレに精を出している。普段はジャージばかりなのに、スカートを履いて。薄っすらと化粧までして。自室にこもったり、リビングに戻ってきたり、行ったり来たり。ルンルンと音が聞こえてきそうなテンションだ。

「ね、ねぇねぇ」机を挟んで対面の椅子に腰かけ、オズがおずおずと言う。オズがおずおずと。なんか面白い。

「リョウ、たまにはどこかに出かけない?」

「どこかって、どうせパン屋だろ?」

「えへへ。バレた?」

「わかるさ。こんなに毎日パンばかり食べさせられたら」

「あっ……やっぱり嫌いだった?」

「……まさか。美味しいよ。っていうか、」

「?」

「その、なんだ……いつもありがとう。お世話になってばかりで、ろくにお礼も」

「……んふふ。その言葉だけで十分」

 オズの顔がわずかに赤らむ。赤らんだことに気付いた自分に、驚く。

 なんだこれ。どういう状況?

「と、ところで!」オズがあからさまに話を逸らす。

「リョウは朝からなにをやってるの? ずっと紙とにらめっこ」

「あぁ。親善試合のオーダーを考えてた」

「へぇ、見せて?」

 隠す必要もないので紙をオズの方に向けて差し出す。


一番・ジャック(セカンド)

二番・アル(ファースト)

三番・ジョナー(キャッチャー)

四番・オズ(ショート)

五番・オレ(ピッチャー)

六番・アレク(サード)

七番・ロブ(ライト)

八番・バーリー(レフト)

九番・ウィル(センター)


「私が、四番?」

 驚いたように口に手を当てたオズに、俺はフフンと鼻を鳴らしてこの打順の意図を説明する。

「セオリーとは外れるけど、初回の一から三番ではあえて得点は狙わない。完全な偵察要因だ。選球眼があってより多くの球を見ることができるジャック、アル。さらに分析力がウリのジョナーを並べることで、できるだけ多く相手投手のデータを得る。

 本番は二回のオズ、お前からだ。お前はチームで一番バットコントロールが良くてヒットが期待できる。いわばランナーを返すのではなく、先頭で出塁してチャンスを作るための四番だ。その後の五から七番は打撃の総合力が高いメンバーを並べた。ここで一気に点を取る。

 八番のバーリーは……まぁ、当たったらラッキー枠だ。確実性は低いけど、前にランナーが溜まっていることも多いだろうから、一発長打で大量得点が期待できる。九番のウィルは足でかく乱する担当。セオリーだと弱い打者が置かれがちだけど、うちの場合は二巡目以降の一番に繋がる大事な打順だ。手を抜いてもらうわけにはいかない。

 実際、小技が得意な一番のジャックと連動して、」

「ウフフ……アハハハハ!」

 せっかく自慢のオーダーを解説してやっているのに、オズは突然笑い出した。なにがおかしい。俺は若干不機嫌になって尋ねる。

「ごめんごめん。だって、あんまりにも楽しそうに話すから、おかしくって」

 ほんとに野球が大好きなんだね、と言われて急激に頬が熱を帯びる。どうやら今度は俺が赤くなる番だったらしい。


 しばらくころころと笑っていたオズだったが、急に「ねぇ」と真面目なトーンで言う。こころなしか、部屋の湿度が増したような気がした。

「リョウは、いつか元いた世界に帰っちゃうんだよね?」

「……帰れると決まったわけじゃない。そのために頑張ってるんだろ」

「それだけ?」

「え」

「私たちと一緒に野球をやってる理由って、それだけ?」

 俺は改めて考える。確かに、最初は元の世界に帰るためだけに野球を始めた。野球なんて嫌いだと思いながら、生き返るためにしかたなく。だけどオズたちがそうじゃないと気付かせてくれた。俺は野球が好きだ。その事実を受け入れて、オズたちとは互いに信頼はないままチームを結成した。たった一つ「野球が好き」という共通点で繋がれただけの関係。

 だけど今はどうだろうか。正直、最近は「野球を国技にできなければ死ぬ」という恐怖心すら薄れつつある。朝起きて、競うように城の庭に集まって、皆で野球をして。そんな毎日に充実感を覚えている。

 俺は皆と一緒にいるのが楽しい。そうだ。それもきっと、認めなければならない事実なんだ。静かに首を横に振る。ふぅん、と意味ありげな返事の後、沈黙。


 十秒、二十秒。お互い見つめ合ったまま、動けないでいる。明らかに変(・)な(・)空気。オズのケータイが着信を告げる。オズは面倒臭そうに画面を一瞥した後――着信を切った。ごくり、とどちらかの喉から音が鳴った。

 そのままゆっくり、本当にゆっくり。少しずつ。お互いの顔の間にある邪魔な余白をかきわけて、前へ進む。もうすぐ余白が塗り潰れる……

 瞬間、オズがプッと吹き出した。空気が壊れる。俺は安堵する。同時にちょっとだけ、ガッカリもしている。たぶん。

「さすがにウィルに見られてると思ったら、恥ずかしいや」

 そう言った後「監視カメラ、近いうちに全部撤去しちゃおっか」と続けるオズに、ドギマギした俺は「あぁ、うん」なんて間抜けな返事で誤魔化す。

 でも、いつか離ればなれになる前提でそういう関係になるのはどうなんだろ。てかそういう関係ってなんだ。一人モヤモヤする俺をよそに、オズは俺が書いたオーダーの紙をジッと眺めている。

「どうかしたか?」

「ううん。ただ、私たちって、てんでバラバラだなって」

「バラバラ?」

「あ、チームがって意味じゃなくてね。個性がバラバラだなって。皆得意なことと苦手なことが違って、それぞれが生かし合って、補い合って、なんだか不思議な感じ」

「そりゃ、人間なんてバラバラで当然だろ。十人十色って言葉もあるし」

「ふふ、そうだね。でも私たちは九人しかいないよ?」

 二人一緒に、弾かれたように顔を上げた。これだ。ずっと皆で話し合っていたけど、どうにもしっくりくるものがなくて決まらなかったチーム名が、今思いついた。


「「九人九色(ナインカラーズ)!」」


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