33話:皆で囲む、朝食
「まぁまぁ、ルミナちゃん。そんなに怒らなくても」
私はベッドから降りると、まだ頬を膨らませているルミナちゃんの頭を、そっと撫でた。
「…な、何をするのじゃ」
「朝から大声を出して疲れたでしょう?」
「妾は疲れてなど…」
そう言いながらも、ルミナちゃんは私の手を振り払わなかった。
むしろ、少しだけ気持ちよさそうに目を細めている。
(あ、やっぱり撫でられるの好きなんだ…)
「はい、そろそろ朝ご飯にしましょう」
「うむ。朝食の時間なのじゃ」
ルミナちゃんはすぐにいつもの調子へ戻った。
3人も私達の後ろをついてくる。
まだ少し緊張しているようだったが、昨日よりも足取りは軽い。
「私達が行く場所ってどんな所…?」
セレナちゃんが小さな声で尋ねた。
「大きなテーブルがあって、皆でご飯を食べる所だよ」
「…皆で?」
「はい。一緒に食べましょうね」
「……僕、楽しみ」
その言葉を聞いて、私は嬉しくなった。
***
食堂の扉を開けると、既に朝食の準備が整っていた。
長いケーブルの上には、焼きたてのパン、温かいスープ、卵料理、野菜、果物などが並んでいる。
そして、テーブルの奥にはーー。
「あら~おはよう〜美桜さん」
ルミナちゃんのお母さん、ロザリアさん座っていた。
「おはようございます。ロザリアさん」
私が挨拶すると、ロザリアさんは優しく微笑む。
「まぁ、皆さん座って朝食の時間ですよ」
そしてロザリアさんは、3人に話しかけた。
「3人共よく眠れたのですか?」
3人は少し迷った後、ペコリと頭を下げた。
「お、おはようございます」
「まぁ〜。そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
ロザリアさんはとても穏やかだった。
「ここでは、ゆっくり少しでね」
セレナちゃんが恐る恐る尋ねる。
「…私達も、食べていいの?」
「勿論!食べていいんだよ」
ロザリアさんは、何でもないことのように答えた。
「食事は、皆で一緒にいただくものよ〜」
その言葉に、3人は驚いたように顔を上げた。
ルミナちゃんも椅子に座りながら言う。
「早く座るのじゃ。料理が冷めてしまうのじゃ」
「は、はい…!」
3人は私の隣に並んで座った。
私は3人の前に料理を取り分ける。
「食べてね〜」
「…これ全部、食べてもいいの?」
「はい、おかわりもありますよ」
3人は、テーブルいっぱいの料理を見つめていた。
「こんなに…」
「朝ご飯っていつもこんなにあるの?」
「魔王城では、これが普通なんだよ」
私が答えると、ルミナちゃんか胸を張った。
「我が城の料理人達は優秀じゃからな!」
ロザリアさんも微笑む。
「皆さんお口に会うといいのだけど」
3人はます、温かいスープを一口飲んだ。
「…温かい」
「美味しい…」
レオンくんは焼きたてのパンの食べ、目を丸くする。
「フワフワ…」
私はその様子を見て、思わず笑顔になった。
(よかった。ちゃんと食べてくれてる…)
「こんな朝ご飯初めて」
その言葉に、私の胸がキュッとなった。
「じゃあ、これから毎日美味しいご飯食べましょうね」
3人は顔を見合わせた。
そして、少しずつ笑顔になっていった。
ルミナちゃんはスープを飲みながら満足そうに言う。
「うむ。新しい仲間が増えるのは、悪くないのじゃ」
「ルミナちゃん、仲良くしてあげてくださいね」
「言わずとも分かっておるのじゃ!」
ロザリアさんは、そんなルミナちゃんを見てクスリと笑った。
「フフッ。賑やかになりますわね〜」
こうして朝の食卓には、焼きたてのパンの香り。
温かいスープ。
小さな笑い声。
そして、黒エルフの三つ子たちが初めて感じる安心して誰かと一緒に食べる、穏やかな朝の時間が始まった。




