30話:まずは、ゆっくりお風呂に入りましょう
30話です。
3人の黒エルフを連れて魔王城に戻ると、私はすぐにルミナちゃん達の所へ向かった。
「ルミナちゃん!ちょっとお願いがあります!」
「何じゃ、そんな慌てて」
ルミナちゃんが振り返る。
その後ろには、ロザリアさんもいた。
私は3人の黒エルフを紹介する。
「セレナちゃんとリリアちゃんとレオンくんです。この子達は、森の近くで見つけました。奴隷商人に売られて、そこから逃げてきたそうです」
「…奴隷商人」
ロザリアさんの表情が、すっと曇った。
3人は怯えるように身を寄せ合う。
私はすぐに続けた。
「今は行く場所がないみたいなので、暫く私達と一緒に暮らせないかなと思って…」
「もちろんいいわよ〜」
ロザリアさんは、迷うことなく答えた。
「この城で安全に過ごせるようにするわね〜」
「良かった…!」
ルミナちゃんも3人を見つめる。
「ここでは誰もお主達を傷つけぬのじゃ。安心するがよいのじゃ!」
3人はまだ緊張していたが、少しだけ表情が和らいた。
私は3人の服や髪を見て、ふと思った。
「…その前に!」
「その前に何じゃ?」
ルミナちゃんが首を傾げる。
「まずは、お風呂に入りましょう!」
3人は驚いたように私を見る。
「お、お風呂…?」
「はい。体も髪も綺麗にして、ゆっくり温まりましょう」
私は自分の不思議な袋を取り出した。
「こういうときこそ、袋の出番です!」
袋の中に手を入れるとーー。
「シャンプー!」
ポンッ。
「リンスー!」
ポンッ。
「ボディソープ!」
ポンッ。
更に、柔らかいタオルや新しい服まで取り出した。
リリアちゃんが質問をする。
「なにこれ、初めて見た」
「髪を洗うものと、体を洗うものです。とってもいい香りがするんだよ」
私はシャンプーの容器を見せた。
「これで髪を洗うと、サラサラになります」
セレナが話す。
「サラサラ…?」
「はい。ボディソープは体を綺麗にするものです」
ルミナちゃんが興味深そうに覗き込んだ。
「また袋から妙な物を出したのじゃ」
「妙な物ではありません。生活必需品です!」
ロザリアさんは微笑みながら、3人に声を掛けた。
「怖がらなくても大丈夫よ〜ゆっくりで構わないわよ」
3人はお互いに顔を見合わせる。
やがて、リリアちゃんが訪ねた。
「…本当に、入っていいの?」
「勿論、入っていいんだよ」
私は話をした。
「温かいお湯に入って、嫌な事を忘れましょう」
「……怒られないの?」
「怒らないよ」
「勝手にお風呂使ってもいいの?」
「はい、お風呂を使う時は、ロザリアさんか私に言ってくれればいいんだよ」
私は笑顔で答えた。
ルミナちゃんは前に出て言う。
「では、お風呂に行くのじゃ。妾が案内してやるのじゃ」
3人は恐る恐る頷いた。
私は浴室へ向かいながら、使い方を説明する。
「まず髪の毛を濡らして、シャンプーを少し手に取ります。泡立てて、優しく洗います」
「痛くないの?」
「優しく洗えば、痛くないから安心してね」
「その後がリンスーです。髪を整えてくれます」
「…体も洗うの?」
「体を洗うのはボディソープで、タオルにかけて泡立て優しく洗います」
3人は真剣に説明を聞いた。
やがて浴室の扉を開けると、温かい湯気がフワッと広がった。
「わぁ…」
3人の口から、思わず声が漏れる。
大きな浴槽には、透き通ったお湯が張られている。
「こんなに大きなお風呂…」
「ゆっくりと浸かってね」
私は新しいタオルと服を用意した。
「終わったら、これに着替えてね」
3人は新しい服を見つめ、戸惑ったように尋ねる。
「…私達がこの服を着てもいいの?」
「勿論、リリアちゃんとセレナちゃんとレオンくんの為に用意したんだよ」
「……ありがとう」
「美桜さん…ありがとう」
「…僕嬉しい…」
3人はそれぞれお礼を言う。
そして、少しずつ浴室の中へ入っていく。
3人は手を温かいお湯に入れた瞬間ーー。
「…温かい」
「気持ちいい…」
「………僕これ好きかも…」
小さな声が聞こえてきた。
私はその声を聞きながら、ほっと胸を撫で下ろした。
(まずは、体を綺麗にして、ちゃんと暖まってもらおう)
ルミナちゃんも浴室の外から様子を見ていた。
「どうじゃ?少しは落ち着いたか?」
「……うん」
3人の声は、先程よりもずっと穏やかになっていった。
私はシャンプーを手に取り、にっこりと笑う。
「さぁ、髪も綺麗にしましょうね」
こうして3人の黒エルフ達は、魔王城で初めての温かくて、安心できる時間を過ごす事になった。
作者コメント
見てくださりありがとうございます
もしかすると誤字や文章がおかしくなっていた際には、気兼ねなく書いてくださると嬉しいです。
批判コメントは、作者がガラスのハートの持ち主なのでNGお願いしします!




