27話:3時のおやつは、巨大プリン
魔王城へ帰ってきた翌日。
私は朝から、ある物を作っていた。
「さて…材料はこれでよし!」
キッチンのテーブルには、卵、牛乳、砂糖、バニラエッセンが並んでいる。
そして、私の目の前にはーー。
普通のプリン用とは思えないほどのの大きな器。
(フフフ…今日はルミナちゃんのために、特大プリンを作るのだ!)
人魚の国から帰って来たルミナちゃんは、少し疲れているようだった。
それなら、甘いものを食べて元気になってもらうしかない。
私は卵を割り、牛乳と砂糖を混ぜていく。
「よーく混ぜて…」
魔族の料理人達が、少し離れた所から興味深そうに見ていた。
「美桜さん、それは一体何という料理でしょうか?」
「プリンです!」
「ぷりん…?」
「甘くて、ぷるぷるしていて、とっても美味しいデザートですよ」
「なるほど…」
料理人達は真剣な表情で、私の作業を見守っている。
私はこしたプリン液を大きな器へ流し込み、蒸し器へ入れた。
「よし。後はじっと待つだけ!」
そして、暫くしてーー。
「出来た!」
蒸し器の蓋を開けると、そこには見事な黄金色のプリンが完成していた。
しかも、普通のプリンの何倍も大きい。
表面はつるんとしていて、少し揺らすとぷるんぷるんと震える。
「わぁ……!」
魔族の料理人達から、思わず声が漏れた。
「これが…巨大なデザート…!」
「何という大きさ……!」
私は仕上げに、たっぷりのカラメルソースをかけた。
とろりと流れるカラメルが、プリンの表面を美しく覆っていく。
更に、バッグから生クリームと小さな果物を取り出し、周りに飾り付ける。
(完璧……!)
時計を見ると、ちょうど午後3時。
「おやつの時間だ!」
魔族の料理人達が巨大のプリンを大きな台に乗せ、ルミナちゃんのいる部屋へ運んだ。
私は走りながら叫んだ
「ルミナちゃ〜ん!」
「何じゃ?」
部屋に入ると、ルミナちゃんはソファに座って本を読んでいた。
「今日のおやつを持ってきました!」
「おやつ?」
魔族の料理人達がテーブルの上に巨大プリンを置く。
ドンっ!
大きな音と共に、プリンがテーブルの中央にに現れた。
「……」
ルミナちゃんは、暫く固まっていた。
「…何じゃ、これは」
「プリンです!」
「ぷりんとは何じゃ!しかし…大きすぎるのじゃが…」
「ルミナちゃんのために作った特大プリンですよ」
「妾1人で食べるのか!?」
「勿論です」
「無理じゃ!」
「ですよね〜張り切りすぎちゃって」
ルミナちゃんがプリンを見上げる。
その大きさは、もはやデザートというより、小さい家具に近い。
「3時のおやつにしては規模がおかしいのじゃ!」
「ですよね〜私も食べますし、魔族たちにも食べてもらいましょう。まずはルミナちゃん食べてください」
私はスプーンを用意し、プリンを少しすくった。
ぷるん、と揺れたプリンが、スプーンの上で輝く。
「はい、どうぞ」
ルミナちゃんは警戒しながらも、一口食べた。
「…!」
次の瞬間、ルミナちゃんの目がぱっと輝いた。
「……美味しいのじゃ!」
「でしょう!」
「甘くて、柔らかくて…カラメルの苦みもよいのじゃ!」
「気に入ってくれました?」
「う、うむ。これはなかなかなのじゃ…」
ルミナちゃんはそう言いながら、もう一口食べる。
そして、更にもう一口。
「ルミナちゃん、気に入ったんですね」
「べ、別に!せっかく作ってくれたから食べているだけじゃ!」
「はいはい」
私は笑いながら、ルミナちゃんの前にプリンを取り分けていく。
すると、そこへロザリアさんがやって来た。
「あら…。何やら甘い香りがしますね」
「母上!」
ロザリアさんはテーブルの巨大なプリンを見て、目を丸くした。
「まぁ〜美味しそうな食べ物ですわね」
「美桜が作ったのじゃ!」
「ルミナちゃんのために作りました!」
「まぁ、素敵だわ〜」
私はスプーンでプリンをすくってロザリアさんに渡す。
「まぁ〜とても滑らかで美味しいですわね」
「ありがとうございます!」
ルミナちゃんはプリンを食べながら、ちらりと私を見る。
「……美桜」
「はい?」
「また作ってほしいのじゃ」
「勿論です!」
「今度は、もう少し小さいものを…」
「えっ、もっと大きいのがいいんですか?」
「違うのじゃ!小さくと言ったのじゃ!」
「冗談ですよ」
「本当に分かっておるのじゃな?」
午後三時。
他の魔族たちにも分けていき、自分のもよそいながら食べる。
(美味しすぎるよ…)
私達は巨大プリンを食べ続けた。
ルミナのお気に入りのがプリンになったことに気づかずに。




