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ブラック企業で過労死した私、召喚された先で魔族の少女に癒されています。  作者: 宝妖夜るあ


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25/36

25話:お姉ちゃん…?

25話です


「久しぶりね、お姉ちゃん」


その言葉が部屋に響いた瞬間ーー。


人魚の女王ヴァレリア様は、ピタリと動きを止めた。


まるで、時間そのものが止まってしまったかのようだった。


「……」


誰も声を出さない。


ロレッタちゃんもルミナちゃんも、魔族の護衛達も、ただヴァレリア様の様子を見つめている。


私は思わず息を呑んだ。


(ヴァレリア様……?)


ヴァレリア様の唇が小さく震えた。


「……貴方…なの?」


レティシアさんは、ゆっくりと頷いた。


「えぇ。私レティシアよ」


「そんな…」


ヴァレリア様はふらりと一歩、前へ出た。


「そんなはず…ありません。貴方は…ずっと…」


「死んだと思っていた?」


レティシアさんは少し困ったように笑う。


「ごめんなさい。長い間、連絡もせずに」


「ごめんなさいですって…」


ヴァレリア様の声が震えた。


怒っているようにも聞こえたけれど、その目には怒りよりも、涙が浮かんでいた。


「貴方がいなくなってから…私は…何度も、何度も探したのよ!」


「えぇ…」


「どこにいるのか、生きているのか誰と暮らしているか…誰も分からなくて」


ヴァレリア様の頬を、一筋の涙が伝った。


レティシアさんは申し訳なさそうに目を伏せる。


「本当に、ごめんなさい」


「どうして…どうして何も知らせてくれなかったのですか!」


ヴァレリア様は声を震わせながら、レティシアさんの隣にいた娘海莉ちゃんが不安そうに母親の服を掴んだ。


「ママ…」


「大丈夫よ」


レティシアさんは海莉ちゃんの手を優しく握った。


「この人魚はね、貴方の叔母さんなの」


「……叔母さん?」


海莉ちゃんがヴァレリア様を見上げる。


ヴァレリア様も、初めて海莉ちゃんの存在に気づいたように目を向けた。


「この子は……?」


「私の娘、海莉よ」


レティシアさんが答える。


「人間の男性との間に生まれた子なの」


その言葉を聞いた瞬間、部屋の空気が少しだけ変わった。


海莉ちゃんは、自分の腕や首元にある鱗を隠すように、服の袖を引っ張った。


「……わ、私は、人魚の国に来てはいけないと思ってたの」


小さな声だった。


「人魚と人間の昆血だから…。きっと、皆に変な目で見られるって…」


「そんな事…」


ヴァレリア様は、驚いたように海莉ちゃんを見つめた。


海莉ちゃんは更に俯く。


「ママも病気になってしまって…。だから、ずっと森の家で暮らしていました」


ヴァレリア様は、ゆっくりと海莉ちゃんの前にしゃがみ込んだ。


「顔を上げてください」


海莉ちゃんは恐る恐る顔を上げる。


ヴァレリア様は、海莉ちゃんの鱗を見ても嫌な顔を一つしなかった。


それどころか、優しく微笑んだ。


「貴方は、私の姪なのですね」


「……嫌じゃないの?」


「どうして嫌がる必要があるのですか?」


ヴァレリア様はそっと海莉ちゃんの手を取った。


「貴方は、私の妹が大切に育てた娘。私にとっても、大切な家族ですよ」


海莉ちゃんの目に、涙が浮かぶ。


「家族…?」


「えぇ。勿論です」


その言葉を聞いたレティシアさんも、静かに涙をこぼした。


「お姉ちゃん…」


ヴァレリア様は立ち上がり、妹の方へ向き直った。


そして、暫く何も言わずに見つめ合った後ーー。


ギュッと、レティシアさんを抱きしめた。


「…遅すぎるわよ」


「うん…」


「本当に、遅すぎます!」


「ごめんなさい…」


「ずっと…会いたかったのですから!」


ヴァレリア様の声が、涙で震えていた。


レティシアさんもヴァレリア様の背中に腕を回す。


「私も、会いたかった」


長い間離れていた姉妹は、ようやく再会を果たした。


その姿を見て、ロレッタちゃんは目を潤ませながら呟いた。


「お母様…良かったね…」


ルミナちゃんも静かに頷く。


「うむ…。本当に良かったのじゃ」


私は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。


(良かった…。本当に、再会出来たんだ)


けれど、ヴァレリア様はレティシアさんの体を見て、すぐに表情を変えた。


「…それよりも、貴方。随分と体が弱っているじゃない!」


「少し、長く寝込んでいただけよ」


「少しではありません!」


ヴァレリア様はすぐに人魚の護衛達へ指示を出した。


「医務室へ連れていきなさい。すぐに最高の治癒師を呼んで!」


「はっ!」


人魚の護衛達が慌ただしく動き始める。


レティシアさんは申し訳なさそうに笑った。


「相変わらず、心配性」


「貴方が心配をかけ過ぎなのです!」


ヴァレリア様は涙を拭きながら、少し怒ったように言った。


けれど、その声には確かな優しさがあった。


私は海莉ちゃんの隣にたち、そっと声をかける。


「これで、もう海莉ちゃん一人で抱え込まくても良くなりましたね」


「…うん」


そして、小さく笑った。


「ママ、帰ってこれたんだね」


海莉ちゃんは少し迷った後、ヴァレリア様の側へ歩いていく。


ヴァレリア様は海莉ちゃんの頭を優しく撫でた。


「よく頑張りましたね」


その一言で、海莉ちゃんの目から涙が溢れた。


「……はい」


私はその光景を見ながら、心の中でそっと呟いた。


(家族って、やっぱりいいな…)


こうして、長い間行方不明だったヴァレリア様の妹レティシアさんは、再び人魚の国へ帰ってきた。


そしてその日、人魚の王宮にはーー。


何年もの間、失われていた家族の時間が、少しずつ戻り始めた。









作者コメント

見てくださりありがとうございます

見てくれただけ書く気力が湧きます

次は26話です

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