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ブラック企業で過労死した私、召喚された先で魔族の少女に癒されています。  作者: 宝妖夜るあ


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20/36

20話:勇気を出して、こんにちは

20話です

どうぞ!

私は古びた扉の前に立った。


木の表面は傷だらけで所々色が剥がれている。


扉の向こうから、微かな話し声が聞こえてきた。


私は一度、ルミナちゃんを振り返った。


「美桜、本当に大丈夫なのじゃな?」


「はい。できるだけ優し話します」


私は息を吸い込んだ。


そして、扉を軽く叩いた。


コン、コン。


中の声が止まった。


「……誰?」


少女の声だった。


警戒しているのが分かる。


「こんにちは」


私はできるだけ穏やかな声で答えた。


「突然ごめんなさい。少しお話をしたいんです」


「帰ってください」


即答だった。


「えっと…」


「ここには何もありません。食べ物も、お金も、渡せる物はありません」


「違います。何かをもらいに来たわけではありません」


「じゃあ、何のために来たの?」


「貴方達が心配だったからです」


扉の向こうが静かになった。


「……心配?」


「はい。さっき、街道で貴方を見かけました」


すると、少女の声がさらに固まった。


「見たの……?」


「はい。でも、貴方を傷つけたり、誰かに言ったりするつもりはありません」


「信じられません」


その言葉には、今まで何度も誰かに怖い思いをさせられたような響きがあった。


私は少し考えてから、ゆっくりと言った。


私達は、貴方を追いかけてきました。でも、それは捕まえるためではありません」


「………」


「お母さんが病気なのではないですか?」


扉の向こうから、息を呑む音が聞こえた。


「どうして…」


「家の中をが見えました。お母さんが寝込んでいるのが見えたんです」


「帰って!」


少女の声が大きくなった。


「ママには何もしないで!」


「しません!」


私はすぐに答えた。


「絶対に何もしません。むしろ、助けたいんです」


「どうせ、私達を見たら気味悪がるくせに!」


その言葉に、胸がギュッと痛くなった。


「気味悪いなんて思いません」


「嘘!」


「本当です」


私は扉の前で、真っ直ぐに言った。


「私は異世界から来た人間ですけど、いろんな種族がいるこの世界が好きです」


「……」


「貴方に鱗があっても、人魚のような姿でも、それだけで嫌いになったりしません」


ルミナちゃんも扉の近くへ歩いて来た。


「妾も、お主達を傷つけるつもりはない」


少女は黙っていた。


「私達は、ただ困っているなら力になりたいんです」


しばらくして、家の中から弱々しい女性の声が聞こえてきた。


「……その方達を家の中へ入れて上げなさい」


「ママ!?」


「大丈夫よ」


「でも……」


「この方達は、悪い人ではないわ」


少女は暫く迷っていた。


やがて、扉の鍵がゆっくりと外された。


ギィ…。


扉が少しだけ開く。


少女が顔を覗かせた。


その瞳には、まだ警戒心が残っている。


「……本当に何もしない?」


「はい」


「私達を誰かに売ったりしない?」


「絶対しません」


「……分かった」


少女は扉を大きく開けた。


「入ってください」


「ありがとうございます」


私とルミナちゃんは、ゆっくりと家の中へ入った。


室内はとても寒く、空気も重かった。


けれど、そこには確かに、親子が一緒に暮らしている温かさが残っていた。

作者コメント

見てくださりありかとうございます

見てくれただけでも書く気力が湧きます

誤字報告も気兼ねなく書いてください

次は21話です

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