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ブラック企業で過労死した私、召喚された先で魔族の少女に癒されています。  作者: 宝妖夜るあ


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19話:ボロボロの家に暮らす、鱗の少女

古びた家は、森の奥にひっそりと建っていた。


周囲には誰もいない。


鳥の鳴き声と、木々の葉が揺れる音だけが聞こえている。


先程の人物は、家の中へ入ったようだった。


「どうしますか?」


私は少声で尋ねた。


「まずは様子を見るのじゃ」


ルミナちゃんも声を落として答える。


私達は家の外から、窓の隙間をそっと覗いた。


薄暗い室内には、小さなテーブルと古い椅子が置かれていた。


壁にはヒビが入り、床も所々壊れている。


暖炉には、微かに炎が残っていた。


そして、部屋の奥に先程の人物がいた。


マントを外したその姿を見て、私は息を呑んだ。


「……女の子?」


そこにいたのは、まだ幼い少女だった。


年齢は、ルミナちゃんと同じくらいか、少し幼いように見える。


髪は淡い色をしていて、顔立ちはとても整っていた。


けれど、腕や首元には、はっきりと鱗がある。


人間とも、人魚とも少し違う姿だった。


少女は、テーブルの上に置かれた小さな皿を持ち上げた。


そして、ベッドに横たわっている女性へ近づく。


「ママ。少しだけでも食べて、少女は優しく声をかけた。


ベッドに寝ている女性は、弱々しく体を起こした。


「ありがとうセレナ…」


女性の声は、かすれていた。


顔色も悪く、かなり弱っているように見える。


そして、布団から少しだけ見えた足元には、人魚のようなヒレがあった。


「……あの人も人魚?」


私は小さく呟いた。


ルミナちゃんが目を細める。


「おそらくなのじゃ」


少女は母親に食べ物を食べさせていた。


自分は殆ど食べていないようだった。


皿にある自身の食べ物もほんの少ししかない。


「あ母さん、今日はこれしか手に入らなったけれど……」


「十分よ。セレナが食べなさい」


「私は大丈夫ママ」


「嘘つかないの」


女性は苦しそうに笑った。


「セレナもお腹が空いているでしょう」


「……大丈夫だよ」


少女は無理に笑ってみせた。


その姿を見て、胸が痛くなった。


この家には、生活に必要なものがほとんどない。


食べ物も少ない。


母親は病気で寝込んでいる。


少女は1人で母親の世話をしているようだった。


「助けた方が良いのではないか?」


ルミナちゃんが小声で言う。


「はい……」


私は頷いた。


けれど、突然入っていけば、少女を怖がらせてしまうかもしれない。


少女はマントで鱗を隠していた。


きっと、誰かに見られることを恐れている。


「まず、話しかけてみます」


「慎重にするのじゃ」


「はい」


私は家の扉を見つめた。


古い木の扉。


その向こうには、二人の親子が暮らしている。


私は深呼吸した。


(……大丈夫。怖がらせないように)


そして、ゆっくりと扉へ近づいた。


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