↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック企業で過労死した私、召喚された先で魔族の少女に癒されています。  作者: 宝妖夜るあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/36

16話:人魚の女王様の妹、その過去

16話です

どうぞ!

私達は、肖像画の前で、しばらく立ち止まっていた。


ヴァレリア様は、今もその絵を見つめている。


まるで、そこにいるレティシアさんへ話しかけるような目だった。


「レティシアさんは、昔から人間の世界へ興味があったんですか?」


私が尋ねると、ヴァレリア様が小さく頷いた。


「えぇ。幼い頃から、陸の世界へ行きたいとよく言っていました」


「陸の世界?」


「人魚の国の外は何があるのか。海の上にはどんな景色があるのか。人間はどんな暮らしをしているのか…。いつもそんな話ばかりしていました」


ヴァレリア様は懐かしそうに笑った。


「レティシアは、とてもやんちゃな子でした。王宮を抜け出しては、窓の外へ行こうとしていたものです」


「活発だったんですね」


「ええ。私も子供の頃は活発的でしたが段々規則を守る大人しい子になりました」


「今のヴァレリア様から想像できません」


「フフ。私は幼い頃から次の女になることが決まってましたから」


ヴァレリア様は静かに続けた。


「自由に遊ぶことも好きな場所へ行くことも、あまり許されませんでした。まぁロザリアの所には行っていましたよ。でも国を治める者として常に正しくあらねばならないと教えられていたのです」


「それは……大変ですね」


「当時の人魚の国では、人間は危険な存在だと教えられていました」


「人間が悪い存在だと?」


「えぇ。人間は海を汚し、人間は海を汚し、人魚を傷つける者たちだと」


私は少し複雑な気持ちになった。


現代の私からすれば、人間にも良い人と悪い人がいる。


種族だけで決めつける事は出来ない。


「でも、レティシアさんはそう思わなかったんですね」


「そうです」


ヴァレリア様は肖像画を見上げた。


「レティシアは、自分の目で人間を見たいと言いました。そして、ある日……1人の人間の男性と出会ったのです」


「その人が、恋の相手ですか?」


「えぇ」


ヴァレリア様の声が少しだけ柔らかくなる。


「彼は妹を恐れませんでした。人魚だからと避けることもなく、珍しい物を見るような目で見ることもなく、1人の女性として接してくれたそうです」


「素敵な人だったんですね」


「レティシアさんは、その男性と過ごすうちに、陸の世界へ行きたいと言う思いを更に強くしていきました」


「そして、駆け落ちした…」


「正確には、駆け落ち同然に国を出してきました」


ヴァレリア様は目を伏せた。


「私は、レティシアを止めました。人間は危険だと。国を捨ててはいけないと。自分の立場を考えなさいと…何度も言いました」


「……」


「レティシアは泣きながら言いました。【私は、私の人生を自分で選びたい】と」


その言葉に、私は胸が締めつけられた。


「私は、レティシアの気持ちを理解出来ませんでした」


ヴァレリア様の声が、ほんの少し震えた。


「王になることを受け入れていた私は、それが当然だと思っていたのです。レティシアも同じように、国のために生きるべきだと」


「でも、レティシアさんは違った」


「えぇ、レティシアは自由を求めていました」


ヴァレリア様は肖像画にそっと手を伸ばした。


「それから、レティシアは人間の男性と共に陸の世界へ行きました。それ以外、一度も会ってません」


「手紙や連絡は?」


「ありませんでした」


「……生きているのかどうかも?」


「分かりません」


ヴァレリア様は静かに答えた。


「最初は、いつか戻って来ると思っていました。けれど、何十年経っても帰ってこない。探そうとしても、陸の世界は広すぎました」


「ヴァレリア様は、今でもレティシアさんを心配しているんですね」


「勿論」


ヴァレリア様は、悲しそうに微笑んだ。


「私は、あの子に謝りたいのです」


「謝りたい?」


「レティシアの気持ちを理解しようとしなかったこと。自由をうばおうとしたこと。そして、最後に交わした言葉が、きつい言葉ばかりだったことを」


私はヴァレリア様の横顔を見つめた。


「でも、まだ生きている可能性はありますよね」


ヴァレリア様が顔を上げる。


「……えぇ」


「だったら、可能性はゼロじゃないです」


私はゆっくりと言った。


「どこかで元気に暮らしているかもしれません。いつ、まだ会えるかもしれません」


「美桜さん…」


「だって、まだ分からないんですよね?」


「えぇ」


「なら、諦めなくてもいいと思います」


ヴァレリア様は暫く黙っていた。


やがて、目を細めて微笑んだ。


「美桜さんは、不思議な方ですね」


「そうですか?」


「えぇ。まるで暗い場所に小さな灯りを灯すようなことを言うのですね」


「私はただ、また会えたらいいなって思っただけです」


「……そうですね」


ヴァレリア様は肖像画を見上げた。


「いつか、もう一度だけでも会えたら……そう願っています」


その声は、とても小さかった。


私の心の中で祈った。


(どうか、ヴァレリア様がレティシアさんにもう一度会えますように)





作者コメント

見てくださりありかとうございます

見てくれただけても書く気力が湧きます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。