10話:魔王城に響く、謎のピアノの音
10話目です。
新しく登場したキャラ
ヴァイオラ・シルヴァスタ
ロザリアさんのお姉さん
ロザリアさんの旧姓はヴァイオラ
性格は凛とした女性。怒らせると怖い。
髪の色:淡い銀色(色を変える時もある)
髪型:長い髪
バスト:F
ある朝。
私は、いつもより早く目を覚ました。
窓の外は、まだどんよりと薄暗かった。
夜明け前の空は、濃い黒色から明るくなり始めている。
庭園には白い霧がかかっていた。
「………起きないと」
私はベッドから起き上がった。
部屋の中は静かだった。
いつもなら、廊下から魔族たちの足音や話し声が聞こえてくる。
けれど、今朝は違った。
静かな城内にーー。
ポロン。
ポロロン。
美しい音が響いた
「………ピアノ?」
私は耳を澄ませた。
ポロン、ポロン。
ゆっくりとした旋律。
どこか寂しく、それでいて美しい音色だった。
(こんな朝早くから、誰が弾いているのだろう?)
私は部屋を出た。
廊下は薄暗く、窓から差し込む朝の光(赤い光)が赤い絨毯が淡く照らしている。
音は、城の奥から聞こえていた。
私は音を頼りに、長い廊下を進んだ。
角を曲がる。
階段を降りる。
更に奥へ進む。
やがて、1つの大きな扉の前にたどり着いた。
扉の向こうから、ピアノの音が聞こえる。
私はそっと扉を開いた。
そこには、大きなピアノが置かれていた。
窓から差し込む赤い光、部屋の中を赤く染めていた。
そして、ピアノを弾いていたのはー。
見知らぬ美しい女性だった。
長い髪。
落ち着いた色のドレス。
背筋を伸ばした姿勢。
指先が鍵盤の上を滑るたび、優しく音色が部屋いっぱいに広がっていく。
私は思わず、その場に立ち尽くした。
(……美人)
ルミナちゃんのお母様ロザリアさんとはまた違う美しさだった。
ロザリアさんが柔らかくて優しい雰囲気なら、この女性は凛としていて、近寄りがたいほどの気品をまとっている。
ピアノの音が止まった。
静かになった廊下には、先程まで響いていた美しい旋律の余韻だけが残っている。
(………どうしよう。入っていいのかな?)
勝手に入るのは失礼だと思ったけれど、先程の女性の姿がどうしても気になってしまう。
長く美しい髪。
凛とした目元。
背筋を伸びた姿勢。
そして、ピアノの弾く指先の優雅さ。
まるで絵画から抜け出して来たよう人だった。
「………そこにいるのは、美桜さんでしょう?」
突然扉の向こうから声がした。
「は、はい!」
驚いて背筋が伸びる。
「入ってきなさい」
「失礼します…」
私はゆっくりと扉を開けた。
窓から差し込む朝の赤い光が、ピアノの表面に反射している。
先程の女性は、ピアノの椅子に座ったままこちらを見ていた。
「そんなに緊張しなくてもよいでしょう」
「いえ、その……とても綺麗な方だったので…」
「綺麗?」
女性は少し眉を上げた。
「はい。凄く美人です。ピアノを弾けるなんて……」
「フフ。お世辞が上手なのね」
「お世辞じゃないです。本当にそう思ったんです!」
思わず力を込めて答えてしまう。
女性は少し驚いたように目を瞬かせた後、静かに笑った。
「なるほど。貴方は、思ったことをそのまま口にする人なのね」
「よく言われます……」
「それで、貴方はルミナと中が良いようだけれど」
「はい!ルミナちゃんには毎日癒されています!」
「ルミナちゃん?……」
女性の表情が僅かに変わった。
「貴方、あの子をそう呼んでいるの?」
「はい。とても可愛いので」
「……あの子が、可愛い?」
「はい!物凄く可愛いです!」
即答すると、女性は口元に手を当てた。
「フフフ…」
「あ、あの、何か変なこと言いましたか?」
「いいえ。ただ、あの子をそんな風に褒める人は珍しいと思って」
「そうなんですか?」
「ええ。ルミナは強い魔王になろうとしていて、いつも難しい顔をしているから」
「でも、実際はとても可愛いですよ」
「そうね」
女性はピアノの鍵盤に視線を落とした。
「小さい頃から、負けず嫌いでね。何でも1人で出来ると思っている所があるの」
「ルミナちゃんらしいです」
「貴方は、あの子のことをよく見ているのね」
「はい。毎日見ていますから!」
「……毎日?」
「服を作ったり、写真を撮ったり、応援ボードを作ったりしています」
「応援…ボード?」
「はい!ルミナちゃんを応援するための物です!」
私はバッグから、以前作った応援ボードを取り出した。
そこには大きな文字で、【ルミナちゃん、今日も可愛い!】と書かれている。
女性はそれを見て、しばらく黙っていた。
「……なるほど」
「どうですか?」
「とても……独特ね」
「褒めてます?」
「ええ。多分」
女性は小さく笑った。
その笑顔はとても上品だったが、どこか近寄りがたい雰囲気もあった。
その時、廊下から足音が聞こえてきた。
「叔母様ー!」
元気な声とともに、ルミナちゃんが部屋へ入ってきた。
「…叔母様?」
私は思わず聞き返した。
ルミナちゃんは女性の側まで駆け寄ると、嬉しそうに顔を上げた。
「やはり来ておったのじゃ」
「ええ。久しびりね、ルミナ」
「うむ。元気そうで何よりじゃ」
私は思わず声を上げた。
女性はゆっくりと立ち上がり、私に向かって優雅に頭を下げた。
「初めまして。ルミナの母ロザリアの姉ヴァイオラ・シルヴァスタです」
「は、初めまして!青葉美桜です」
「貴方のことは、妹から聞いてますよ」
「ロザリアさんからですか?」
「ええ、異世界から来た不思議な女性が、ルミナの側にいると」
「不思議な女性…」
「可愛い服を作ったり、妙な道具を出したりしているそうね」
「妙な道具…」
否定できない。
「でも、ルミナが楽しそうにしていると聞いて安心しました」
その言葉に、ルミナちゃんが少しだけ頬を赤くした。
「べ、別に楽しんでいるわけではないぞ!」
「そう?」
「そうじゃ!」
「では、その服は?」
シルヴァスタさんの視線がルミナちゃんの服へ向ける。
今日のルミナちゃんは、私が作った可愛異ワンピースを着ていた。
「こ、これは…美桜が勝手に作っただけじゃ!」
「でも、着ているのね」
「一度だけじゃ!」
「フフ、よく似合っているわよ」
「……っ」
ルミナちゃんの顔が更に赤くなる。
私はその様子を見て、心の中で叫んだ。
(シルヴァスタさんに褒められて照れてるルミナちゃん、可愛すぎる!)
シルヴァスタさんはそんなルミナちゃんを見て、優しく目を細めた。
「美桜さん」
「はい!」
「これからも、ルミナをよろしくお願いしますね」
「もちろんです!」
私は大きく頷いた。
「ルミナちゃんは私の大切な推しなので!」
「推し…?」
「えっと、応援したい大切な存在という意味です!」
「そう。なら、安心ね」
シルヴァスタさんは満足そうに笑った。
その後、シルヴァスタさんはピアノの蓋を閉じた。
「そろそろ私は戻らなくては行けません」
「もう帰るのか?」
「ええ。自分の領地にも仕事がありますから」
「シルヴァスタさんの領地って、どんな所なんですか?」
私が尋ねると、シルヴァスタさんは少し考えてから答えた。
「静かな場所ですよ。転移で行かなければならない所ですよ。私の配下たちも暮らしています」
「配下の魔族がいるんですか?」
「ええ。私にも従える者がいるんですよ」
その瞬間、近くにいた魔族の一人が小声で言った。
「シルヴァスタ様は、とてもお強いお方なのです」
「そうなんですか?」
「はい。普段はお優しいのですが…」
「ですが?」
「怒らせると、本当に恐ろしいお方です」
「……え?」
私はシルヴァスタさんの方を見た。
シルヴァスタさんは穏やかな笑顔を浮かべている。
「何か言いましたか?」
「い、いえ!何も!」
魔族の一人は慌てて頭を下げた。
ルミナちゃんは少しだけ苦笑している。
「叔母様を怒らせてはならぬぞ!」
「そんなに怖いんですか?」
「……怒った時は、母上より怖いのじゃ!」
「え、ええ!?」
シルヴァスタさんは静かに笑った。
「ルミナ。余計なことを言うものではありません」
「ごめんなさいなのじゃ!」
そのやり取りを見て、私を見たシルヴァスタさん。
「美桜さん」
「はい?」
「貴方が来てから、ルミナの周りが明るくなったそうですね」
「え……」
「これからも、あの子の側にいてあげてくださいね」
「はい。もちろんです」
シルヴァスタさんは優しく微笑むと、ルミナちゃんの頭をそっと撫でた。
「また会いましょう。ルミナ」
「また来てくれるのじゃな?」
シルヴァスタさんはそのまま、数人の配下を連れて魔王城を去っていた。
窓から外を見ると、魔物の馬がゆっくりと遠さがっていく。
「……行ってしまったのじゃ」
「寂しい?」
「少しだけなのじゃ」
「また会えますよ」
「そうなのじゃ」
ルミナちゃんは遠さがる魔物の馬の馬車を見つめていた。
その横顔は、いつもの強気な表情とは違っていた。
少しだけ寂しそうで、でも嬉しそうだった。
(家族っていいな…)
私はそんなことを思いながら、ルミナちゃんの隣に立った。
皆さんこんにちは!
コメント
13時に投稿しました!
1日に2つの投稿していたのにすみません
これ以降かもしかすると
1日に2つ投稿するかもしれません
皆さん読んでいただきありがとうごさいます!
書く気力が湧きます!




