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転生幼女は魔王をモフりたい 〜最強スキルは『おねだり』です〜  作者: ペクチン21字


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第二章 魔王、名付けられて『ポチ』になる

「お嬢様ーー! リアお嬢様ーー! どこですかーー!?」

遠くから、森を揺るがすような怒号と、金属が擦れ合う音が聞こえてきた。

どうやら、私が消えたことに気づいたアンナと、公爵家が誇る「黒鉄騎士団」の面々が、武器を片手に森へ突入してきたらしい。

「あ、アンナたちのこえだ。ワンワン、見つかるとめんどくさいなぁ」

私が小さく呟くと、魔王はハッと耳を立てた。

「我が主よ、ご安心を。あの程度の人間ども、我が一息で塵に――」

「だめだよ? アンナはおやつくれるから、いじめちゃだめ。それより、ワンワンおっきすぎるから、おうちに入れないの。もっとちっちゃくなれる?」

「はっ……! 主様のお屋敷に同行させていただけるのですか!? 畏まりました、このベルゼビュート、主様のご期待に沿うべく、至高の姿へと変化へんげいたしましょう!」

魔王は嬉々として立ち上がると、ポンと景気のいい煙を上げた。

黒い霧が晴れた後に残されたのは――。

「みゃ〜ん」

私の手のひらにすっぽりと収まる、生後二ヶ月ほどの質感をした「黒い子猫」だった。

毛並みは極上のベルベットのようにツヤツヤ。顔の真ん中には、つぶらな黄金の瞳がはめ込まれている。狼から猫へのジョブチェンジだが、もふもふのクリティカル値としては満点である。

「わぁ、今度はにゃんこだ! すっごくかわいい! よし、あなたの名前は今日から『ポチ』ね!」

「なっ……! 我が名はベルゼビュート! 魔界を統べる頂点の――」

「ポチ?」

私が再び小首を傾げ、プラチナブロンドの髪をさらりと揺らしながら、アメジスト色の瞳をうるうるさせる。

「――はい! ポチにございます! なんと響きの素晴らしい、洗練された名でしょうか! 我が魂に『ぽち』の刻印が刻まれしことを、至上の喜びといたします!」

ポチ(元魔王)は完全に理解していた。この幼女は、自分など足元にも及ばない「混沌の神」か何かの化身であると。ここで逆らえば、魂ごと消滅させられる(※可愛いおねだりで)。なら、全力でペットの座を勝ち取るのが魔王としての最適解だ、と。

私は満足して、ポケットから「何かあった時のために」と忍ばせていた、自作の手作り首輪を取り出した。三歳児の不器用な手つきでフェルトを切り貼りした、ピンク色の歪んだ首輪だ。そこには、マジックで歪んだひらがなで『ぽち』と書かれている。

「はい、これポチのね」

すぽっ、と首輪をはめられた魔王は、絶望的にミスマッチなその姿のまま、深く感動していた。

「おお……これは主様のお手製……! なんという禍々しい(下手くそな)呪具クラフトでしょうか。我が魔力がさらに高まるのを感じます(気のせい)」

こうして、私は世界最強のペットを手に入れ、ポチを両手で大事に抱えながら、お屋敷へと戻ることにした。

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