フロースVSアリス
「美香ちゃん!」
走ってる美香ちゃんを見つけた。
僕はすぐに駆け寄って、呼び止めた。
美香ちゃんは僕に気づくと、涙を流した。
「ノ……ノアさん……」
「無事でよかったよ。それにしても、よく逃げ切れたね」
正直にいって、信じられないことだ。
魔人、それも“ターザン”から無傷で逃げれている。
すぐに僕は思い至った。
ーーアリスか。
「それは!アリスさんが自分に魔人の注意をひかせてもらったお陰で……!」
やはりか。
ということは、今アリスは“ターザン”と戦ってるな。
少し不安だけど……
「とにかく無事で何よりだよ。さ、家まで送ってくよ」
「私なんかより、アリスさんを助けてあげてください!もし、死なせてしまったら……」
僕は強制的に美香ちゃんをお姫様抱っこすると、町長の家へ向かって走り出した。
僕はハハっと軽快に笑う。
「心配しなくても大丈夫だよ。なんせアリスは僕の弟子だからね」
「でも!そうは言っても……」
「それにアリスには目的がある。その目的を成し遂げずに死ぬなんてことはないはずだから」
アリスは姉さんに会うまでは死ねない。
何がなんでも生きようとするはずだ。
「任せたよ、アリス」
僕は街を駆け抜けた。
「ゴミ虫?」
フロースが意外そうにつぶやく。
まるで、そんな言葉言われる筋合いはないといった感じで。
「もしかしてだけどさぁ、僕に向かって言ってる?」
「他に誰がいるんだよ、ゴミ虫」
私が煽った瞬間、横腹に激痛が走って吹っ飛ばされた。
なんとか受け身を取って衝撃を和らげる。
「僕嫌いなんだよなぁあ!馬鹿にされるのはさぁ!」
フロースを見ると、手から植物の枝が伸びていた。
枝の一本一本が分厚く、枝先は鋭く尖っていた。
「君の方こそ、死ぬべきだよねぇ。僕を侮辱したんだから」
あの手から伸びてる植物の枝による攻撃。
速い上に一撃が重い。
それに鞭や縄のように振り回すだけでなく、鋭い先端で体を貫くこともできる。
(それに、まだ何か仕掛けがあるな)
店主や美香から聞いた話だと、殺されたやつの体から植物が生えてたとか。
あいつの手に触れられるのは、危険な気がする。
私は脚に魔力を込めた。
機動力での勝負になる。
「侮辱されて当然だ。そういう事をお前はしたんだから」
「君、ムカつくから、串刺しにしてあげるよぉお!」
フロースが植物の枝をこちらに向けてきた。
素早く動いてそれを交わし、一気に距離を詰める。
そしてそのまま、魔力を込めた拳で殴る。
「っ!?」
私の拳は植物の分厚い幹に防がれてしまった。
もっと魔力を込めるが、壊せそうにない。
「はぁー。僕に近づくなよ」
背後から謎の魔力を感じて、私はしゃがんだ。
見上げると、フロースの手から伸びた植物が、私の元いた頭の位置を通り過ぎていた。
「危な……」
「よそ見してる場合?」
フロースが両腕を激しく振り回す。
避けようとしたが、当たってしまい、壁を破って建物の中へ飛ばされた。
横腹に魔力を込めて防御したが、背中を強く床に打ちつけてしまった。
「おい、お嬢ちゃん大丈夫か?」
飛ばされた場所は酒場のようだ。10人ぐらいの男女が酒を飲んでた。
「大丈夫だ。それより、今すぐ逃げろ!魔人に殺せれるぞ!」
店内にいる全員に聞こえるように、大声で叫ぶ。
ただ事じゃないと分かったのか、客たちは一斉に逃げ出した。
「ふは〜、まだ生きてるの?」
フロースがゆっくり近づいてくる。
私は立ち上がった。
「さっさと死んでよ。ちょー、面倒いんだけど」
「面倒くさいなら、お前が死ねよ。そっちの方がすぐ終わる」
「ほんっと、うざいなぁああ!」
スピードをあげて植物の枝を操作してくる。
店内を縦横無尽に駆け回って、攻撃を交わし続ける。
交わしながら、近くにあったジョッキを拾うとフロースに投げつけた。
フロースは笑いながらジョッキを避けた。
「馬鹿なの?当たるわけないでしょ」
「当てるために投げた訳じゃないからな」
ジョッキを投げたと同時に、私は店内の壁に向かって走り出す。
勢いよく壁を足場に利用して、フロースの顔面に蹴りを喰らわせた。
フロースは店のカウンターを破って壁に激突した。
「お前はウザいってだけで、何人もの命を奪ったのか?
それも金髪の女性ばかり。弱者をいじめて何が面白い」
「違う、違う、全く違うね!僕はあのお方に言われて、金髪の女を殺しただけだ!」
フロースが立ち上がった。
その目には強い怒りが宿っていた。
「君、アリス・クリアベールだろ?今、ようやく分かったよ」
「なんで、私の名前を知ってる?」
訊ねると、フロースは高らかに笑った。
「僕は君を殺すように命令を受けてこの街にやってきた。
君の情報は金髪の若い女としか聞いてないから、片っ端から殺していたんだ」
「お前もドムトと同じか……!」
「そうさ。しかし、君こそゴミ虫なんじゃないか。
いわば、殺された人は君のせいで死んだも同然なんだから」
気づくと私は全速力で動き、フロースを殴ろうとしていた。
フロースは再び嘲笑った。
「動きが単調になってるよ!」
フロースは私の攻撃を交わして、植物の枝で私を貫いた。
「ぐはっ」
体の力が抜けて、私は膝をついた。
内臓が出血してるのがはっきりとわかる。
息が……できない。
「僕に感謝する事だね。早速死んだ人たちに謝る機会を与えてあげたんだから」
フロースがトドメを刺そうと、植物の枝を向けてくる。
それを間一髪で避けて、フロースと距離を取った。
「もう、しっつこいなぁ!大人しく死ねよ!」
フロースが床を思いっきり踏みつける。
大きな音を出し床に穴が空いた。
「はぁはぁ、人のせいにするな、お前のせいだろ。
お前が殺した。街の住民が死んだのはお前のせいだ。
お前がいなかったら、死んでなかったんだよ!」
呼吸が全然できない。
酸素が肺に入っていく感覚がない。
あの攻撃で肺を傷つけられたからだ。
だが、責任転嫁するコイツに言いたかった。
お前のせいだと。
脚が震えながらも、なんとか立ち上がる。
「骨を折られても、肺が傷ついても、心臓が出血しても……お前は絶対に殺す」
私は再び脚に魔力を込めた。
まだ、戦える。
「そういうのは、殺してからいうんだよぉ!」
フロースが片方の腕で枝をぶん回し、もう片方の腕で枝を向けてきた。
「もう……慣れた!」
それらの攻撃を全て掻い潜り、フロースに回し蹴りをする。
回し蹴りは植物の壁に阻まれたが、気にしない。
私は全ての魔力を右手に込め直すと、植物の壁を拳でぶち抜いた。
「嘘でしょ!?」
そのままフロースの心臓を殴る。
直前でフロースが避けたせいで心臓は潰せなかったが、腹に穴をあけれた。
結構効果があるはずだ。
「再生するにしても、痛みはあるはずだ。確実に効いてるだろ」
「そういう、お前はなんなんだ!内臓を傷つけたのに、なんでさっきより動きが速いんだよ!」
苛立ちを含んだ声でフロースが怒鳴る。
「言ったはずだ。お前を殺すって」
「お前……、イカれてる……!」
私はゆっくり呼吸をして、構えた。
「今から第二ラウンドだ」




