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実力差


「痛てて……何発かもらっちまったな」


 木を背にして鉤爪(クロー)は腰を下ろした。

 右腕と右腿に銃弾を受けて、血が流れていた。

 しかし、すぐに血は止まり、肉が盛り上がって傷口から弾丸を押し出した。弾丸はポロリと地面に落ちた。


「こんなところを陸に見られたら、何て言われるか……」


 鉤爪(クロー)は、生乾きの血がこびりついている右腕をさすった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 呪印の解除に疲れて、休憩を取っていた時のことである。

 鉤爪(クロー)と陸が雑談していると、戦闘の話になった。


 案の定、鉤爪(クロー)と陸の戦い方には大きな隔たりがあった。

 あらゆるリスクを考慮して入念に準備する陸の戦い方に対して、鉤爪(クロー)の戦い方は、良く言えば臨機応変、悪く言えば行き当たりばったりだった。


「どうでもいいが、お前は相手をみくびりすぎだ。何をしてくるか分からない相手に、よくそんな恐ろしい真似ができるな」


 陸はあきれた顔をした。


「バカ野郎。それが戦いの醍醐味というものだろうが。何をしてくるか分かってたら、あとは倒すだけだろ。面白くない」


「俺はお前みたいに戦いを面白いと思ったことはない。仕方がないから、戦うだけだ。準備した手順通り、つつがなく終われば、万々歳だ。むしろ、戦わずに目的が果たせるんなら、そっちの方がよっぽどいい」


「もったいない人生を送ってるねえ。戦いほど面白いものはないぞ。窮地に追い込まれたヤツはすごいぞ。普段からは考えられない力を発揮するし、隠し持っていた武器や技をなりふり構わず使ってくる。えっ、こんなヤツが、こんな技を!?って驚くぞ。そういう驚きに出会えるのが戦いってもんだ。そして、さらにその上をいって、そいつを叩きのめす。これが楽しいんじゃないか」


「どうしてわざわざ相手の力を引き出そうとするんだ。さっさと倒してしまえばいいだろう」


「そうは言うけどな。倒すだけなら、ただの作業だろ。すぐに終わるし、面白くない」


「早死にしたいのか?そのプロレス的な発想をどうにかしろ」


「バカだな。楽しいことはとことん楽しみ尽くす。それがオレの生き様だ。俺は戦いを楽しみたいんだ」


「……強すぎるのも問題だな。話が全く噛み合わない」


 あきらめたように、陸は首をすくめた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 鉤爪(クロー)の視覚と聴覚が戻った。

 撃たれた傷も痕が残っているだけだ。


「さてと。お楽しみの時間だ」


 鉤爪(クロー)は腰を上げた。


「しかし、人間の兵器を使うヴァンパイアも珍しいな。ヴァンパイアとしちゃあ、それなりだが、ああいう力のつけ方もあるんだな。面白い」


 そう口にすると、鉤爪(クロー)は愉快そうに笑った。


「なあ、これが戦いの楽しさってもんだぞ、陸」


 鉤爪(クロー)は、今は姿を消している弟に向かってつぶやいた。




 からん、と音がした。

 燐が音がした方に素早く銃を向けると、小石が転がっていた。


「しまった」


 燐が慌てて振り返ると、鉤爪(クロー)が拳を振りかぶっていた。

 燐はサブマシンガンを盾にして鉤爪(クロー)の攻撃を受けた。

 直撃は避けることができたが、鉤爪(クロー)の拳でサブマシンガンはへし折れた。


「くそっ」


 燐はサブマシンガンを投げ捨てると、右手を横に開いた。

 ガチャンと音を立てて、上腕から機械仕掛けのブレードが飛び出した。ブレードは二段、三段と伸びて、大振りの鎌のような形状になった。


「ほう」


 鉤爪(クロー)が嬉しそうな顔をした。


「くらえ!」


 燐は踏み込みざま、鉤爪(クロー)を横薙ぎにした。

 鉤爪(クロー)は円を描くようにステップして軽く鎌を避けた。


「仕掛けは面白いが、腕が追いついてないな」


「黙れ!」


 燐は鉤爪(クロー)を追ってさらに大きく踏み込み、ブレードを振るった。

 鉤爪(クロー)は一転、前に出て、ブレードのついた燐の右腕を抑えつつ、肘でその顎をかち上げた。

 燐の頭が跳ね上がった。


「がっ」


 燐はよろよろと後ずさり、仰向けに倒れた。

 脳を揺らされた。意識こそつなぎとめたが、体が言うことをきかない。


「ほら、早く立て。まだ始まったばかりだぞ」


「くそ……」


 燐は必死に立ち上がったが、足がもつれて、尻もちをついた。


「何だ?もう終わりか?さっさと立たないと、殺すぞ」


 鉤爪(クロー)が燐を急かした。

 燐は何とか立ち上がった。

 しかし、足がガグガクして構えを取るのもままならない。


「さあ、次は何を見せてくれるんだ?」


 鉤爪(クロー)が期待した目を燐に向けた。


「……」


 燐は右手を森に向けると、ワイヤーを飛ばした。


「む?」


 燐はワイヤーを木の枝に絡ませると、一気に巻き上げた。

 燐の体がワイヤーに引っ張られて、森に向かって飛んだ。


「おおっ」


 鉤爪(クロー)が感嘆の声を上げた。


 燐は木の枝に着地した。そして、ワイヤーを飛ばしての移動を繰り返した。

 今はとにかく、頭を冷やして、体勢を立て直す時間が欲しかった。


「まともに戦ってはダメだ。歯が立たない。でも、どうすれば……」


 森を奥へ奥へと進みながら、燐は必死に頭を回転させた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。


次回は6/25(火)投稿予定です。


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