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予言の乙女-14-
けれど、これは何だ。足元が覚束ないこの世界で、自分という存在すらも他と隔てているその境界が砕け散って時間の中に呑み込まれそうな脆さを内包しているというのに。
ここに存在している、それすらもただの幻かもしれないのに。
そんな不確かな生命を、彼は、彼等は何の疑問も持たずに信じるのか。
あまりにも。
あまりにも――、馬鹿げている。
「さあ、行こう。予言の乙女――『天羅の乙女』」
陽光に溶けた微笑に。
差し出された手に。
和歌は、頭痛を覚えた。持ち上げた手は、己に差し出されている彼の手を取る訳ではなく。
俯き加減に、その目元を覆う。
「・・・・・・・・・・」
神様、八百万の神様。
これは、何かの悪い冗談なのでしょうか。
この時ほど、夢であって欲しいと願ったことはなかったかもしれない。
「カズ?」
訝しげに自分を呼ぶウィリウスの声は上の空で、その唇から漏れた溜め息には、様々な感情が孕まれていて、その重い吐息はしばらくの間、和歌の足元に蹲っていた。
あぁ、本当に。
この、あまりにもありがちな展開に、あたしは一体どうなっちゃうんだろう。
【続】