表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の鱗は隠せない~満月の夜に、10年前の約束をもう一度~  作者: 猫塚ルイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

第9話

「こんなに素晴らしい宝物を貰ってしまって……」


「いいんだよ。全部、君が自分で手に入れたものなんだ」


シエルは私の左手をそっと持ち上げ、薬指にはまった真珠の指輪に、熱い誓いのキスを落とした。


「これは呪いじゃない。僕たちの愛の証だ。君が海に戻れない代わりに、僕がこの陸の上で、僕の音で、君をずっと繋ぎ止めてみせるよ」


「毎日でも弾くよ。君のためだけの、君の心を癒すための音楽を」


私は溢れる嗚咽を抑えられず、ただ幸せに溺れながら頷いた。


きっと私は生涯、この瞬間を忘れることはないだろう。


人間になった、あの日。


私だけの王子様が、私のために弾いてくれた。


世界で一番美しく、残酷なほど甘い


たった一つのラブソングを。


◆◇◆◇


別邸の静寂に包まれた寝室。


窓の外では、運命の満月が空の頂へと昇り、銀色の光がシーツの上に冷たく降り注いでいた。


けれど、今の私にはその光さえ恐ろしいものではなかった。


隣には、私のすべてを受け入れ、この世界に繋ぎ止めてくれる人がいる。


「ラム、まだ震えているね」


シエルがベッドの上で私を後ろから抱き寄せ、耳元で優しく囁いた。


彼の大きな手が、私の細い指先を包み込み、薬指の真珠が月光を跳ね返して白く輝く。


その指先の温もりだけで、心臓の奥が熱く疼いた。


「怖くないわ。……ただ、あなたの熱があまりにも心地よくて」


私は寝衣の肩を滑らせ、彼の方を振り返った。


視線が絡み合う。


彼の蒼い瞳には、バイオリンを弾いていた時のような深い情熱ととろけるような慈愛が混ざり合っていた。


シエルは私の頬に手を添え、壊れ物を扱うような手つきで、ゆっくりと唇を重ねてきた。


テラスでのあの誓いのキスよりも、ずっと深く、甘く、身体の芯まで痺れるような口づけ。


呼吸が乱れ、互いの心臓の音が一つに重なっていく。


「ラム…愛している。君を、もう誰にも渡さない」


彼が私の体を押し倒すようにして、ベッドに沈める。


絡み合う手。


指と指が、10年前のあの夏の日よりもずっと強く、深く絡め取られる。


私はそっと、自分の足を彼の足に絡ませた。


かつては尾びれだった、この不完全な二本の足。


歩くたびに痛み、水に濡れれば鱗が剥き出しになる、この脆い体。


けれど、シエルは私の足の甲


そして、足首にまで熱い唇を落としていく。


「あ……シエル……っ」


彼の唇が触れるたび、そこから「人間」としての実感が注ぎ込まれていくようだった。


彼の舌先が私の耳を舐め上げた瞬間、背筋に電流が走った。


「ひゃ…っ!」


「ラム…もっと僕を感じて」


指の間にぬるりとした感触。

シエルが私の耳たぶを丹念に舐めてくる。


「ひぁ…やだ……そんなところ……!」


「君のすべてを感じたいんだ。……君の味も、声も、匂いも」


(…シ、シエルってばこんなに大胆だったの……?!こ、これが普通なのかな…っ)


「んぅっ! や……耳はダメって言ったじゃない!」


「ごめん。でもラムがあまりにも可愛いから……」


私は彼の頭をそっと掴んで引き離そうとしたけど……


シエルは私の腰に回した腕に力を込めてきた。


「待って…わたしたち、これからなに、するの?」


「ん?これから何をするのかって……?」


シエルが低くかすれた声で囁く。


その声には、いつもの優しさの中に確かな熱が潜んでいた。


「ラムが知らないことは全部教えてあげる」


彼の指先が寝衣のボタンにかかる。


ぷつり、と一つ目が外れた。


胸元が緩む。


「ま、待って……! まだ心の準備が……」


「大丈夫。ゆっくり進めるよ」


二つ目のボタンが外れると同時に、彼の唇が鎖骨のくぼみに吸い付いた。


チリッとした小さな痛みが走る。


「ひゃっ! 今のは…」


「印をつけたんだ。ラムが僕のものだって証」


三つ目のボタンが外れ、薄い肌着の下から白い乳房が覗いた。


シエルの喉仏が大きく上下するのが見えた。


「綺麗だね……」


彼の指がそっと膨らみに触れる。初めて人に触れられた柔らかな部分が、意志とは無関係に戦慄いた。


「あ……っ」


思わず漏れた吐息に、自分でも驚く。これが「感じる」ということなのだろうか。


「ここをこうすると……」


シエルが私の耳元に唇を寄せて囁く。「もっと気持ち良くなれるよ」


彼の指先が頂きにある桃色の尖りを優しく転がし始めた。


最初はこそばゆいだけだった刺激が、徐々に別の種類の感覚に変わっていく。


「んっ……!」


腰が勝手に浮き上がりそうになった。


まるでお腹の奥底から何かが這い上がってくるような──


「ふふ……反応してる」


嬉しそうに笑ったシエルの唇が、次は直接そこへ降りてくる。


生暖かい舌が突起を転がし、湿った音が響いた。


「ひぃあ……っ」


逃げるように身を捩じる私を押さえつけ、シエルは執拗に両方の突起を交互に吸い


舌で撫で、甘噛みを繰り返す。


その度に私の全身はビクビクと跳ね、意思を持った生き物のように反応してしまう。


「ラムの声……すごく可愛い」


彼は上体を起こすと、残りのボタンも一気に外し、私の寝衣を脱がせてしまった。


裸の上半身が冷たい空気に晒される。


「やだ…恥ずかしい……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ