第九十六話~条件成立~
なんとか無事に巨大スライムの討伐に成功したカイト達。
最終的には分裂したスライム達をすべて撃破したのを確認したカイトはこの場を後にしようとするのだが。
「よし、これで問題は解決だな。では一旦村に戻るとしよう。ん、どうしたゾリュー?」
カイトが何事も無かったかのように帰る素振りを見せているが、ゾリューはカイトの大魔法を見せられて固まってしまっていた。
「おい、ゾリュー、聞こえているのか?」
「カイト様、ゾリューの奴、カイト様の魔法を見て固まってしまっているッス。」
「まぁ、あれだけの魔法を見せられたのだから、当然といえば当然の反応といったところかしら。」
すると、数十秒遅れてゾリューはやっと我に返り、キョロキョロと周りの状況を確認する。
「あ、あぁ、すまない。どうやらスライムがいなくなっている様子からしてあれは現実だったようだな。へっ、まったく大した奴だぜ。」
「あなたの目の前で起こった事が夢か現実か判断しかねるのも無理もないわ。なんせこの我々でさえ、カイト様のお力には驚愕させられてしまったのだから。」
「そうッスね。恥ずかしい話、本当はもうダメかと思ってしまっていたくらいッスからね。カイト様、カイト様のお力を見くびっていたつもりはなかったんスけど、あのような事を言ってしまい申し訳なかったッス。」
「私もボアードと同様に深く反省しております。どのような処罰も受け入れます故、何卒お許し願えますでしょうか。」
「よいのだ、ボアード、カーミラよ。お前達の判断は決して間違ってはいなかった。結果は無事に終わる事が出来たが、あのようなギリギリの場面であれば私がお前達の立場であっても同じことをしただろう。私はあの時信頼してもらえず残念だと思っていたが、よく考えてみれば、お前達の行動は私を守るためでもあったのだからな。私こそお前達に心配をかけるような事をしてすまなかった。この通りだ。」
「そんな、カイト様が謝ることじゃないッス!」
「そ、そうです!それに結果は無事に作戦を完遂することが出来たので、問題はありません!」
「そうか?二人がそう言うのならそういう事にしよう。ではもうこの話は終わりだ。」
カイト達が湖畔で話していると、村の方からリザードマン達がやって来た。
そのリザードマン達は数にして三十はいるだろうか。
各々がこれから戦争でも始まるかのような武装をし、血相を変えてゾリューの元へ駆け寄る。
これが恐らくゾリューの言っていた村の精鋭隊なのであろう。
「村長!何があったんですか!?さっき上空から隕石のようなものがこちらに落ちて来るのが村から見えて急いで駆け付けたのですが。」
リザードマンの一人がゾリューに駆け寄り事の顛末を問う。
「あぁ、俺も未だに信じられないのだがな、ここでスライムとの凄まじい戦闘が繰り広げられていてだな。。。」
ゾリューがリザードマン達に状況を話そうとするが、カイトは制止する。
「おっと、ゾリューよ、ここで起きた事は我々だけの秘密にしてもらえないだろうか?特にこの戦いの終盤で起きた事は内密にしてもらいたい。その理由は言わなくても分かるだろう?」
カイトは自分が聖属性の魔法を行使出来るという事実をこれ以上知られたくないため、ゾリューに制止を促す。
それをゾリューも理解し、話を打ち切る。
「あぁ、分かったぜ、カイト。交換条件を組んだ間柄とはいえ、手の内をぺらぺらと言い広めるのは良くないな。という事だ、皆、詳しい状況は話せないが、ここに居るカイト、ボアード、カーミラの手によって我々に悪影響をもたらしていた巨大スライムは討伐された事は事実だ。この事実は村長の名において嘘偽りないと保証しよう。それでもまだ何か詮索したい奴がいるなら俺の前に出ろ!分かったならさっさと村に帰るぞ!」
先程までカイトの魔法にあっけにとられていたゾリューだったが、流石に同士の前では中々の威厳を放っている。
ゾリューの迫力を前に誰も歯向かう者はおらず、言われた通り、精鋭達は村へと帰って行くのであった。
「これでよかったか、カイト?」
「あぁ、すまないな。お前達を信用していない訳ではないのだがな。情報というのはどこからどのように漏れるか分からない。魔大陸の出身者に聖属性の魔法を使用できる者がいるという事を知っている者はここに居る我々を含めてもほんの僅かだ。もし、このような重要な情報が何らかの手段で聖大陸軍の耳に入ってしまえば後々命取りになりかねない。という事だ。」
「聖大陸軍?そういえばそんな軍隊が魔大陸に進行しているって風の噂で聞いた事があるな。」
「あぁ、ここのように辺鄙な場所はまだ侵攻されていないが、大きな国のいくつかは侵攻を受けている。まぁそれについては、今のところお前達が心配するような事じゃない。困った時はまた力を貸してくれと頼むかもしれないがな。」
「そうか、あんな化け物染みた戦闘をする奴に力を貸せと言われても役に立てる自信はないが、その時はまた言ってくれ!」
「あぁ、その気持ちだけも助かる。では我々も村に帰るとしよう。」
こうしてカイト達はリザードマンの村へ戻り、またゾリューの家に上がったのだが、ゾリューは村の者達と話があると言って出て行ってしまい、カイト達は一旦ゾリューの家で待機していた。
そしてしばらくするとゾリューが家に戻って来た。
「すまない、待たせたな。」
「いや、大丈夫だ。それで話とやらは終わったのか?」
「あぁ、問題ない。一回外で話をしたいのだが、一旦全員家の外に出て来てくれないか?」
「分かった、では行くとしよう。」
カイト達はゾリューに言われて外に出る。
すると、そこにはリザードマンの集団がゾリューの家の前に集まっていた。
「さぁ、カイト、ボアード、カーミラ。この上に登ってくれ。」
ゾリューはいつの間にか用意されていたステージのような台に上がるよう促される。
そしてカイト達は訳が分からないままステージに上がると、ゾリューが話を始める。
「聞け、同士達よ!ここにいる御三方が今回西の湖畔に出現し、我々の食糧調達に悪影響を与えていた巨大スライムを見事に討伐してくれたカイト、ボアード、カーミラだ!この三人の活躍により我々は再びあの場所を取り戻す事が出来たのだ!」
「(リザードマン達が一斉に)ウォー!」
ゾリューがカイト達の功績を称えると、その活躍を称賛するようにリザードマン達が雄叫びを上げる。
「そしてこれは先程私が皆に伝えた事だが、今回のスライム討伐の交換条件として我々は労働力を提供する事になった。我々からの労働力として百人の精鋭達を用意したが交換条件としては妥当だと考えている。どうだ、カイト、これで問題ないか?」
カイトは、労働力の提供についてはもう少し落ち着いた場所でゆっくり話し合いたいと思っていたが、その場の勢いで提案される事になってしまった。
そしてよくよくステージの脇を見ると、既に準備万端の百人近くの若い衆が整列しており、出発を今か今かと待ちわびているように見える。
公平な交換条件とは言え、このような雰囲気を作られてしまったら断るにも断れない。
もっと数をよこせなどと、けちけちしようものなら器の小さい奴だと思われてしまう。
だが、唯一の救いはカイトが欲していた労働力の目安である百人分という枠とピッタリという事であった。
数が足りないのも困るが、あんなに張り切っている精鋭達の姿を見たらいやいやこんなに必要ありませんよ、とも言い辛い。
そう考えると、カイトの計算の範疇で人員を用意してもらえたのは幸いであった。
「あぁ、問題ない。リザードマン達よ、其方らの協力に心から感謝する。そして今後もこのような厄介な怪物が現れたら我々を頼るといい。魔大陸を統べる者の一員として、お前達の安全は保証してやろう。」
「(リザードマン達が一斉に)ウォー!いいぞ、カイト!」
カイトの演説にリザードマン達の熱気は最高潮に達していた。そしてゾリューはそのままの勢いでカイト達を見送る流れへと持っていく。
「よし、皆よ、話は以上だ!これから我が同士達百名はカイトとの契約を果たすためにしばらくこの村を離れる。皆の者、我が村の精鋭達を見送るのだ!という事だ、カイト。出発の準備はいいか?」
カイトはゾリューに言われるがまま、あれよあれよとこの村を離れる事になるのであった。
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