第九十五話~奥の手~
西の湖畔で巨大スライムとの激しい戦闘を続けているカイト達。
スライムは体を虹色に変化させて分裂し、カイト達を飲み込まんとばかりに一斉に襲い掛かって来た。
カイトは奥の手を発動させるべくボアードとカーミラにスライムを足止めさせる。
そして、スライムがカイト達の目前まで迫りもうダメかと思われたその時、カイトはホーリーメテオ(聖流星群)を発動させたのであった。
カイトがホーリーメテオを唱えると、一瞬の間を置いてカイト達の頭上からキラリと輝く白く燃えた隕石の大群が落下して来た。
それはまだ遥か上空にあるものの、周りの大気、木々、湖の水面、は震えており、これから降り注ぐ隕石の規模の大きさを物語っていた。
スライム達も危険を察知したのか、上空のそれに気が付くと前進を止め、一斉に上空を眺めるような素振りを見せている。
「これがカイト様の奥の手ッスか!いやぁ、やっぱりカイト様の魔法はスケールが違いますッスねぇ。」
「え、えぇ、まったくだわ。我々では到底真似できない所業ね。。。でも、これって。。。」
「お、おい、カイト!まさかお前、あれをここに衝突させるつもりじゃねぇだろうな!?そんな事をしたら湖ごと消し飛んじまうぞ!?」
カーミラも察していたようだが、ゾリューの言う通り、あの隕石の群れがこのまま降り注ぐようであれば、例えスライムを倒せたとしても、湖ごと消えて無くなってしまうだろう。
それどころかカイト達自身もここにいては巻き添えを食らってしまう恐れがある。
だが、カイトもそんな無謀な方法でスライムを倒そうとしているわけではない。
カイトは次の手に移る。
「あぁ、分かっている。悪いが私もそこまで馬鹿ではない。周囲への影響は最小限に抑えてスライムどもを屠ってみせよう。ホーリーボルテックス(聖渦)。」
カイトは続けて湖の中心の水面に向かってホーリーボルテックスを唱える。
すると、水面からたちまち渦が巻き始め、あと少しの距離で陸に上がろうとしていたスライム達を含めは全て渦の中心に吸い込まれていく。
こうしてあっという間に巨大なスライムから分裂した数百匹の小さなスライム達は湖の中心にぎゅうぎゅうに集まった。
そして、そのまま渦の中に引き込まれるかと思いきや、スライム達が集まった瞬間に渦は止んだ。
スライム達もこのまま渦の中に吸い込まれると思っていたようで困惑したような様子を見せている。
だが、これは決してカイトの魔法が未熟だったわけではなく、全てはカイトの計算通りであった。
「よし、これで準備が整ったな。あとはあれを上手くコントロールしてとっ。はっ。」
そう言ってカイトは左手を上空のホーリーメテオに向けて伸ばし、掌を広げた。
すると、隕石はほんの一瞬何かの効果を得たようにキラリと光る。
だが、特に動きに変わった様子はなく、もの凄い勢いを保ったまま落下を続けている。
「カ、カイト様、流石にもう無理ッスよ!ここから逃げないと自分達も危ないッス!」
「カ、カイト様、誠に無礼を承知で申し上げますが、あのブタの言う通りかと。そろそろこの場を離れないと我々の身も持ちません。」
「そうだカイト!こいつらの言う通りだ!もうここは諦める!だからお前もさっさとこの場を離れろ!」
「そうか、まだまだ私もお前達からの信用が足りていないようだな。まぁ、確かにこの魔法はお前達に見せた事も無ければ私自身もまだ試した事がないからな。当然の反応と言えば当然か。だが、心配はない。先程も言った通り、私の名に懸けてここは何とかしてみせる!お前達も私の下部としてどうか安心して見守っていてくれ!」
既にその場から退避しようとしていたボアードとカーミラだったが、二人にとって忠義を尽くすべき絶対的な存在である主の言葉を聞いて足を止める。
「カイト様、すみませんでしたッス。カイト様の下部ともあろう自分が、あのような行動を取ってしまい不甲斐ないッス。でも、決心したッス、もうこれから何があってもカイト様のお言葉を信じて行動するッス!自分はここで最後までカイト様のご勇姿を見届けさせていただきますッス!」
「私も同じ考えに至りました。先程の言動はカイト様の下部としてあるまじき行いでした。深く反省いたします。そしてこれからはボアードと同様にカイト様のすべてのお言葉を信じて行動させていただきます。」
カイトの言葉を聞いて改心したボアードとカーミラはカイトの後ろに立ち、堂々とした姿勢でこの展開の行く末を見守っている。
「おいおい、これじゃあもう俺も付き合うしかねぇじゃねぇか!まったく狂った連中だぜ!いいぜ、カイト!お前の力、最後まで見させてもらおうじゃねぇか!」
ゾリューもボアードとカーミラの決断を見て腹をくくり、その場にどっしりと構え上空の隕石を見つめている。
そしてカイトは全神経を集中させて、最後の仕上げに取り掛かる。
「ボアード、カーミラ、そしてゾリューよ。お前達の心意気、しかと受け取った。ではこの光景を目に焼き付けて置くのだ。ホーリーゼログラビティー(聖無重力)。」
カイトは右手をスライム達に向けて広げ、無重力魔法をスライム達に付与する。
すると、カイトは無重力状態になったスライム達を右手で、隕石の群れを左手でコントロールし始める。
カイトの魔法コントロールにより、両手の位置関係は隕石、そしてスライム達とリンクする。
「インパクト(衝突)。」
そしてカイトが上下に広げた手をパチンと合わせて閉じると、隕石は更に勢いを増し、一気に地表に近付き、スライム達は隕石に吸い寄せられるように上空に舞い上がる。
次の瞬間、両者は上空で激しく衝突し合い、その衝撃で互いは衝突した瞬間に空中で弾け飛ぶ。
空中で隕石とスライムが衝突した際に生じる爆発は、まるで花火でも見ているかのようだった。
だがそれで終わりではなく、カイトは最後まで隕石とスライムの位置をコントロールし、
隕石がスライムの群れをすり抜けて地表に落下しないように調整していた。
それはまるで精密機械のように計算し尽くされており、カイトは隕石を一つも余すことなくスライムと衝突させて粉々にしていた。
しかも、隕石の数とスライムの数がまったく同じという訳ではないので、個別に威力を調整したりして帳尻まで合わせると言った繊細っぷりも発揮していたのであった。
「じ、自分は夢でも見ているんスか?」
「こ、これがカイト様のお力の一端。凄すぎて感じてしまいますわ。(照)」
「い、一体何が起こっている!?俺は死後の世界でも見せられているのか?」
ボアード、カーミラ、ゾリューは、それぞれ感じ方は違えど、カイトの実力をまざまざと見せつけられて、脱帽し、一方ではあまりの凄さに快感を得て、さらにもう一方では自分が死後の世界に来たと勘違いしてしまっていた。
こうして全てのスライム達はカイトの異次元の魔法攻撃によって撃破され、残ったのはぽちゃぽちゃと湖に落ちて来る衝突した隕石の欠片のみであった。
「ふぅ、これで完了だな。どうやら上手くいったようだな。」
カイトは作戦が無事に完了できたことを確認し、安堵する。
正直、カイトの頭の中でも今回の戦闘は想定外の事がたくさん起きてしまい、内心は焦っていた。
カイト達の攻撃力をもってしてもゾリュー達と同様に攻撃が無力化されるところまでは計算の内に入っていたが、その後に想定外の事態が立て続けに発生する事となった。
ここまでの展開であれば想定の範囲内であったのだが、多属性の一斉攻撃も対応され、あまつさえこの戦闘中に体質変化させる事なく全属性の耐性を得る事に成功してしまい、最終的には分裂して一気に襲い掛かって来られてしまった。
だが、多属性の一斉攻撃が通用しない時点でカイトにはもうこの方法しか残っていなかった。
それは聖属性による攻撃である。いくらこちらが強力な攻撃を仕掛けても、あのスライムが全属性に耐性を持っているという事実が変わらない限りダメージを与える事は出来ない。
しかし、その「全属性の耐性」という言葉の定義は、この魔大陸ではある「一属性」の例外を除いてという意味である。
それが即ち聖属性なのである。魔大陸の者はカイトを除けば例外なく聖属性の攻撃に耐性が無く、それが弱点でもある。
この原則はスライムの持つ「全属性の耐性」というルールよりも上位に立つもので、これを覆す事の出来る例外的な事象はカイトの超例外を除けば未だ確認されていない。
カイトはそれを知った上で慣れない聖属性の魔法で勝負に出たのであった。
そして、結果はカイトの土壇場の勝負強さもあり、ほぼ完璧と言える勝利を収める事が出来たのである。
カイトはこの戦いによって、実質的な力の差がある相手でも特性や相性によってはかなり有利、不利になるという事を身をもって知るのであった。
こうしてカイト達は、巨大スライムとの激闘を制した。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をお願いいたします。
正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると執筆の励みになり本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




