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第九十三話~巨大スライム討伐~

カイト達はリザードマン達から労働力を得る条件として、村の問題となっている食糧危機の原因であるスライムの討伐に乗り出すのであった。


「いいだろう。お前達がそこまで言うならお望み通り連れて行ってやる。ここで少し舞っていろ、討伐隊の連中をここに連れて来る。」


ゾリューがカイト達を西の湖畔へ案内するため、討伐隊の仲間を連れて来ようとしたが、カイトはそれを制止する。


「いや、その必要はない。道案内だけならゾリュー、お前だけで十分だ。」


「おいおい、まさか俺とお前達の四人だけで倒せるとでも思っているんじゃないだろうな?」


「あぁ、勿論だ、ゾリュー。我々は討伐隊を含め、お前達リザードマンの力を借りるつもりは一切ない。ゾリュー、無論お前の力もだ。」


ゾリューはカイトの言葉を聞いて正気を取り戻せと言わんばかりに詰め寄る。


「な、なんだと!?リザードマンの精鋭達で相手にならなかった敵だぞ!?お前等たった三人で何が出来るってんだ!?お前達の力は認めているが、いくら何でもそれは殺されに行くようなもんじゃねぇか!」


「その心配には及ばない。これを言ってしまうと申し訳ないのだが、悪く思わないでくれ。正直我々の力はお前達とは格が違う。私はお前から得たスライムの情報を考慮し、最悪のパターンを考えても我々が負ける結論には至らなかった。それは私だけでなくボアードとカーミラも同じ考えの筈だ。」


「はいッス!自分も勿論カイト様と同じ考えッス!自分達が負けるなんて百パーセント有り得ないッス!」


「私もカイト様と同じ意見です。この馬鹿が言う、百パーセントという言葉は通常は有り得ません。物事に絶対など無いのですから。しかし、我々に限ってはこの百パーセントという言葉は通用します。よって、我々が負ける道理などありません。」


「うむ、その通りだ。それに我々だけの力で討伐しなければ、公正な交換条件にはならないしな。安心しろ、お前は我々をそこまで案内したら身を潜めていて構わない。何なら帰ってもいいぞ?」


カイトとボアードとカーミラはゾリューの心配をよそに、かなり大きく出ている。


「この俺様に隠れろだと!?この俺がそんな無様な事をするわけないだろ!いいだろう、お前達がそこまで言うなら俺だけで連れて行ってやる。ただし、死んでも後悔するなよ?」


「まぁ、落ち着け。別に私はお前を怒らせるつもりで言ったわけではない。安心してくれと言っているのだよ。でもこれで話はまとまったな。ではゾリューよ、目的地までの案内をよろしく頼む。」


出発前にひと悶着あったが、結局カイト達はゾリューだけを引き連れて西の湖畔へと案内してもらう事になった。


カイト達が村を出て湖畔を目指してから数十分が経った。距離にして数キロは進んだだろうか。カイト達は湖畔に向かって森の中を歩き続けている。


「ゾリューよ、村を出てからまぁまぁの距離を歩いたと思うのだが、目的地にはまだ着かないのか?」

カイト達は先程から終わりの見えない森の中を延々と歩かされており、少しばかり退屈していた。


「まだッスかぁ、早く戦いたいっッス~。」


「まったくだわ、いつまでこのつまらない道が続くのかしら。」


「まぁまぁ、そんなに急かすなって。ここの森を抜けたすぐ先に湖畔はある。もう少しの辛抱だ。」


「そうか、それは安心したぞ。てっきり怖気づいて違う道でも案内されているのではないかと思ってな。」


「へっ、その減らず口もどこまで続くかな。ほら見ろ、湖畔が見えてきたぞ。」


ゾリューが先頭を歩きながら前方を指差すと、森の出口が見えてきた。

そしてカイト達はそのまま森の外へ抜ける。


森を抜けると、目の前には広漠な湖が広がっていた。

水は青く澄んでおり、透明で水質の良さが伺える。

この水質ならさぞ良質な魚が棲んでいる事だろう。


それにこの湖の広さを考えればかなりの数がいる事が想像できる。


しかし、それは逆に言うと、この湖で漁が出来ないという事はリザードマン達にとっては死活問題と言える。


他にも水場があるとは言っていたが、村の規模から察するにこの湖がリザードマン達の食糧の大半を確保できる場所である事は間違いない。


という事は、ここを取り戻す事が出来ればそれはそれは大きな借りが生まれ、労働力の提供などお釣りが出るくらいだとカイトは思っていた。


「ほぅ、ここか、中々広い湖ではないか!水質も良さそうだ!確かにこれだけ広く、この水質であれば十分な食糧が確保できるだろうな。」


「あぁ、正直言ってここは我々リザードマンの食糧の大半を確保する場所だった。それがあいつのせいで、、、」


「やはり、あれがお前の言っていた例のスライムか。思ったより大きいじゃないか。」


カイトは湖畔に到着した瞬間にあの巨大なスライムの姿を捉えていたのだが、敢えてこちらからは触れず、ゾリューが話し出すまでの間、じっと観察していた。


「(ゾリューの前であれだけ息巻いてしまったが、思ったより大きいじゃないか。これは少し厄介かもな。だが、ゾリューにあれだけ見栄を切った以上、何とかしなくてはな。もう少しスライムの様子を観察するか。)」


カイトは何か討伐攻略のヒントが無いか周りを見渡したり、あまり関係ない他の水場の情報を聞いたりしながらスライムの様子を観察する。


しかし、これと言ってスライムの特徴や弱点などを見抜く事が出来ず、戦ってみないと分からないという結論に至った。


スライムは、それはそれは巨大な姿で、湖の真ん中にどっしりと身を据えている。

本体は湖の色と同じような青くて透明の澄んだ色をしており、目も口も見当たらないため、今どちらを向いているかも分からない。

こちらからは、起きているか眠っているかも分からないが、しばらくするとスライムはぐるりと体を回転せて向きを変えた。


「カイト様、こちらからスライムがどこを向いているかよくわかりませんが、奴が少し体勢を変えました。もしかしたらこちらに気付いてこっちを向いているのかもしれません。」


「うむ、その可能性はあるな。奴の手の内が分からない以上、相手の攻撃を待つのは得策ではないな。カーミラ、まずは攻撃魔法で相手の様子を探るのだ。」


「はっ、かしこまりました。それでは、ファイヤーボール(火球)。」


カーミラはファイヤーボールを唱えると、無数の火の球がスライムに向かって放たれる。


が、火の球がスライムに直撃する寸前に、突然スライムの体は真っ赤に変色した。


そして次の瞬間、ファイヤーボールはスライムに直撃するも、当たった瞬間に掻き消えてしまった。


「む、これは?」


カイトは、何が起きたのか状況を把握しようとしているとゾリューが口を開く。


「これだ。俺達が戦った時もこんな風に時折色を変えて戦っていた。そしてその攻撃は全て無効化されてしまったんだ。」


「なるほど、ゾリュー、お前の言っていた事は間違いではなかったようだな。」


「だから初めから言ってるじゃねぇか。さぁどうするよ?俺達との格の違いってやつを見せてくれよ?」


「勿論だ、我々がスライム如きに遅れを取らないという事を目に焼き付けてやる。だが、もう少し奴の様子を見たい。カーミラ、もう一度魔法を撃ってくれ。今度は火属性以外の魔法で頼む。」


「はい、承知いたしました。では、サンダーアロウ(雷矢)。」


今度は雷属性の矢をとばしてスライムを攻撃する。すると今度は、スライムの体が黄色に変わる。

そして何本ものサンダーアロウが直撃するも、再び掻き消えてしまった。

だが、カイトはここでスライムの特性に気付き始めていた。


「なるほど、そういう事か。ポイズンニードル(毒針)。」


今度はカイトが毒属性の魔法を放つ。すると、スライムは紫色に体を変色させてそれを防いだ。


「やはりな、あとは念のため打撃も試してみるか。ボアード、スライムを斬ってくれないか?」


「はい、やっと自分の出番ッスね。おりゃーッス!」


今度はボアードがスライムに斬りかかると今度は元の水色の透明な色に戻り、ボアードの鋭い剣をボヨンと跳ね返す。


「うわッス!」


ボアードは勢いよく跳ね返され辛うじて地面に着地する。


「くそー、どうやら話で聞いた通り、魔法も物理攻撃も効かないみたいッスね。」


「そうね、我々の攻撃力なら無効化なんて関係ないと思っていたのだけれど、これは少し厄介な相手になりそうね。」


「うむ、あいつは恐らく攻撃される瞬間に相手の攻撃と同じ属性に体質を変化させ、あらゆる攻撃を無効化しているのであろう。そしてそれは我々の魔法や打撃をも凌いでしまう。完全耐性といってもいいだろうな。」


カイト達が冷静に相手の能力を分析していると、ゾリューが口を割ってくる。


「おいおい、相手の観察はいいんだけどよぉ、お前達の話を聞く限り、これじゃあお前達でも歯が立たないって事にならねぇか?」


「いや、ゾリューよ、村を出る前にも言ったが、この程度の条件では我々が負ける要因にはなり得ない。まぁ見ていろ。ここからが我々とお前達の本当の格の違いだ。」


ありとあらゆる攻撃を無効化され圧倒的に不利な状況に思われたカイトだったが、カイトの頭には既に勝ち筋が見えていたのであった。

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