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第九十二話~村の問題~

リザードマンの村にて村長のゾリューと会う事が出来たカイト達。

出会った瞬間は戦闘態勢だったものの、門番達から事情を聞きゾリューの誤解は解けた。

強者と認められたカイト達はゾリューに気に入られ、村の中へ案内してもらえる事になる。

そこで、カイトは相談を打ち明けるが、あっけなく断られてしまうのであった。


「そうか、ゾリュー。お前の考えはよく分かった。それに納得した。お前の回答は少々残念に思うが、村長として強者にも屈せず堂々とした態度に感心したぞ!」


「そうかよ、っで話はこれで終わりか?」


ゾリューが話を打ち切ろうとしたが、カイトにはまだ策があった。

それは力ずくで解決する方法ではなく、もっとお互いにとって有益で合理的な方法であった。


「いや、まだだ。ゾリューよ、確かにお前が言った通り私の相談はお前達リザードマンにとって何の利益もない。むしろ不利益になるだけだ、このままではな。」


「このままでは?それはどういう事だ?」


カイトが含みのある言い方をするとゾリューは食いついてきた。

カイトはその瞬間、直感に近いものがあったが、この計画の成功を確信した。


「私はなにもお前達にタダで働いてもらおうとは思っていない。金が必要なら言い値で払えるほどの財は持っている。しかし、それよりもこの村の問題を解決する方がお前達にとっては良い取引になるだろう。」


「な、なぜ、この村が問題を抱えている事を知っている!?」


「なぁに、お前との会話の中で想像を働かせればこの程度の推測くらい容易なことだ。」


「そういう事でしたか。流石はカイト様。もうそこまでのお考えに至っているとは。」


「ほう、カーミラも気付いたか?」


「はい、遅ればせながら恐らくカイト様と同じ考えに至ったかと。」


「え、どういう事ッスか?」


「カーミラよ、いつものようにボアードに教えてあげなさい。」


「はっ、承知いたしました。」


すると、カーミラはカイトの考えをボアードに共有し始めた。


カイトは最初の提案で断られる事は分かっていた。

なぜならあまりにも一方的すぎる内容だったからだ。

無償で労働力を提供しろなどと言われて、誰がはい分かりましたと言うだろうか。

その相手が例え絶対的な強者であっても少しは躊躇ったり、譲歩したりしてもらえるよう交渉するだろう。


そんな状況の中、今回の相談相手は血の気が多いリザードマンだ。

それを考えるとまずこの提案は突っぱねられるだろうとカイトは予想していた。

万が一それが受け入れられるような事があれば、それはそれでいいのだが、カイトにとっては断られてからが本番だった。


カイトはドワーフ国との交渉でも見せた通り、最初にハードルの高い無茶な提案をして、段々と条件を緩和していく作戦を取ろうとしていた。


それが先程言ってみせた、金銭での取引やリザードマン達が抱えている問題の解決などである。

カイトはリザードマンの村の生活や他国との状況を鑑みて、リザードマン達に金銭的な取引は難しい、寧ろ金銭は必要ない生活をしていると分かり、他に取引材料となるようなものを探していた。


そんな中、ゾリューとの会話の中でカイトは「今はタダ働きする程暇じゃない」という言葉に引っかかっていた。

言い方が悪いかもしれないが、ここにいるリザードマン達の暮らしはほぼ自給自足と言ってもいいだろう。


それに加えて生活の質も大して高くない。

この村一の権力者であるゾリューの家ですら、人間からしてみたら縄文時代のような造りをしている。

生きていくために必要な最低限の食糧の確保などあるかもしれないが、そんなのたかが知れている。


こちらの勝手な思い込みかもしれないが、そんな奴等に暇がないわけがないとカイトは思ったのであった。


仮にそれが断るための嘘だったとしても「今は」という言葉がカイトのセンサーに引っかかっており、それに、こちらの提案を断るにしても、理由を偽って断るなどリザードマンらしくないとも思っていた。


このような流れから、カイトはこの時点でもしかしたら今は他の何かに追われていて、本当にこちらのお願いを聞いているどころではないのではと推測していた。


そして、その後の会話でカイトはこの村には何かがあると確信する。

それはカイトが「このままの条件ではタダ働きになる」と含みのある言い方をした際のゾリューの食いつきようだった。

カイトが含みのある言い方をした途端、さっきまで堂々としていたゾリューの態度が変わったのだ。

それはこいつらなら自分達の問題をどうにかしてくれる、そんな希望が少しばかりゾリューの表情から見て取れるような態度であった。

そしてカイト達に希望を抱いている様子を察すると、それは強者ではないと解決できないような問題である可能性が高い。


カイトはこの短い間の会話でそこまで頭を働かせていたのである。

そしてこの後の会話でその予想は全て当たる事になる。


「という事よ、分かったかしら?」


「なるほど、ちょっとややこしくて自分には難しいッスけど、カイト様が凄いって事は分かったッス!」


「あぁ、そう。まぁ、私でさえカイト様のお考えに至るまでに時間を要したのだからあなたが理解出来なくても仕方が無いわね。」


と、カーミラはボアードに説明したのだが、ゾリューも隣でうんうんと頷きながら聞いていたのであった。


「そこまで計算しながら俺と会話していたのだな。本物の強者というのは力だけでなく頭脳もまた優れた才を持っているのだな。カイトよ、お前は凄い奴だな。」


「ありがとう、ゾリュー。褒め言葉として受け取っておこう。それで話に戻るのだが、お前達が我々に労働力を提供してくれる代わりに、この村が抱える問題を解決しようと思うのだが、その条件ではどうだ?」


「あぁ、それなら俺も賛成だし、村の者も反対する連中はいないだろうな。しかし、いくらお前達が強者だからと言って、この問題は容易には解決出来ないと思うぞ?」


「そうか、それは腕が鳴るというものだな。それで、この村は今どんな問題を抱えているのだ?」


「あぁ、実はだな、、、」


カイトが尋ねると、ゾリューはこの村の問題について話し始めた。


ゾリューの話によると、ここ最近、村の西にある湖畔に突如として巨大スライムが出現したそうだ。

リザードマンは主食である魚を捕まえるために村周辺にあるいくつかの水場で漁をしているのだが、その巨大スライムが現れた西の湖畔は、村で一番魚が獲れていた場所だった。

しかし、そのスライムが湖畔の魚を次々と捕食してしまい、リザードマン達は食糧危機に陥っていたのであった。


「そんなスライムなんてとっとと倒してしまえばいいんじゃないッスか?」


「あぁ、俺達も最初はそう思って、村で討伐隊を結成してスライムを倒そうとしたんだ。でもな、俺達は相手がただのスライムだと思って侮っていたんだ。」


ゾリュー達はスライムの討伐に駆り出したが、いざ戦闘になると、そのスライムには全く攻撃が通用しなったそうだ。

打撃も斬撃も全てぷよぷよした体に跳ね返されてしまい、まるでダメージが入らなかったらしい。

魔法も試したが、リザードマンは元々ボアードのような肉弾戦特化の種族であり、魔法は使えるものの、能力は高くない。

そのため、魔法を使っても全く歯が立たず、同様に跳ね返されてしまったという。

それにこちらの攻撃が全く通用しないといっても、スライムだって黙ってはいない。

スライムも反撃してきて、その自由自在に変形する体から繰り出される予測不可能な攻撃にゾリューを含めた村の精鋭達も撤退するしかなかったという事だった。


「どうだ?流石のお前達でも攻撃が全く通用しない怪物が相手じゃどうしようもないだろ?」


ゾリューが皮肉交じりで自分達ではどうにもならなかった怪物の討伐が出来るか尋ねるが、カイトは即答する。


「それだけか?」


ゾリューはカイトの予想もしない返答に問う。


「それだけとはどういう意味だ?」


しかし、何度尋ねてもカイトの冷静な表情は変わらない。


「そのままの意味なんだが、そのスライムを倒してやるだけでよいのか?」


「あ、あぁ、そうだが、俺の話を聞いていたのか?攻撃が通用しない相手だぞ!?」


「だそうだ、ボアード、カーミラ。」


「それは楽しみッスね!」


「はい、その話が本当なら果たして我々の攻撃でも通用しないのか試してみたいですね。是非そのスライムの強さをこの目で確かめて、そしてさっさと片付けたら我々の計画を進めましょう。」


「という事だ、ゾリュー。っで早速だが、その西の湖畔とやらまで連れて行ってくれないか?」


ゾリューにとってはどうせ無理な話だと思っていたのだが、カイト達はあっさりと承諾し、早速西の湖畔に討伐へ向かう事になるのであった。

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