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第五十九話~ボアードVSサライ~

カイト達は研究所の第一階層でサライという侍のロボットを発見し、応戦する事になった。

だがその後、カイトの提案で一旦戦闘は中断され対話の機会を得る。

そこでカイトは侍ロボットの情報を探ろうとしていたのだが、思わぬサライの返しに墓穴を掘る状況に陥ってしまっていた。


サライは他者が知り得ない侍の事について、カイトがなぜそれを知っておるのかを尋ねていた。


「そ、それはだな、魔法による力だ。私は戦闘の最中に敵の情報を把握する魔法を発動させ、お前が侍

というこの世界に存在しないものをモチーフにして作られたロボットである事を突き止めたのだ!」


カイトは苦し紛れに魔法という便利なワードを使って何とか切り抜けようと試みる。


「魔法か。しかし、我の装甲には魔法に対する耐性がある。そのような魔法を使っても無効化される筈だが?」


良い言い訳を考えたと思っていたカイトだが、サライの返しによってカイトの発言に矛盾が生じる。

状況は更に悪化し、カイトは藁にも縋る思いで必死に逃げ道を探す。

流石にボアードとカーミラの前で異世界人である事をカミングアウトするのは避けたい。


「何を言っているんスか?魔法の耐性なんて関係ないッスよ?カイト様の強大な魔法の前にお前の耐性が効くわけないッス!」


「その通りよ。まったく、ロボットの頭は一般常識しか埋め込まれていないのかしら?まぁそれならば無理はないわね。なぜなら、カイト様は万物の常軌を逸するお方。お前の埋め込まれた常識など通用する相手ではないのよ。」


「なるほど、そういう事か、まだこの世界には我の知らない事があるようだな。」


カイトは与えられた僅かな時間で次の言い訳を考えていたが、思わぬ所でボアードとカーミラに助け舟を出され、サライを納得させる事に成功した。


そして、カイトはここぞとばかりにその助け舟に勢いよく乗り込む。


「あぁ、その通りだ。サライよ、私はお前の常識を超える存在である。故にお前の常識など私の前では通用しない。分かったか?」


「なるほど、確かに魔法でも使わなければ今会ったばかりの我の情報など知る術はないか。であればこの事実を認めざるを得ないな。」


「そうか、分かってくれて助かるよ。これで私がお前の想像を超える強者である事は理解してくれたかな?」


「そうだな、お前が只者ではない事は承知した。」


サライを上手く言いくるめたカイトはここで思い切ってある提案をする。


「うむ、サライよ、そこで提案なのだが、お前は私の配下になる気はないか?私は無益な殺生は望まない。お前も敗色濃厚の相手と勝負をして痛手を負いたくはないだろう?であれば潔く負けを認めて私の傘下に入るのだ。どうだ?悪い話ではなかろう?」


カイトはサライのその聞き分けの良い性格に付け込もうと、サライに傘下に加わる提案をするがこれが裏目に出る事となる。


カイトの提案を聞くとサライは目の色を変えて厳しい口調で返す。


「我が力に屈して味方を裏切れだと?冗談は大概にしろ!お主らは確かに強者かもしれぬ。だが、それにただ屈して傘下に降ろうなど侍の片隅にもおけぬ。それにカイトよ、お主は本当にこの我より強いのか?我が侍である事を見破った魔法は置いといて、いくつか魔法攻撃を受けたが、我にはまったく効いていなかったぞ?」


カイトはあわよくば戦わずして負けを認めさせようとしたのだが、それがサライのプライドに火をつけてしまったようだ。

流石は侍魂といったところだろうか。

タダでは仲間になってくれなそうだ。

それと同時に痛いところを突かれてしまった。

そう、サライに対してカイトの魔法はほとんど効いていなかったのである。

敵の情報を把握する魔法は当然ハッタリであり、発動させてもいない。

つまりは、サライはカイトにとって相性の悪い敵だったのである。

しかし、そうと分かったカイトは潔く強行作戦に出る。


「そうか、折角お前のためを思って提案してやったのだがな。では、こうしよう。ボアードサライの相手をしてやれ。」


カイトはこれ以上の交渉は無意味と判断して、半ば強引にボアードを戦闘に狩り出す。


「はいッス!その言葉を待っていたッス!自分もやられっぱなしじゃ気が済まなかったところッス!」


「何だ、カイトよ、お前が戦うのではないのか?やはり怖気づいて自分は隠れて後は下部に任せるというのか?がっかりだな。」


サライはカイトを挑発するが、カイトはムキになって挑発に乗ろうとはしない。

ここで挑発に乗ってしまえばサライの思う壺だからだ。

決して怖気づいた訳ではなく、カイトはサライに勝つ自信はあった。

単純な肉弾戦で挑めばカイトに勝ち目はないだろうが、恐らくサライの魔法に対する耐性は完全な耐性でない。

であるならば、その耐性を破る威力の魔法を発動させれば良いだけの話である。

だが、そのような高出力の魔法を発動させればこの施設が耐え切れず崩壊するかもしれない。

カイトは今後もこの施設を何かに利用したいと考えているため、崩壊させてしまうような事は避けたいと思っていた。

そして、それに何より工場のフロアにはコロネフとコロンがいる。

そうすると万が一この施設が崩壊してしまった場合、彼らを巻き込んでしまう可能性だってある。

これらの状況を踏まえてカイトはボアードに相手を任せたのだ。


「もはや貴様に何を言っても信じてもらえないだろうが、私が本気の魔法を発動させればお前の魔法耐性など無意味だ。瞬殺出来ると断言しよう。だが、それと同時に私の魔法の威力にこの施設が耐えられず崩壊する可能性もある。それを考慮して、ボアードと肉弾戦をしてもらう事にした。これなら私が戦うよりは施設への被害が少なくて済むであろう。それにまだここは三層ある内の一層目。二層目には貴様と同等またはそれ以上の刺客がいる筈だ。そして三層目にはお前達の親玉のドロイドがいる。私はお前如きと相手をしている暇はないのだよ。では我々は先を急ぐのでここで失礼する。ボアードよ、なるべく損傷させずに勝利し、そいつを捕虜とするのだ。カーミラ、行くぞ。」


「はっ、かしこまりました、カイト様。」


「了解しましたッス!自分も片が付いたら合流しますッス!」


サライの相手をボアードに任せ、再びエレベーターの通路から上を目指そうとするカイトとカーミラであったが、当然サライは黙っていない。


「ちょっと待て!そう簡単に行かせるとでも思っているのか!?」


ボアードの事はそっちのけでフロアを抜け出そうとしているカイトとカーミラに斬りかかろうとするサライ。

しかし二人はサライの事など一切気にせず、背を向けたままエレベーターの扉に向かって歩いて行く。

その間にもサライは二人との距離を詰め、腰から刀を抜き出す。

そしてサライの刀の刃が二人に届こうとした瞬間、サライは死角から激しい衝撃を受けて真横に吹き飛ばされる。

サライはまたしてもその衝突によりボディが壁にめり込んでしまう。


「おいおい、お前は一体どこを見て何をしているッスか?自分が言うのもなんなんスけど、人の話は良く聞いた方が良いッスよ?カイト様がおっしゃった通り、お前の相手は自分ッス!さっきは油断していたッスけど、今度はそうはいかないッスよ!」


一瞬何が起きたか分からなったサライだったが、刀の刃がカイト達に触れようとした寸前でボアードはサライの死角に回り込まれ、脇腹に強烈なボディブローをお見舞されたのであった。

サライはボアードの言葉を聞いてようやく自分はボアードの攻撃を受けて吹き飛ばされたのだと理解した。

そしてその間にカイトとカーミラは扉の前まで足を運び、そこからフライ(飛行)の魔法でその場を去っていってしまった。


「くっ、逃がしてしまったか。よくも我を邪魔してくれたな。」


「カイト様にお前の相手を任された以上、お前にカイト様の邪魔は死んでもさせないッスよ。まぁ、お前相手に自分が死ぬ事はあり得ないッスけど。」


ボアードの言う通り、カイトがボアードにサライの相手を命じた以上、二人はサライがこちらを狙って来ようとも、ボアードはそれを何が何でも阻止する事が分かっていた。

先程は油断したせいで腕を斬り落されてしまったが、戦闘モードに入って集中したボアードの目を欺くのは相当の実力者ではない限り至難の業である。

そのボアードの目を掻い潜って二人に奇襲をかけるなど悪手の以外の何ものでもない。

サライも決して弱い相手ではないが、今のボアードと一騎打ちするのであれば、他には目もくれず全神経を集中して、全身全霊で挑まなければたちまち打ちのめされてしまうだろう。

二人もそれが分かっていたため、サライの事など目もくれず次の標的に向けて動き出していたのである。


「貴様、まだ斬られ足りないのか?先程切り落としてやった腕は魔法の力でくっつけたようだが、もうカーミラという魔法使いはいない。次は回復する前に切り刻んでくれるわ!」


「望むところッスよ!ロボットの癖に中々活きが良いッスね!さぁ、かかってくるッス!」


こうしてカイトとカーミラを無事に第二階層へ向かわせる事が出来たボアードは、サライとの一騎打ちに臨むのであった。

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