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第8章 赤蜥蜴と赤羽根、巨人の里へ 第11話、激戦のその後で その10

    第11話その10


「へぇ~、俺が酒飲んでる間にそんな面白いことがあったのかよ」

 ドレイクはそんなことを言いながら良く冷えたエールを喉に流し込んでからゲラゲラ笑っていた。

 アレイスローとフェルフェルのひと悶着があった後、ひとまずアレイスローが覗きが趣味の変態強姦エルフと言う不名誉な認識で同意していた。もちろんアレイスローは誤解だと必死に弁明していたが、誰一人として聞き入れることは無かった。そして、フェルフェルが帝国のスパイであるという件についてはフェルフェルの「……ゴメン…アレイ……この…話…は……また…今度…」と言う言葉と、彼女の黙っていてほしいというニュアンスを込めた人差し指を唇にあてる「…し~…」と言うジェスチャーで、アレイスローの胸の中に一旦収めておくことにしたのだった。そのためあの一件はフェルフェルの事が好き過ぎたアレイスローが暴走して起こした強姦未遂事件として仲間内で処理されることとなった。もっとも、フェルフェルが「…フェル…は…大…丈夫…だから……これ…以上…アレイ……を…責め…ない…で…」とアレイスローの事を庇ったので、とりあえず実質的な罰は無く、ただひたすらにアレイスローの名誉と信頼が地の底に落ちただけとなった。もっともそれだけで十分に本人には痛手ではあるのだが……。

「面白い……ではありませんよ、まったく…」

 さすがのアレイスローも視線をそらして不機嫌そうにボソッと呟いている。まあ、フェルフェルにはぐらかされたうえに、不名誉な汚名を着せられたのだから仕方がない。

「てかさアレイ、そんなにフェルのこと好きなら結婚しちゃえば?」

 フライドポテトをつまみながら唐突にそんなことを言い出すスミーシャ。当然アレイスローは飲んでいて白の葡萄酒を盛大に噴き出している。ちなみに、動揺したのかフェルフェルの方も飲んでいたリンゴ酒でむせていた。

「ちょっとスミーシャさん!ダメじゃないですかアレイスローさんの気持ちを勝手にフェルフェルさんに伝えるような真似をしちゃ!」

 リンゴジュースを飲んでいたフリルフレアが若干憤慨しながらそんな事を言い出す。

「え……で、でもフリルちゃん!アレイがフェルのこと好きな事なんてあたしら全員知ってるじゃん⁉今更って言うか……」

 スミーシャの言葉にアレイスローが頭をテーブルにガンガン打ち付けている。どうやらアレイスロー的には意外とばれていないつもりだったらしい。

 しかしそんなスミーシャの言葉に「シャラップです!スミーシャさん!」とか言いながら何故か強気なフリルフレアがふわとろチーズオムレツを口に運んでいる。そしてそんなフリルフレアとスミーシャの様子を見ていたローゼリットがチーズをのせたバゲットを口に運び、一口食べて咀嚼して飲み込んでからため息混じりに口を開いた。

「つまりはこういう事だろう?フリルフレア的にはアレイスローの気持ちはアレイスロー本人がフェルフェルに伝えるべきで、スミーシャが横から口を出す話じゃないってことだろう?スミーシャが勝手にアレイスローの気持ちを代弁したのが気に入らない……と…」

「はい!さすがローゼリットさん、その通りです!」

 ローゼリットの説明に大いに頷いたフリルフレア。若干鼻息が荒くなっているのは興奮しているからなのか何なのか?

「良いですか⁉古今東西、『人の恋路を邪魔する奴は尻の穴から一角貫通』と言いまして・・…」

「言わないよ⁉」

「いやちょっと待てフリルフレア!それは絶対違うぞ!」

「…そ、それ…は……誰…情報…なの…?」

「一角って……ユニコーンの角で何するつもりですか!」

 スミーシャとローゼリットどころか、フェルフェルとアレイスローにまでツッコミを入れられて思わず目を白黒させているフリルフレア。下ネタ混じりの妙なことわざにメープルも「や、やだ……お尻だなんて…」と顔を赤くしている。

 皆のその反応にフリルフレアは目をパチクリさせていた。

「え?……あれ?…このことわざ、違うの?」

「はい、ある程度は合っておりますが……確か『人様の恋路を邪魔するお方はお馬に蹴られてお亡くなりになられればよろしい』だったかと…」

「え?ユニコーンじゃなくて馬なんですか?」

 メープルの言葉にキョトンとしているフリルフレア。しかし他のメンバーは少し脱力していた。

「……へい………メープル…それ…を…言う…なら……『人…の…恋…路を…邪魔する……奴は……馬に…蹴られて……地獄へ…落ちろ』…だと……思う」

「それも若干言葉が違う気がしますが……まあ、ニュアンス的にはそれで良いかと思いますが…」

 フェルフェルとアレイスローの言葉にキョトンとしているメープル。

「えっと……でも、ドレイクが……」

 再びオムレツを口に運びながら、同時に右手に持ったナイフで隣のドレイクを指さすフリルフレア。ちなみに食事用でもナイフを人に向けるのは危ないし失礼になるのでドレイク以外に向けるのは絶対にやめましょう。そして当のドレイクはと言うと、肉汁の滴る熱々のステーキをハフハフ言いながら口の中にせっせと運んでいた。

「むぐむぐもぐ……ごっごっご……ぷはぁ~!うまい!」

 熱々のステーキをよく味わってから飲み込み、次いでよく冷えたエールを一気に喉に流し込む。思わず声の出る美味さだ!そして全員の視線が自分に向けられていることに気が付いたドレイク。頭の上にいくつも?マークを浮かべながら仲間たちを見回した。

「……ん?どうした?」

「いや、さっきの……」

「さっきの?」

「さっき私が言った『人の恋路を邪魔する奴は尻の穴から一角貫通』ってやつなんだけど………」

「……え?何それ?」

「………………………………」

 キョトンとしたドレイクの表情に、フリルフレアの額にいくつもの怒りマークが浮かぶ。

「おいおい、まさかユニコーンの角をケツの穴からぶっ刺すつもりなのか?さすがにそれはヤバいだろうが」

「アンタが私に言ったんでしょうがこのバカ蜥蜴ぇぇぇぇ!」

 自分の言動をど忘れしたドレイクのふざけた物言いにガチギレしたフリルフレアの叫び声が酒場どころか宿中に響き渡ったのだった。


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