第8章 赤蜥蜴と赤羽根、巨人の里へ 第11話、激戦のその後で その7
第11話その7
帝国のスパイですね?と言うアレイスローの言葉がフェルフェルの中で重くのしかかってきた。分かっていた。やはりアレイスローは気付いていたのだ。フェルフェルが……自分が今までずっと仲間を騙していたという事実に……。
それでも認めたくない、そして何より居心地の良い今までの関係を壊したくない。そんな思いがフェルフェルの心をよぎる。
「……ウェ~イ……アレイ…フェルが…帝国の…スパイ…って…何の…こと…?」
「何のことでしょうねぇ?………………………フェル、正直な話私だってそう言いたいですよ。でもね……」
アレイスローはそう言って顔をしかめた。
「あなただって気付いているんでしょう?あなたは……今回ボロを出しすぎた」
「……ウェ~イ……ボロッて何?……フェルはボロとか……出してない」
「フェル……いつになく早口になっていますよ」
「……!」
アレイスローの指摘に思わず口を押えるフェルフェル。そしてそのまま軽く深呼吸すると、またいつもの口調で口を開いた。
「……フヘヘ……アレイ…が……いつに…なく……積極…的…だから……フェル…も……思…わず…動…揺…し…ちゃった…」
フェルフェルのいつも通りの口調に思わず苦笑いするアレイスロー。しかしその苦笑いさえすぐに消えて行った。
「フェル、今回あなたが出したボロが何なのか、教えてあげます」
「……フ…フヘヘ……フェル…が…受けて…立つ……出しても…いない……ボロが…何…なのか……気に…なる…」
フェルフェルの言葉にアレイスローは静かに目を閉じた。
「1つ目は……メープルさんとゴンザルドさんが盗賊らしき輩に襲われた時、つまり私たちがメープルさんたちを助けた時です」
「…あの…時……フェル……何か…やった…?」
「私がいなかったからと言って誤魔化せると思っているんですか?ドレイクさんから聞いていますよ。あなたが捕らえた盗賊団の頭目らしき男を誤って射殺したことを……」
「……!」
アレイスローの言葉に少し驚いた様子のフェルフェル。しかし、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「……でも…アレイ……フェルは……アイツを……間違え…て…殺…した」
「ええ、そう聞いています。ですが………」
「……です…が…?」
「どうして間違えたんですか?それまであなたは私と一緒にいたのですから相手が何者かなんて分かっていなかったはずですよね?」
「……それ…は……相手が…盗賊……ぽい……装備…だった、から……」
「そうですね。ですが……拘束されていた頭目を敵と認識して撃ち殺した、と言うのは少し無理がある気がします」
「…そ、それは……みんな…が……襲われ…て……いるの…かと……」
「すぐ近くにいたのがドレイクさんだったのにですか?あのドレイクさんですよ?」
「……うぐ…」
アレイスローの言葉を受け、思わず言葉に詰まるフェルフェル。さらに……。
「もちろんそれだけじゃありません。フェル、あなたは……『ミサイル』と言う兵器を知っていましたね?」
「……ウェ~イ……何…の…こと…?」
「とぼけても無駄ですよ?あなたがあのアダマンタイトのゴーレムとの戦闘中に『ミサイル』と言う兵器の名前を口にしたのを他ならぬ私が聞いていたのですから」
「………うぐ…」
アレイスローに詰め寄られ、思わず後ずさるフェルフェル。しかしアレイスローの追及はまだ止まらない。
「それにフェル、あなた………あの短機関銃と言う武器の使い方を知っていましたね?あのゴーレムとの戦闘中にあなたが使ったのを私はしっかりと見ました」
「……でも…フェル…だけじゃ……無くて……ローゼリット…も…スミーシャ…も…使って…た……」
「あなたが持ってきたんですよフェル。そしてあなたが二人に使い方を教えた。私自身が見ていましたからね」
「……うぐ…」
アレイスローの言葉に渋い顔になるフェルフェル。アレイスローはフェルフェルが帝国のスパイであることを確信しているようだった。そして、フェルフェル自身もまた………アレイスローが確信をもって話していることに気付いていた。
「フェル……認めてください。あなたが帝国の……ゲオルシュバッハ帝国のスパイであることを……」
悲痛な面持ちでそう言うアレイスロー。仲間だと思っていた相手を糾弾しているのだ。気分が良いはずがない。実際アレイスロー自身、自分の言葉とは裏腹に「どうか間違いであってほしい」と言う思いが心の中にあった。そして、自分自身が好意を寄せているフェルフェルを糾弾しなければならない事態に、拳を握り締めて歯を食いしばっていた。
そして………そんなつらそうなアレイスローの顔を見ていたフェルフェルは静かに、口を開いた。
「…………………そう…だね…………ごめん…アレイ………フェルは…帝国の……皇帝陛下の…スパイだよ…」
フェルフェルは静かに、しかしハッキリとした口調でそう言い切ったのだった。




