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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第十章 勇者冒険編・決戦、浮遊大陸!

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第244話 宴の前に

 昼をだいぶ過ぎたケイカ村。

 案の定、村の中は人々でごった返していた。

 近隣の村や町からもお祝いに駆けつけているらしい。


 食堂で大量の料理を作るクラリッサおばさんが言う。

「お疲れさまですね、ケイカさま! さあさあ、料理はでき次第、庭に運んでるから、そこでみんなで食べちゃって!」

 ちらっと外を見ると、境内にはものすごい人がいた。銅像を拝む人、酒を飲んで騒ぐ人。

 わりと広い敷地が、人々で埋め尽くされている。



 ラピシアが指をくわえて尋ねる。

「ソーセージは?」

「もう茹でて大皿で出したよ! 早く行かないとなくなっちゃうよ!」

「いくー!! アトラも!」


 ラピシアはアトラの手を掴んで勢いよく駆け出す。白いワンピースの裾がめくれて元気な足がみえた。

「ひゃあああ!」

 アトラは足が空中に浮いたまま引っ張られていった。



 クラリッサの邪魔をしても悪いので、俺は苦笑しつつ玄関へ向かった。

 外からは人々の驚きの声。

「小さい子がきたぞ!」「ラピシアちゃん、帰ってきたのかい!」「小さいのによく頑張ったねぇ!」「わぁ、ラピシアちゃんだ! 本当にありがとー!」

 子供たちの声まで聞こえる。


 ラピシアが元気に答える。

「うん、がんばった! ――ソーセージは?」


「こっちにあるよ~」「ラピシアちゃん、おいで~」

 ナーガのナナや特待生のララと仲良く食べ始めたらしい。


 誰かが言う。

「そっちの子は?」

「アトラ! ババア!」

「はわわ! ババアじゃないのです!」

 アトラの怒る声。

「アトラちゃん、よろしくね~」「学校くるのかな~?」「あとで遊ぼ~」


 友達ができたようで何より。

 ――アトラも馴染めるといいな。



 扉を開けて外へ出る。昼過ぎの暖かい日差しが目にまぶしい。

 境内へ出た。


 俺の姿を見るなり、騒いでいた人々が静かになっていく。

 というか手を上げた姿勢のまま、パンを食べようと口を開けたまま、固まる。


 静寂が庭の端まで行き渡った。

 と同時に、歓声が爆発した。


「ケイカさまっ!」「ありがとうございます!」「あなたがいてくれて本当によかった!」「初めてお会いした時から真の勇者じゃと思うておりましたのじゃ!」


 次から次へと褒められた。

 大人も子供もおじいちゃんも。

 泣きながらの笑顔で、握手を求められる。

 ご飯を食べる暇すらない。

 


 それでも言わなくちゃいけないことがあった。

 タイミングを見て、庭の中央にある拝殿――神楽舞台へ飛び乗った。

 庭を埋め尽くす人々見ながら言った。


「みんなの祈りは確かに聞こえた。助かったぞ。ありがとうな」

「「「ケイカさまぁぁぁ!」」」


 うわぁぁぁ、と歓声が波のように押し寄せる。

 喜びの声が風となって俺の髪と和服を揺らす。


 心地の良い風を受けつつ、内心思う。

 ――強いから神じゃないんだ。人々を導くからでもない。

 祈り、守り、支えあうからこその神なんだ。



 ふと、敷地の前に乱れたミニスカ浴衣を着た、エロい女将が立っているのに気付いた。

 ステラだ。狐獣人族長のマハルと、ビホルダーゲルのアイもいる。


 俺は人々に軽く挨拶しつつ、外へと向かった。

 庭先の道路に出るなり、ステラが飛びついてきた。柔らかな全身を押し付けるように手足を絡ませてくる。



 でも、俺を見上げる明るい瞳は潤んでいた。

「ケイカってば! アタシを抱かずにどこか行ったら、イヤなんだからねっ」

 抗議をするように、背中の小さな羽根がパタパタと鳴る。


「祈りは聞こえたよ。ありがとうな」

 耳を甘噛みしつつ、ぎゅっと抱き締めてやった。


「はぅぅ~!」

 ステラは耳まで真っ赤になって、くたっと俺の胸に倒れこんできた。

 


 マハルが所在無さ気に、筆のように太い尻尾を揺らしてる。

 ステラの華奢な肢体を抱きとめつつ、話しかける。

「マハルもありがとうな」

「いえ、ご無事で何よりでした……魔王を退治していただき、本当にありがとうございました。これで、獣人たちも安心して暮らせます」


「これからどうするんだ? 獣人地区へ帰るのか?」

「いえ、狐人族は数も少なく、独立して暮らすのは難しくなりました……この村に住まわせていただこうかと」

「そうか。これからも獣人たちのまとめ役、頼んだぞ」

「はい、お任せください」



 そして横にいて触手をうねらせている巨大アメーバに話しかける。

「アイ、村を守ってくれてありがとうな。あの時はもうダメかと思った」

 アイは照れたのか、大きな目玉を赤くしてうつむいてしまう。


「あれは褒美モノだな。あとで何かプレゼントしよう」

 そういうと、目玉をますます真っ赤にさせて、ずるるるる~と這い去ってしまった。


「……いや、何が欲しいか聞きたかったんだが……」



 すると腕の中でステラが身じろぎした。甘い香りが漂う。

「アイってば、この間、雑貨屋でカーテンをまとめる飾り紐を物欲しそうに見てたよ」

「なんでカーテンの紐を?」


 ステラが細い首を傾げると桃色の髪が柔らかく動いた。

「さあ? 神獣の考えることなんてアタシ、わかんない」

「まあ、それが欲しいなら買ってやるか……どれだかわからないから後で買って届けてくれ」



「あいさぁ~。代金はエトワールにでも請求しとくね~――って、そうそう! エトワールに伝えてって言われてたんだった! なんか早馬で王都に行ってきますわ~、だって」


「ふぅん……王都にね」

 王様の意味深な発言を踏まえると嫌な予感がした。


 ――魔王を倒した勇者はお姫様と結婚して末長く暮らす、というのがセオリーだしな。

 だが、長い目で見るとエーデルシュタインに迷惑が掛かる。

 一番大切にしたいのはセリカなんだから。


 何か、対策を考えないと。

 ただ、王国側をむげにはできない。勇者の権限を使用できたのは、王様のお墨付きがあってこそ。

 それを踏まえた上で、俺が本当に欲しいものを……いや、まてよ?

 うまくやれば領土問題も全部解決できるかも知れないぞ。



 俺はステラの小ぶりなお尻をキュッと掴んで持ち上げた。手に吸い付くようなしっとりした肌。

「ひゃんっ!」

「伝言、確かに聞いた。……よし、それじゃ、王都に行くか」


「頑張ってね、ケイカっ」

 ステラは俺の頬に、ちゅっと可愛いキスをしてきた。

 それだけで彼女の頬は真っ赤になっていた。


 本当に淫らなサキュバスなのか疑問に思う。

 ――というか、魔王を倒したし、そろそろ約束を果たしてやるべきかな。


 二人と別れると、人ごみを掻き分けて妖精の扉へ向かった。

 短いので、夕方にも更新します。たぶん5時ごろに。

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