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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第十章 勇者冒険編・決戦、浮遊大陸!

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第245話 宴の後で

 夕暮れ時の王都クロエ。

 灰色の町並みが赤い夕焼けに染まっている。


 俺はセリカとミーニャを連れて王城で開かれる祝賀会に参列していた。

 ラピシアはソーセージを食べ過ぎたのでアトラと一緒にお留守番。



 柱の立ち並ぶ荘厳な大広間。

 赤い絨毯がしかれており、着飾った騎士や貴族が談笑していた。

 

 テーブルには豪華な料理が並び、執事風の男が酒の入ったグラスを運んでいる。


 貴族の紳士や令嬢から、ひっきりなしに話しかけられて褒められる。

 最初はお世辞かと考えたが、意外と心からの祝辞だった。

 って、そうか。

 俺を快く思わない反対派はほとんど粛清されたんだったな。



 セリカは隣にいて、優雅に応対していた。

 金髪とティアラがキラキラ輝いている。


 ミーニャは料理を味見しては「これおいしい」「これまずい」と選別していた。

 美味しいのだけお皿に乗せて俺のところへ持ってくる。

「よしよし、偉いぞ」

 黒髪を撫でてやると尖ったネコミミを伏せて、頬を上気させて喜んでいた。



 そうこうするうちに、分厚いローブを着た王様が大広間に現れた。

「皆のもの、楽しんでおるかな? 今日はまことにめでたい日じゃ。盛大に騒ぐが良いぞ」


 寛大な処置に貴族や騎士、官僚たちは喜びの声を上げた。


 王様の隣には、背中の開いたノースリーブのドレスを着たエトワールが控えている。

 スカート丈も短く、すらりとした脚がのぞく。

 少女が背伸びをして大人の格好をしているようにも見えた。

 そのアンバランスさが美しい赤髪に花を添える。

 


 王様はエトワールを連れて大広間の正面へ来ると、おほんと一つ咳をした。

 人々がみんな王様に注目する。


「さて、皆のもの。勇者ケイカが魔王を倒したのは知ってのとおりじゃ。そこで我が国はケイカにとっておきの褒美を取らせようと思う」

 隣にいるエトワールの顔が赤くなる。喜びの微笑みを浮かべて俯く。


 ――ああ、やっぱり。



 王様は堂々と発言した。

「勇者ケイカに寵愛を受けた我が娘エトワールを、ケイカに娶らせようぞ!」

「「「おおおおお!」」」


 大広間にいる人々が沸き立った。

 めでたいことだと喜んでいる。



 しかし隣にいるセリカが、はっと息を飲んだ。美しい顔を苦しそうに歪める。

 そんな彼女を安心させるため、華奢な肩を抱き寄せた。

「心配するな。もう手は考えてある」

「け、ケイカさまぁ……」


 セリカと寄り添いながら、俺は声を張り上げる。

「ダフネス王よ! あなたは勇者ケイカの名は永遠に語り継がれると宣言した! しかし、人は三年たてば恩義を忘れる! 結婚しただけで本当に永遠になるのか! 魔王の怖さと打ち勝った勇者の名を、人々は覚え続けられるのか!」


 実際、3年で忘れられるのは経験済みだった。

 だからこそ、簡単な終わらせ方はしたくない。


「な、なんと……っ!」

 王様は反論を予想していなかったらしく、戸惑っていた。

 エトワールが喜びから一転、泣きそうな顔になっていた。


 

 それでも容赦なく言葉を続ける。

「王よ! ヴァーヌスとヴァーヌス教によって人民は不必要に苦しめられた! 同じ間違いをしてはならない! そのために今こそ、人々を幸せにする教え、同じ間違いをしないための教えを説き続ける『仕組み』が必要なのではないか!?」


「な――っ!? そなたは、なにを望んでおる!?」



 俺はセリカを強く抱き寄せつつ、にやりと笑った。

「廃止された勇神ヴァーヌス教に代わり、勇神ケイカ教の設立を願い出る! ――王女エトワールにはケイカ教会の教主になっていただきたい!」

 ――祭事を司る巫女はすでにいるので、面倒な経営を担当してもらう。

 日本だって伊勢神宮の宮司は皇族がなるしな。


 大広間がざわついた。

 人々が囁きあう。

「確かに……ヴァーヌス教は狡猾でしたわ」「同じことが繰り返されたらと思うと……」「恐ろしいことです」



 王様は呆然と固まっていたが、突然大声で笑い出した。

「あっはっは! それがそなたの望みか! わしはケイカを見くびっておったのやもしれぬ。――よかろう、廃止したヴァーヌス教に代わり、人々を守り導いてもらいたい!」

「お、お父さま!?」


「「「うわぁぁぁ!」」」

 戸惑うエトワールをよそに、人々が盛大な歓声と拍手を送った。

 


 そして、エトワールは教主に、ケイカ村はケイカ教教主領となった。


 セリカが微笑みながら首を振る。

「信じられません……さすがケイカさまですわ」

「たぶんこれが、俺にとって一番いい褒美だ」

「ええ、わたくしもそう思います。立派な演説でした」


 セリカが身を寄せてくる。

 いとおしくて抱き寄せる腕に力を込めた。

 すると俺の腕の中で「あぅっ」と可愛く喘いだ。



 ――と。

 エトワールが丈の短いドレスを揺らして駆け寄ってきた。

 すみれ色の瞳が泣きそうに潤んでいる。

「ケイカさま……アタクシは、お傍にいられないのですね……っ」

「そんなことはない。エトワールも、すでに大切な村の一員だ。これからも俺を支えてくれ」


 空いたほうの手でエトワールの手を掴み引き寄せた。

 赤い髪を波のように揺らして、俺へ寄り添う。

「あう……ケイカさま……」

「安心しろ。二人とも離してやらないから」


 くすっとセリカが寂しそうに笑う。

「わたくし一人では、必ず世継ぎを産めるとは限りませんから……」

 はっと息を飲む、エトワール。


「アタクシのわがままでしたわ。ごめんなさい」

「もういいさ。――それより、ケイカ教の教義も考えないとな」

「ふふっ。ケイカ教の第一教義、男も女も容赦しない、でしょうか?」

「それだと俺が悪人みたいだろ」

「冗談ですわっ」


 セリカは心の底から楽しそうに笑った。

 エトワールは少し頬を膨らませてふて腐れていた。


       ◇  ◇  ◇


 宴も終わってお開きとなった。

 妖精の扉へ向かいつつ、セリカが言う。

「ケイカさま、エーデルシュタインで仕事が残っていますので行って来ますわ」


「あまり無理しないようにな」

「はいっ、ケイカさま」

 ふふっと微笑むと、赤いスカートを揺らして立ち去った。


 エトワールは、旧ヴァーヌス教の司祭や神官で正義感の強い人を、ケイカ教に引き入れるため王都に残った。

 ヴァーヌス教の実体を知らずに信じていた者たちの、宗旨替えは認めてやっていいだろう。



 俺はミーニャを連れてケイカ村の屋敷へと戻った。

 ミーニャは酒に酔ったのか、ふらふらしている。

 時々俺にもたれかかる。吐く息が熱い。


「大丈夫か?」

「ん……なんでも、ない」

 名残惜しそうに体を離すと、ふらふらしながら自室へと戻っていった。


 ――そういえば、祝賀会でも随分と大人しかったが。

 俺は首を傾げたが、まあ病気ではなさそうなので気にしなかった。

 自分の部屋へ向かう。


 外からは人々の騒ぐ声が聞こえる。

 きっと、夜通し喜び続けるだろう。

 そんな騒音すら、今の俺には心地よかった。


       ◇  ◇  ◇


 深夜。

 自室のベッドで寝ていると、ふいに気配を感じた。

 一途でしなやかな気配。


 足音も衣擦れの音もさせずに近付いて来る。

 ベッドの傍へきたところで声を掛けた。

「ミーニャか?」


 とすっ、とベッドに飛び込んできた。

 俺の上に跨り、背筋を反らす。 

「ふなぁぁぁお~」


「ミーニャ? ――って!」 

 手を伸ばすと、柔らかな肌に触れた。ツンと尖ったささやかな胸、筋肉質な引き締まった肢体。

 ――全裸だった。


 ミーニャは俺にもたれかかると、首筋をぺろぺろと舐めた。

 圧し掛かる肢体が熱い。


「ケイカ、お兄ちゃん……」 

「どうした、ミーニャ?」

 頭を撫でると、痙攣したようにビクッと背筋を反らした。


「体が、熱い……ふにゃああぉぉ」

 まるで発情した猫の鳴き声。


「――まさか、発情した!?」

 そういえば、ここ最近、ずっと頬が赤かった。

 照れているのかと思ったが、よくよく考えてみればミーニャはそこまで感情を露わにできる子じゃない。



 すべすべした肌を抱きとめつつ言う。

「でも、待て。まだ子供に……」

「私、一つ歳をとった。もう大人……」

「歳を取ったのか。――って、そうじゃなくてだな」


 ミーニャは黒い瞳を潤ませて、切なげに喘ぐ。

「ケイカお兄ちゃん……苦しい……ふにゃぁぁ」

 堪えきれない様子で、俺の胸に顔を猫のようにぐりぐりと押し付けてきた。

 暗闇の中、黒い尻尾がぴーんと伸びて、耳もピッピと動いていた。



 そっと頭を撫でながら尋ねる。

「いいんだな?」


 ミーニャは、こくっと頷いた。

「……助けて」

「わかった」


 しなやかなで華奢な体を、ガラス細工のように優しく抱きしめる。

「ふにぁぁぁ……くぅっ」

 ミーニャはぎゅっと目を瞑り、口を俺の肩口に押し当てて声を殺した。

 腕にますます力を込めつつ猫耳にささやく。 

「ミーニャ。ずっと支えてくれて、ありがとうな」

「ケイカお兄ちゃん……。ううっ」


 すがるような熱い視線で俺を見て、激しく唇を合わてきた。

 猫のように一生懸命舐めてくる。

 ざらざらした舌が心地よい。火照った湿り気が絡み合って鳴る。


 それから、さらに俺はミーニャを優しくいたわっていった。


 手を動かしつつ、出会ってからの長い旅路が脳裏をよぎる。

 最初の頃は自分に自信がなく内気だった猫の子。

 俺を信じる巫女となってからは、料理に戦闘に、欠かせない存在となった。

 今や大胆に奉仕する凛々しい猫にまで成長した。

 ミーニャがいてくれなかったら魔王を倒すことはできなかっただろう。

 ――思い返すほどに、感謝の気持ちと愛おしさがこみあげてくる。


 ほのかな闇の中、ミーニャの熱い吐息と黒髪が激しく乱れる。

 キシキシとベッドが鳴る中、夜はどこまでも長く続いていった。

あと3話。この土日で完結させます。

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[一言] ここまで読ませていただきました。 ありがとうございました。 ハーレム展開になってしまったので ここで読了させていただきます。 次作は最終回まで読める 不快にならない作品を 書いていただけれ…
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