表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/17

再会(三人称視点あり)

 ◇◇◇◇三人称継続◇◇◇◇



「やっぱりあんただったのね。アイン」



 カトリが言った。

 アインは茫洋とした目で、カトリを見下ろしてる。

 その目には、昔にはなかったクマがあった。



「相変わらずバカだなお前。俺を糾弾してられる状況か? 俺がお前を助けに来たとは考えねえのか」


「考えるわけないでしょ気色の悪い。目の下にクマまで作って何やってるわけ? バカじゃない? 小心者なら小心者らしく、大人しくしてなさいよ」



 ガン!!



 アインが牢屋を蹴り飛ばす。

 カトリはそれを鋭く見据えた。



「いい度胸だな。お前も死んでおくか? カトリ」


「どうせ殺す気なんでしょうが」


「いや。お前を殺す気はない。どうせなら、俺とリリーシャ様がより強く結ばれるための、いしずえとなってもらう。――こいつでな」



 アインが胸元から小瓶を取り出した。

 中には黒い粒が無数に入っている。



「ブードゥドラッグ!?」


「御名答。本来庶民が魔術を使うための闇商品だ。代価として寿命を必要とするがな。こいつには面白い使い方がある。三日水と飯を抜き、胃の中を空にしてから二十粒以上を同時服用する。どうなると思う?」


「もったいぶらずにとっとと言いなさいよ」


「聞くところによると、人格が壊れるらしい。具体的に言うと幼児退行する。そして決して戻らない。ここの囚人で何人か実験済みだ。確かだよ」


「……クズ野郎」


「何とでも言え。さて」



 アインが懐中時計を取り出す。

 時間を見てアインがニヤリと笑う。



「念の為に四日待ったが、だが更に念を入れて後三時間待つことしよう。死なれても困るんだ。ぶっ壊れたお前を俺が救い出す。そうすることで、俺の邪魔をするものは消え、更に俺の評価があがることになる。家督を継いだ後の弟妹なんて邪魔なだけだからな。ここでお前の命を使わせてもらうことにするよ」


「呆れた。やっぱりあんたなんじゃない。ベレト兄を殺したのは。何が『そんなはずはない』よ。こんな時まで下らない嘘つかないでくれる? うざいから」


「残念だったな。あれは本当に俺じゃない」


「嘘つけ」


「お前は何もわかっていないな。いいことを教えてやるよ。カトリ」



 アインが鉄格子をつかんで、カトリを見下ろす。

 その口は三日月かと思うほどに、歪んでいた。



「ベレトを殺したのは――父上だ」



 カトリとアインが睨み合う。

 まるで時が止まったかのように。



「でまかせを! お父様を愚弄するな!」


「心底バカだな。ベレトが殺された日の前後を思い出してみろ。あいつは父上と話した後に殺されているんだぞ?」



『これから少し、お時間をいただけないでしょうか? 前の御膳試合をみていて、わかったことがあります』



 カトリの頭の中に、家族で食べた、最後の日の光景が思い浮かぶ。



「犯人は俺じゃない。キルバルトでもない。アイリスでもない。お前でもない。クロでもない。母上でもない。当時六歳のエイチカは論外。残っているのは、ナイツ、テリー、父上、暗夜の長ギークくらいのもので、ナイツを除いて全て父上の手足みたいなものだ。つまり誰であっても実質犯人は父上なんだよ。それ以外あり得ない」


「そ、そんな……」


「これが現実だカトリ。俺達貴族にとって、家族というのは邪魔者でもあるんだよ。家族を担いで自分が成り上がろうとする者がいるからだ。ベレトは強すぎた。だから、リリーシャ様との関係を進める俺の邪魔になる可能性があった。だから――父上はベレトを消したんだ。そういう人だよあの人は。昔からな」


「クッ!!」



 ギリリと、カトリは歯を噛み締めた。



「ふざけるな! お父様がそんなことをするはずがない! よりにもよってお前みたいなクズ野郎に! 血が繋がっていることさえ虫唾が走る!」



 さすがに言い過ぎたのか、アインのこめかみに青筋が走った。

 


 ガシン!!



 アインが力強く格子をつかんだ。



「全く同意見だよ。俺も虫唾が走る。お前らと半分でも血が繋がっていることがな」


「え……」



 半分?  

 


「だが覚えておけよゴミども!! 俺達は絶対に消されない! 本当の母様や、姉様のためにも! 俺達は必ず生き残る! 絶対にだ!」



 本当の母様や姉様?

 こいつ……。

 何を言って――



「ふーん。驚いたな。ベレト兄を殺したのは、兄さんじゃなかったのか?」



 突然の声の乱入に、アインとカトリが振り返る。

 


「放っておけば他にも色々聞けそうだったが、まあそんなことは、お前をとっちめてからまとめて聞けばいいことだ」



 二人の顔色が変わっていく。

 姿や態度は変わっても、声色は変わらないのだ。

 驚愕に顔を染めるアインを庇うように、キルバルトが前に立つ。



 それを見て、黒いコートの男は笑った。

 肩を揺すって笑いながら、丸いサングラスを持ち上げる。



「久しぶりだなー」



 その声からは隠しきれない愉悦が漏れていた。



「兄さん」



 魔呑症の証。

 黄金の瞳を光らせて、次兄殺しの冤罪をかけられたクロード=ローディスが笑った。



 ◇◇◇◇ここから一人称◇◇◇◇



「「クロ!!」」



 アインとカトリ姉の言葉が重なる。

 キルバルトは俺を鋭く睨み据えたままだ。



「バ、バカな……」



 アインが一歩下がった。

 その身体は産まれたての子鹿のように震えている。

 


「お前……魔力が……」


「ああ。おかげさんでな。戻ったよ。アイン兄さーん」


「坊ちゃん」



 アインを守るように手を出したのは、キルバルトだった。

 下がるアインとは対照的に前に出る。



 その勇ましさが、逆に俺の頬を緩ませる。



「ここは私がやりましょう」


「クク。ククク……」



 サングラスを持ち上げながら、俺も前に出る。

 キルバルトはやはり俺を見据えている。

 しかしその顔が――



「うっ! まさか! こんな――」



 徐々に驚愕に染まっていく。

 いや、恐怖か?

 キルバルトの顔が、脂汗でまみれる。



『お前が叶えたい願いというものは。復讐なんて矮小わいしょうなことではない。そうだな?』



 頭の中で誰かの声が響く。

 俺は――



「覚悟。できてるよなー? キルバルトォー」



 それが誰のものだったかもよくわからず、段階的に魔力を膨らませながら、笑った。

【神降ろし】一応は黒魔術に属し、神降ろしはその極致と呼ばれる。発動すると辺り一帯が吹き飛び戻ることもない。精霊魔術に近いが呼び出しているものは精霊でもないため、黒魔術に分類されている。またその威力もあり使い手が非常に少なく、歴史的に使えたとされるのは三人のみ。またその威力から全員に魔王の異名がついている。しかし時折地形が変化していることから、大陸に一人から二人は常にいるのではとされている。主人公もまた、神降ろしの使い手である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ