隠し事はすぐバレる ⑥
――真実。
その言葉に重みを感じたゼファは緊張のあまりごくりと唾を呑んだ。
「まず、どこからお話すればいいでしょうか……手始めに、昔話から致しましょう」
天井を見つめるアイビーの目はどこか遠い。
彼は思い出しているのだろう。この国が、まだ繁栄していた時のことを。
「あれは今から二十五年程前……ウィスタリア様が生まれる前のことです」
アイビー曰く、その頃のアクバールはとある計画を進めていた。ただし、その計画を知る者はごく僅かな関係者……妃ですら知らされていなかった。
「国王はグライス家の力を自分の手元にも置いておきたいと思っていました。あんな偉大な力があるのに戦で使うことを頑なに断ってきた一族ですが、国王側にグライス家がいれば関係のないことですからね」
「つまり……国王様は召喚術を『切り札』にしたかったということか?」
ゼファの言葉にアイビーは深く頷く。
国王側の目論見はよくわかる。
だが、そんなことをしてグライス家が黙っているのだろうか。
ゼファは疑問に思っていた。
それが顔に出ていたのか、アイビーは再び口を開けた。
「勿論、グライス家にはそのようなことは言っておりません。グライス家にはあくまでも国王の側近がほしいということで話を通しておりました」
最初は渋っていたグライス家だったが、王宮内でも召喚術の研究の続行は許可した。
そうとなれば、グライス家も断る理由がない。
「それで選ばれたのがアザリアって訳か」
「おっしゃる通りです」
「なるほどな……」
アイビーの証言にゼファは納得したように頷く。
研究室に残されていなかったアザリアのレポートも側近として選ばれた時に王宮に持ち込んだのだろう。
だが、結局は側近ではなく、隠し玉として扱われていたのだろう。
「俺ですらアザリアの顔を知らないってことは……ほとんど捕虜だったんだろうな」
アザリアの存在には公にできない。だから王宮として軟禁していたのだろう。
そして「使う」時がくればおそらく捨て駒のように扱われる。
「なんて惨いことを」
国王の行いにゼファは顔をしかめる。
だが、アイビーの表情は曇っていた。
「……それだけなら、よかったんですけどね」
「なに?」
アイビーの意味深な言葉にゼファは眉を上げる。
「国王がほしかったのは召喚術です。ですが、それを扱うには絶対的な主従関係が必要でした。つまり……『クラーレット家』でありながら、召喚術を扱える者がほしかったのです」
ここまで言って、ゼファはようやく事態を理解した。
だが、その真実を知った途端、頭の中が真っ白になった。
アザリア・グライスは裏切りなんかではない。
しかし、目を向ける真実はそこではない。
「ウィスタリアが……そうだというのか?」
口にした途端、ゼファは恐ろしくなった。
国王には妃がいた。
無論、彼女はグライス家ではない。
だが、アイビーは首を縦に振る。
ということは、アッシュに封印術をかけたのはウィスタリアになるということだ。
「しかし、それを妃様が許すはずがないだろ。いや、そもそも国民を騙せるはずがない!」
気づけばゼファは声を荒げていた。
もう訳がわからなかった。
ウィスタリアは国王と妃の間に生まれた子供ではない。
けれども、自分を含めた国民たちはみんな彼がこの国の正統な王子だと思っていた。
それがいきなり母親が違うなど言われても理解に追いつけなかった。
「そもそもご懐妊した時も国民には知らせるだろ? それをどうやって国民に誤魔化したというんだ。まさか、妃様にも協力を促したというのか?」
狼狽したゼファは動揺のあまりアイビーの両肩を掴んでいた。
けれどもアイビーはあくまでも冷静にゼファに真実を告げた。
「国王様は……両者共関係を持っていた。そして、同時期にご懐妊させた……そういうことですよ」




