表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/114

第五十三話 山かけ丼。


「山かけ丼。山かけ丼っ」


 楽しそうに山かけ丼を連呼して周りをうろうろするアリス。じっとしてて欲しいんだけどなぁ。危ないし。


「アリスあっちで座って待ってて」


「手伝う」


「そう? ならさっき掘った芋を川で軽く洗ってきてくれない?1本でいいからね」


「ん」


 芋を手に川へ向かって小走りで駆けていく。なんだか娘と料理してるお父さんみたいだなぁ。こんな可愛い娘なら大歓迎。

 アリスが戻ってくるまでに魚を下ろして醤油や出汁でつけておく。


「少しだけ山葵いれとこ。多すぎるとアリス食べれなかったら困るしね」


 ってわさびのチューブがもう無くなってしまった……。ワサビ田探しもしないといけないぞ。あるのかはわからないけど今度アリスに聞いてみようかな。

 魚のカマであら汁を作り、米も炊く。

お米も後6合くらいしかないや。どんどん地球産食材が無くなっていってしまってる。


「やばいなぁ」


「何が?」


「こっちの話」


 独り言をぼやいた瞬間アリスが戻ってきて聞かれてしまった。恥ずかしい。


「そ。これどうするの」


 洗ってきた芋を掲げて問いかけてくる。


「じゃあすり鉢ですりおろしてくれる?」


「すり鉢?」


「あー。えーとこれこれ」


 棚からすり鉢を取り出してアリスに渡す。


「使い方」


「芋をぐりぐりするだけだよ」


「??」


 頭にはてなマークを浮かべるアリス。

 めっちゃ可愛いな。


「貸してごらん? こうやってすり鉢で芋を擦っていくだけだからアリスでもできるよ」


「ん。わかた」


 ゆっくりと芋を擦り始めるアリス。


 途中から粘ついてなかなか思うようにすれなくてイラついてきたのか高速で回し始めた。

 そんなに乱暴にやると零すぞ……。

 案の定ネバネバで手が滑って豪快にとろろをぶちまけてしまった。


「あ〜あ……」


 勢い余ってアリスまでとろろに突っ込んでるし。


「ぬるぬる……」


「乱暴にやるからだよ。大丈夫? 怪我とかない?」


「ん。大丈夫。ごめん」


「いいよ。片付けとくから洗ってきなよ」


「ん」


 とろろでネバネバになったアリスを見送って机の上を綺麗に片付けてとろろを下ろし直す。

 ちょうど炊けたご飯をよそって魚の漬けをのせてその上からとろろをかける。漬けの汁を少しトトロに垂らして小口切りにしたネギを乗せて完成だ。

 めっちゃ美味そう。写真撮っておこう。

 携帯で写真を撮っているとアリスが戻ってきた。


「服どこに干す?」


「あぁ、干しておくよ頂戴……」


 服を貰おうと振り返ると全裸のアリス。


「どした?」


「タオルくらい巻こうか……アリス」


 渡さなかった俺も悪いけどさ。

 淡いエメラルドグリーンの髪が水に濡れて光を反射し綺麗に輝いている。こう見ると本当森の妖精とかだよね。


「くしゅんっ」


「あぁ、ほらはやく拭いて服着ないと」


 タオルを渡して服を用意する。俺のしかないけど我慢して貰おう。今度ローゼに用意してもらわないとね。マリーちゃんと同じくらいでしょ。


「ありがと。タオル」


 身体を一通り拭いたのかタオルを返してくるアリスだが髪が全然乾いてない。


「髪の毛全然乾いてないでしょ。おいで」


「ん」


 後ろからアリスの髪を丁寧に乾かしていく。それにしても長いな。


「アリス髪切らないの?」


「これがちょうどいい」


 さいですか。短くても似合うと思うけどなぁ。

 床屋さんみたいにマッサージしながら乾かす。まさか女の子の髪を乾かす日が来るとはね。

 アリスはされるがままにくらくらと揺れている。


「はい。終わり! はやく服着なよ」


 ジャージのズボンにTシャツのダサい格好だけど着ないよりはマシでしょ。


「ん。ユウタあれない?」


「ん? どれのこと?」


 名前が出てこないのかジェスチャーで伝えて来る。

両手を頭の後ろに回して前に持ってくる。フードのことかな?


「パーカー?」


「多分」


「さっき着てたやつ?」


「ん」


 あれそんなに気に入ったのか。パーカーなら腐る程あるからいくらでもいいよ。


「はい。これでいい?」


 アイテムボックスからパーカーを取り出してアリスに渡す。


「ありがと」


 着るとすぐにフードを被るアリス。


「邪魔じゃない?」


「全然」


「ならいいけど……。それよりご飯出来てるから食べよっか」


「山かけ丼っ!」


 本当ご飯の時だけアリスの声が弾むな。

 あら汁をお椀によそって山かけ丼と一緒にアリスのところに持っていく。

 漬物があればもっと和食ぽいんだけどね。たくあんとかさ。


「ん。これが山かけ丼っ」


 初めて見る山かけ丼に目をキラキラとさせている。


「どうぞ召し上がれ?」


「いただきます!」


「ちゃんと全部いっぺん食べた方が美味しいよ」


 一応言っては見たがもう聞いちゃいない。

 茶碗を持って口にかき込んでいく。一瞬で空にしておかわりをねだってきた。


「おかわり」


 口にご飯粒をつけながらおかわり待つアリスは見た目相応に見えてくる。


「美味しい?」


「凄く! 根っこにこんな食べ方あるなんて」


 根っこじゃなくて芋ね芋。


「普段はどうやって食べてたの?」


「ボリボリ丸齧り」


 まじかよ。本当にサバイバル生活してたんだね……。

 おかわりをアリスに渡して自分も食べ始める。


「うん。美味しいね。あら汁もちゃんと出汁取れるし」


「こっちにきて正解だた」


「それはよかった」


「毎日楽しみ」


「そう続くといいけどね……」


「ん?」


 調味料不足が著しいから近いうち贅沢終了かもしれない。酷だから言わないけどさ。


「まぁ、食べたら明日に備えて寝よっか」


「ん。でももかいおかわり」


 本当によく食べるなぁ……。小さいのに凄いね。


「これにとろろじゃなくて出汁入れても美味しいんだよ?」


「それにする」


「はいはい〜ちょっと待ってねぇ」


 アリスのおかげでローゼ来ない日も退屈しなくて済みそうだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ