第五十二話 アリスと伐竹。
「食べた食べた」
「どうだった?」
「さっぱりしてて美味しかったよ。でもナマコって奴はなんか独特な味だね」
「磯臭いからね。好みは分かれそう」
「私は別にもういいかなぁ〜」
そんなに好みじゃなかったか。俺も別にもう食べなくてもいいんだけど、まだまだたくさん残ってるのどうしよう。
「それじゃご飯も食べたし私は帰ろうかな」
「あ、帰る前にちょっとメモを書いてルネさんに渡して欲しいんだけど」
「メモ? いいけど……。メモくらい自分でかけばいいじゃん」
「ローゼ達は俺の文字読めないだろ?」
「あ、そうか? めんどくさいね」
「今度こっちの文字勉強してみるよ。とりあえずお願い」
「いいよー」
ローゼに紙とペンを渡して分量を書いてもらう。
「こんなもんかな」
「これなんの材料なの?」
「ソースだよ。ルネさんに用意して貰うように頼んでたんだ」
「なるほど」
「ちなみにルネさんの休みっていつかわかる?」
「んー、確か明後日じゃないかな〜?」
あれ? 案外早いな。森で伸びてるあいだにそんな縮まってたか。
いろいろやること済ませないと。
「わかったよ。ありがとローゼ」
「それじゃ私帰るねー! また来るから待っててね」
ローゼを見送ってから、フライパンの灰を仕舞ってたこ焼きに必要な物をまとめる。
「とりあえず出汁はいいとしてマヨネーズ、ソース、たこ、鰹節か。鰹節早いけど出来てたりしないかな?」
そろそろ仕込んでから何日だっけ? 2週間くらいか? 目安が1ヶ月だからまだ早いか。後10日くらいで使ってみてだな。
「じゃあ後は何が必要だ? 無いものは、たこと入れ物と串と……。あ、鉄板。やべぇ早く見に行かないと怒られそうだ」
明日行こう。キースさんに聞いて友人さんにたこを大量に仕入れてもらわないといけないのも忘れちゃいけないな。
「ならとりあえず入れ物を考えるか」
皿はむりだしあの焼き鳥包んでた葉っぱになるのかな。でもあれ食べにくそうだしなによりソースが垂れてきそうだからなぁ。
「また竹でつくるか。縦に半分にするだけで入れ物になるよね」
そうと決まれば早速作りたい所だが、持ってるだけじゃ全然足りないんだよなぁ。
また取りに行くの嫌だな……。あそこいい思い出ないし。
「アリスがいれば行くんだけど」
アリスの洞窟に寄ってからいくか? それだと結構遠回りになっちゃう。
「くそ。アリス連れて来るべきだったな」
「呼んだ?」
「そうそう。こんな感じで呼んだらきてくれたりしないかな」
「ん」
「だよねー。そんなに甘く……」
「どした?」
「いや、どした? じゃなくて何自然に居るんだよ……」
「普通に会話してたのに……」
「自分の妄想だと思ってた。心の声と会話してる的な」
いやだって居るなんて思わないでしょ。むしろなんで居るの? 洞窟暮らしじゃないのか?
「可哀想な子」
「洞窟は?」
「捨てた」
「なんで」
「美味しい物の為」
凄い行動力! ローゼみたいだね?
「じゃあ今はどこに住んでるの?」
「ん」
アリスは俺の家の方を指差す。漠然としすぎてわからん。
「そっち方面?」
「んん。ここ」
「いやこれは俺ん家だぞ?」
「屋根」
は? 屋根? この上に住んでたの?帰ってきてからずっと?
「全然気付かなかった……」
「ん」
得意げな顔のアリス。なんでそこにいるのに声もかけないんだよ!!
「話しかければいいのに」
「美味しいもの待ってた」
「他のものでもいたら食べさせるのに」
「お腹ペコペコ」
お腹に手を当ててさするジェスチャーで空腹を表現する。
「とりあえずご飯食べる……?」
「食べる」
さっきの余りを温めてアリスに出す。
「おかわり」
一瞬で無くなった。どんだけお腹減ってるんだ……。もしかしてあれからずっと待ってたのかな。だとしたら結構お馬鹿さん……。
「これで全部だよ」
残りを全部よそって片付ける。
「美味しかた」
「それは良かった」
「それじゃ行こ」
「え? どこに?」
「竹取りじゃ?」
あ、そうか。そんな話だった。
「今から?」
「美味しいものは待ってくれない」
「急いでも迎えにきてもくれないよ」
「むぅ」
とはいえ、割とスケジュールに余裕あるわけじゃないから行くのはありなんだけどね。
「それじゃぱぱっと行って刈り取って帰ろうか」
「ん」
マウンテンバイクに跨って前に走った山道に向かう。
「じぃー」
「ん? どうしたのアリス?」
パーカーのフードから翠と蒼のオッドアイが此方を覗く。
ロリでオッドアイで綺麗な髪色ってやっぱり可愛いなぁ……。別にロリコンじゃないけどこれは可愛い。この姿のまま大きくなればローゼ越すんじゃないかな?
ただの可愛い、美人より日本人的には設定があったほうがよりいいからね。
2人を地球に持って帰ってアイドルデビューさせてみたら稼げそうだなぁ。
「それ」
「え? マウンテンバイクのこと?」
「なに」
「自転車って言って移動手段の1つだよ。歩くより早い疲れないから現代人の必須アイテムだよ」
「知らないうちに人間進んでる……」
いや人間が進んだわけじゃなくて世界がずれてるんだ……。なんかごめんね。
「結構快適だよ?」
「乗る」
「アリスは小さすぎて無理だよ」
「むぅ」
頰を膨らませて不満を露わに抗議するアリス。
そうは言ってもサイズはどうにもならんよ。やっぱり早い所普及活動したほうがいいな。チェーンの部分を何とかして作り出せれば、いけそうなんだよなぁ。
「また今度ね? 美味しいもののために我慢しないとね」
美味しいもので釣ってとりあえずこの場を凌ごう。自転車に乗るのは控えた方がいいかも?
「仕方ない」
諦めて走り出したアリス。木から木を蹴り野を駆け、瞬く間に姿が見えなくなってしまった。
「……この世界はステータスでここまで人外になれるものなのか?」
ちょっとだけかっこいいからやってみたくもあるけど、相当なレベ上げしないと辿り着けなさそうだから諦めよう。
ノロノロとアリスの後を追いながらステータスについて考える。
「そーいやレベ上がったんだっけ。見てる余裕なくて即刻消したけど確認しておくか」
乗りながらだとかなり危ないけど、慣れたらながらスマホと変わらない。
レベルは2に上がってはいるけど他は特に数値変化なし。もしかしてこれって固定なのかな。
「上がるのはレベルだけかよー。異世界感無さすぎだろ〜」
ただのスコアなのかな。俺みたいに異世界バトルで生活したりし勇者になったりしてない奴らはいいけど、冒険者になりたかった人なら可哀想だ。
竹林に到着すると既にアリスがパカパカと竹を斬り倒していた。
「これ俺要らんでしょ……」
ナイフを逆手に両手で持ち竹の間を体を捻り回転させ駆け抜ける。
アリスが通ったところの竹が次々と倒されて道ができる。
俺の仕事はこれを全部回収することか……。
自転車を仕舞ってアリスが倒しまくっているる竹を回収して回る。
「何本下ろすつもりだよあいつは……」
これで50本目だぞ? 一本で何個作れるか計算してないけどもう十分だろ。
「アリス〜。もう切らなくていいぞ? 自然破壊しすぎんなよー」
残りの竹も回収しますか。
1本で25節くらいでそれを半分だから……1本50個で多分大丈夫か100くらいはあるから5000個か?作るだけで期間が終わってしまいそうだけど……。
ってもアリスがぱかぱか割ってくれれば焼いて少しいじるだけだろうしいけるかな? ローゼにもやらせればいいしね。
「こんな少し?」
「いや多すぎるよ……。半分も使わないかも」
「損した」
いや損て。いつかちゃんと使うから無駄ではないよ?
いずれは箸とかも作りたいな。作り方しらないけど。
「さて、アリス全部拾い終わったし戻るよ……って何してんの?」
アリスの方を見ると穴を掘って身体を突っ込んでいた。
「ご飯」
「土食べてるの……?」
「ユウタって馬鹿?」
人を馬鹿呼ばわりとは酷いなぁ。
「ならミミズとかモグラでも捕まえてるの?」
「違う。根っこ」
根っこ? 木の根食べる気なのか。気になって覗いてみると茶色く細長い根のようなものを掘り起こしていた。
「根っこじゃなくて芋じゃん。自然薯だっけ」
こっちではなんて呼んでるか知らないけどとりあえず芋。
「シャキシャキして美味しい」
「よく見つけたね」
「そこらに辺たくさんあるよ?」
まじか。たこ焼きに入れてふわとろにしようかな?
「ちょっとたくさん掘ってこうかな」
とろろにもできるしとろろ蕎麦とか? マグロ漬けに山かけもいいな。ネバネバ丼食べたくなってきたな。納豆作れないかな……。
「なんか作る?」
「そーだね。夜は魚とこれで山かけ丼にしようかな」
「魚も取らないと」
「街で買ってくるよ」
「川で獲れば?」
「海の魚の方が美味しいんだよ」
「わかた」
とっとと掘って帰りますか。またモンスター出てきたら嫌だからね。アリスいれば倒してくれるだろうけど……。
女の子に護られるのもちょっと恥ずかしいしね?





