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第五十一話 ナマコ。


「あ、やっと居たよ〜。起きてー!!」


 ドアを開けて横になっていた俺を目掛けてダイブしてくる。

 そんなことするのはローゼしかいない。

 危ないからやめろって前に言ったのにね? もう忘れたのか。次やってきたらどさくさに紛れて揉んでやろうか。どことはいわんが。


「危険だって」


 華麗に回避して布団にダイブしてきたローゼを、空中で頭を叩いてはたき落とす。


「っ痛い〜。ユウタの方が危険じゃん……」


 自業自得だよ。


「そんなことより何しにきたの?」


「そんなことっ!? 何しにきたって冷たいなぁ……。最近きてもずっと居なかったんだもん。どこに行ってたのさ」


「森奥でゴブリンの群れに嬲られてたよ」


 思い出すだけで泣きそうになる思い出だ。


「森? ここらへんってモンスターいないはずだけど……」


「かなり奥だよ? 歩いたら半日以上はかかるところ」


「へぇー。わざわざモンスターに殺されかけに行ったの? それとも逆に倒しまくったり?」


「数には勝てないよ。あれはトラウマだよ」


「いいなぁー? 私ゴブリン見たことないんだよねぇ〜」


「みる? 死んでるけど」


「え? 持ってきてるの!? みたいみたい!!」


「はい」


 アイテムボックスから死体を一体ローゼの目に前に落としてやる。


「へ?」


 目の前にいきなりゴブリンが現れて呆けるローゼ。


「ほらこれがゴブリンだよ?」


「どこから湧いたの?!」


「そんな些細なことはいいから見終わったらさっさとしまうから早くしてよね」


 家にゴブリンの死体なんて置いておきたくないよ。永久封印リストなんだからとっとと封印させてほしい。

 何か納得いかないような顔をしてゴブリンを見つめている。


「初めて見たけど割と普通だね? 食べれるのかな?」


 ローゼの好奇心は底知れない……。絶対食べたくないし調理もしたくない。


「硬くてまずいらしいよ?」


 そう言ってとっとと仕舞いこむ。余計なことになる前に片付けておかないとね?


「ユウタなら柔らかく美味しくできるんじゃないの?」


「できたとさてもやりたくない。捌きたくないし」


「ふーん美味しくなるかもしれないのに」


「それなら最初から美味しいってわかるものを作るよ」


「んじゃ作って〜」


「家空けてたから何も食材がない」


「大丈夫! ちゃんと持ってきてるから!」


「今日は何持ってきたの?」


 今日は中華が食べたい気分だな、餃子とか。今度皮作ってみようかな?


「じゃじゃーん!! よくわからないシリーズパート2! 海のヌルヌルしてるやつ2匹目!」


 水のなかに入っていたのはなんとナマコだ。

 ナマコだよね? 多分。地球と同じ形だし。


「こんなの魚屋で置いてないでしょ」


「うん。また前回の知らない人がくれたの」


 キースさんの友人か。この人って毎回よくわからないヌルヌルしたやつを配り歩いてるのか? 食材だと知らずに……。

 一度会っておきたいな。貴重な人脈になりそう。


「ナマコかぁ……。どうしようかなぁ」


「ユウタこれ知ってるの?」


「知ってるけどあんまり調理法かま浮かばなくて困ってるよ」


「私は揚げ物以外がいいな」


「更に範囲絞ってくんな」


 本当にわがままだなぁ。本当に何作ろうか困ったもんだな。なんかレシピないか調べてみるか。


「ローゼ暇なら畑に水やってきてよ」


「ほーい」


 畑に向かったローゼを見届けて教科書やら料理本を漁る。

 ナマコってタコワサみたいにするのしか知らないんだけど、他になんかあるのか?


 調べたけど特に出てこなかった……。酢の物でもいいけどご飯にならない。

 鳥の唐揚げでも作ろうかと思ったけどローゼから揚げ物禁出ちゃってるからダメだし、調味料と具材が限られてるとあげるのが1番楽でなんとかなるのに、全くわがままなお嬢様のせいでこんな苦労しないといけないよ。


「ラーメンの出汁の練習も兼ねて出汁とって鳥肉でも煮込むか……」


 あとは家にある茄子で煮浸しにして和食でいこう。やっぱり和食が美味しいよね。貴重だからお米は使わないけどまぁパンで我慢。


「ご飯できた〜?」


「そんな早くできるわけないだろ。今からだよ」


「えー。暇なんだけど……」


「釣りでもしてたら?」


「つまんないじゃん釣れないし」


 まぁ確かに釣れないけどさ。だって他にやることなんてないんだもん。ここ異世界で森だよ?


「それじゃあそこらへんに生えてる雑草の処理しててよ」


「えー。掃除じゃんか!!」


「ちゃんと終わったあとには葉っぱと根っこで分けておいてね」


「聞いてる!? いやだよ掃除なんて!」


「料理でちゃんと使うよ」


「嘘つき! 雑草だよ? どう使うのさ」


「ラーメンに使いますー」


 本当だからね? ちゃんと使うから。こんなんで嘘つかないから……。


「ラーメンって雑草入ってるの……?なんか食べる気失せた〜」


「別に雑草を入れるわけじゃないから……。いいから黙ってやってきてよ。ここでこのまま話しててもご飯は永遠にできないからね?」


「しょーがない。ここはユウタに騙されて掃除してきますかー」


 だから本当に使うんだって。掃除も兼ねてるけど。

 ローゼも行ったことだしとっとと作りますか。

 鍋に水と煮干しと干し貝、市販の鰹節を少し入れて中火で火にかける。

 茄子はてきとうに乱切りにしておく。ネギと人参を鍋用にカットする。

 ナマコも下処理をして内臓を取り除いて薄くスライス。肉も一口大に切っておく。


「全部出汁が取れないと完成しないんだよな」


 完成した出汁をザルで濾して味見してみる。


「お、意外と美味いぞ? 異世界品だけでもちゃんとしたの作れそうかも?」


 出汁と醤油砂糖塩にチューブの生姜少々を混ぜて素揚げにした茄子を煮込む。


「煮浸しなんて久々だなぁ」


 茄子はやっぱり煮浸しが1番だよね。

 ナマコも出汁と醤油と砂糖とお酢を合わせたものにつけて置いておく。内臓は塩でつけて塩辛にした。

 ちなみにナマコ20本くらいあったから全部内臓だけ取り除いて余ったナマコは食材リストの糧になりました。

 出汁の半分を鍋に戻してネギと人参、それに肉を入れて弱火で煮込む。

 醤油と塩、チキンブイヨンを少々。


「やばいなぁ。地球産の調味料を使いすぎてもう無くなってきたぞ……。早い所移行できるようにしていかないと」


 茄子の鍋が沸騰したら火から外して冷ます。料理がほぼできたしローゼの方もやりに行きますか。

 フライパンを手にローゼの元へ向かう。


「ローゼ終わった?」


「今根っこと葉っぱ分けてるところですよーだ! ……やっと終わったぁ!!」


「じゃあそれ川で洗ってきて」


「……はいはい」


 そんな嫌そうな顔しなくてもいいのに。最初にラーメン食べたいって言い出したのローゼなのに。

 根っこを燃やして処理してローゼが洗ってきた葉っぱをフライパンに乗せて火をつける。


「せっかく採って分けて洗ったのに燃やすの……。私の苦労は」


「綺麗な葉っぱが必要だったんだよ」


 後は灰になるまで放置。


「よし、ご飯食べるか」


「ご飯待ってました!!」


 家に戻ってお皿に盛り付けていく。


「なんだお肉あるじゃん」


「ローゼの持ってきたものが利用価値なさすぎてメインに出来ないから仕方なく非常食切ったんだよ」


「ふーん。だからあれみんな食べないんだね」


 そういうわけじゃないとは思うけど……。


「これくらいしか使い道がないんだよ」


 酢の物をローゼの前に置くと変な顔をされた。


「変な料理」


「見た目はご愛嬌だよ」


「今日は全部汁っぽいね?」


「出汁とってみたからね。せっかくだから使ってみたよ」


「出汁ってラーメンに使うやつ? もうそんなに進んだの?」


「まだまだ試作も出来ないよ。やっと第一歩って感じかな」


 実は麺さえ作れば塩ラーメンならできそうなんだけど今はたこ焼きに忙しいから黙っておこう。


「早く食べたいなぁラーメン」


「完成したら街で一回だけお店やるからね? 大量に煮干しとか仕込むの手伝ってよ」


「美味しいものはみんなで楽しまないとね! もちろん手伝うよ。その分たくさんラーメン食べるけどね」


「早めにできるように準備していかないとね」


 お金と調味料が尽きる前にね……。


「まぁとりあえずは目の前の美味しいものを食べようよ!今日も食べてルネに自慢しないと!」


「可哀想だからあんまり虐めてあげるなよ?」


「話さないともっと萎えるもん」


 容器かなんか持ってきて持って帰ってあげればいいのに。ローゼには無理か。


「いただきまーす」


 たいして重要ではないのかご飯を食べ始めるローゼ。

 今度なんかルネさんに作ってあげよう。



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