第五十話 アリス3。
「ふ〜。ご馳走さま」
「ごちそーさまぁ」
食った食った。さてそろそろ帰らないと。
「そーいやここどこ?」
「森の中?」
そりゃ知ってるよ。帰り道が知りたいんだ。
「家の方角がわからないんだよ」
「それならこっち」
なんで知ってんだ。いや知らないと困ったことになるんだけども。
「なんで知ってるの?」
「魚美味しかった」
味を思い出しているのか頬を緩めて涎を垂らしている。
「お前が犯人かよ!!」
「てへ」
てへ。じゃないわ!!
「モンスターじゃなかっただけ良かったけどさ……」
「ちゃんとお詫びした」
あの鳥か。確かに貰ったけども。
「せめて羽も取ってくれよ」
「普段取らないし」
普段どんな食生活してるんだよ……。
やっぱアリスからアマゾネスに名前変えた方がいいんじゃない?
「む。なんか失礼な事考えられてる気がする」
勘の良さとかもう完全にアマゾネスじゃないすか。
可愛らしい見た目であのトランプ模様の似合うアリスって名付けたのに!
「と、とりあえず帰りる方向がわかってるならもう少し探し物がしたいな」
「肉?」
「いや肉じゃない。いい匂いがする葉っぱとかなんだけど」
いい匂いの葉っぱってなんだかディンジャーな香りがするよね。
「それならたくさん」
腰の布袋をゴソゴソと漁り始めた。
「手」
出せってこと? アリスの前に両手で皿を作る。
するとその上に小さな手一杯に握った細かい粒を落とす。
「ちょ多いって」
一度アイテムボックスに入れて竹の容器を取り出してその中に入れる。
「ある?」
中身を確認すると色んな種類の物が入っている。
見たこともないようなのもあるなぁ。これ全部香草なんだろうか?
少しずつ手に取ってお目当てのものがあるか調べていく。
「オールスパイスにクミンとカルダモンまで……。フルコースじゃん!! これとこれとこれ! どこで採ったの!?」
まさかこんな簡単手に入るとは思わなかった。
思わぬ収穫だ。
「そこらへんにたくさん」
そう言ってしゃがみこんで生えている草をちぎる。
「ん」
へぇー。植物の状態で見たことなんて無かったからわからなかったけど、確かにそこら中に生えてるな。
「でもアリスはこれ料理しないのになんで持ってんの?」
「そのまま食べたり、傷につけたり」
薬として使ってたのか。凄い知恵だな。
漢方的な感じかな?
「これがたくさん必要なんだけど……」
「何に使うの?」
「美味しいものを食べる為に必要なものを作るために必要なんだ」
「美味しい……」
何を想像してるのかまた涎がたれてるぞ。
「アリスも出来たら食べに来なよ」
「手伝う」
物凄いスピードで駆け回って刈り取っていく。
機械使うより早いなこりゃ……。
「アリス〜。程々にね。怪我したら危ないからさ」
心配するだけ無駄だと思うけど。
ものの10分でそれぞれが山のように集まった。これをちゃんと精製しないといけないんだけどそれは帰ってからゆっくりやろう。
「ありがと」
「美味しいのいつ」
「これを使った物を使って、また物を作ってそれを使ったものだからすぐはうまくいかないよ」
「そう……」
そんな露骨に落ち込まなくてもいいじゃないか。それだと俺が悪いみたいじゃん。
「来週には食べられるかもよ?」
「来週?」
「あと5回くらい寝たらかな?」
ルネさんの休みの日次第なんだが。また詳しくは聞いてないから正確な日時はわからない。
「お休み」
「いや、今から寝てもカウントされないからね?」
「嘘つき?」
いや普通に考えてそうでしょ!?
「嘘じゃないけど……。じゃあ言い方を変えよう。寝たらじゃなくて朝が来たらね?」
「遠い……」
そうは言われてもなぁ。
「他ので良かったら毎日なんか食べてるから良かったら食べに来なよ」
「いく」
即答かよ。これからはローゼに加えてアリスの分も作らないといけなくなりそうだ。
「それじゃあ今日は帰るよ。お目当ての物も手に入ったし。助けてくれてありがとね」
「ん」
さて、少し歩いて、自転車が乗れそうになったらさっさと乗り込んで帰っちゃおう。
このいなかった間にローゼが来てたら怒られるだろうなぁ……。
理不尽な文句を言われるのめんどいなぁ。ほっぺでもつついてやるか。
「待って」
「ん? どしたのアリス」
「これ」
ゴブリンの死体の山を指差し頷く。
いや全くどういう意味がわからないよ?
「ゴブリンがどうかした?」
「持ってって?」
え、いや要らないんだけど。遠慮とかじゃなくてガチで。ゴブリンの死体を集める趣味なんてないし、できればモンスターとは疎遠でありたい。
「こんな大量にどうするのさ」
「仕舞えばいい」
くそ。アリスに話したのが間違いだったか。
大体モンスターの死体なんていれられるのかよ。試しに指先で触れてリストに突っ込んでみる。
「あ、いけちゃった。死んでりゃいいのかよ」
それを見て満足げに何度もコクコク。と頷くアリス。これはもう全部持って帰るしかなさそうだな。
ひとまず、モンスター置き場を作ってそこに仕舞っておこう。
永遠に取り出されることはないけどね。
ゴブリンの肉なんて食いたくないし。
「これでいいかい?」
ちゃんと全部処理したよ。リストの表示を見ると『ゴブリン(死骸)×35』となっている。アリス35体も1人で倒したのか……。あ、1匹は殺したから34か。34も35も変わらんか。こんな小さくても強くなれるんだなぁ。
俺も少しはレベ上げた方がいいのかも……。今回みたいなことがあったらいくら命があっても足りないし。
「完璧」
「よし、それじゃまたね。好きな時にうちにおいでよ」
「ん」
命まで助けて貰って、こんなにたらふくお土産までもらってしまった。お土産というよりゴミなんだけどね……。
教えてもらった方角を早歩きで進んでいく。さっさと自転車が乗れる場所まで行かないとまたモンスターにエンカウントしてしまう。
とっとと帰りたいね。
乗れる場所まで歩いて、そこからマウンテンバイクで家まで突っ切る。やっぱり歩くより何倍も楽だし早い。これ量産できないのかな、普及させてあげたいけどなぁ。
その後無事モンスターにも会わずに家までたどり着けた。アリスのおかげだな、煮干し作っておいてよかった。
ちなみに帰りにちゃんと竹のエリアで筍を採集しておきました。





