第三十八話 燻製試食会。
最後のチーズの反応が楽しみだね。さけるチーズを裂いて渡す。チーズ×燻製の初見コンボにどんな反応するのかな?
「ユウタこれはなに?」
「これはチーズって言って乳製品だよ。牛乳を発酵させて作ってるやつ、なはず」
詳しくは知らないので後で本でも見て探して見ます。知ったかしてすいません。
「発酵?」
「まぁ、腐ったって感じかな? 腐ってるんだけどいい腐りと悪い腐りがあっていい方?」
説明が難しいな。詳しくは農家に聞いてくれ。
「えーそれって結局腐ってるんじゃん……。そんなもの食べてんの? ユウタたちは」
めっちゃバカにされた気分だ。発酵の素晴らしさがわからないのか。ローゼはただ腐ったものでも食べときゃいいんだ。そしてお腹壊せ!
「違うから、いい菌と悪い菌がいるんだよ」
「菌ってなに?」
あーそっからなのか……。なんで腐るのかまだ分かってないのかこの世界って。もしかして思ってるより低文明……。
おっと悪口はいけない、これからこの世界にお世話になるんだ。それに菌の仕業とかわかったのは化学が進んだ結果だよね多分。
どうしたら腐るのかはわかるけどなんでかは分からないってところか。
「空気中には見に見えないくらい小さい菌とかが沢山いるんだ。その中のいい菌が材料に付いて増えた結果出来上がる的な? 俺も専門じゃないからちゃんとは説明出来ないよ」
「うぇ〜。てことはその菌って奴を毎日、毎呼吸、吸ってるの……。気持ち悪くなってきた」
考えすぎだろ……。そんなこと言ったら微生物さんに失礼だろ! あれ? 菌じゃなくて微生物だっけ? どっちだ……。まぁいいや。細かいことは気にしない微生物と菌だけにね。
「結局はその菌? を利用してチーズと言うものを作る技術なのは判りましたけど原料の牛乳というのはなんなのですか?」
ローゼがさらっと流した言葉もちゃんと拾ってるルネさんマジ有能すぎ。
「牛の……。こっちではコウの母乳ですよ。まぁ他の動物からも作ることは可能ですが」
ヤギとかヤクとか。羊も取れるのかな?
「なるほど。その動物たちの肉じゃなくて乳を使うんですか。殺したら取れませんねそれ」
「だからこっちではペットと言ったら変ですがコウを飼ってる人達がいますよ。毎日その乳を取るために。乳からいろんなものか作られますからね。ただこの世界で、となると作られるものが限られてしまって困り物なんですがね……」
実際チーズとヨーグルトに生クリームは菌と遠心分離機的なものが必要になると思うからすぐに作れるのはバターくらいじゃないのかな。
「なるほど、てことはこれはユウタ様の世界の物ですか。貴重なんですね」
「でもいつかこっちでも作れるようにしたいんで気にしなくていいですよ。そのうち食べられるようになりますって何十年後かはわかりませんが」
「まぁ美味しければ腐っててもいいか! いただきまーす」
まだここに理解してないやつがいた。生暖かい目で見守ってあげよう。
「んで? どう腐った食べ物の味は」
「美味しい……。腐ってる癖にやりおる……っ! おかわり!」
「ありません。次のおかわりは数十年後です」
「えーそりゃないよ! ユウタの分あるじゃん頂戴よ!」
アホか。なんでそれでもらえると思ったんだ。ほらルネさんも取られないようにゆっくりとフェードアウトして行ってるし。
「やだよ」
取られる前に一口で口の中に放り込む。その瞬間にローゼは「あぁ! 薄情者!」と罵るが俺には関係ない。むしろ少ないものを分けあってるのにそれを寄越せという方が薄情じゃないか?
「気長に待ちなよ」
「ユウタは今食べたい物を数十年待ち続けられるの? 凄いね」
嫌味か。ないものはないんだ仕方ないじゃないか。駄々をこねるんじゃない!
「ローゼはこれでも食っとけ」
そう言ってアイテムボックスから煮干しを取り出して放り投げる。
「あっ、危ないじゃん! 落としたらどうすんのさ。食べ物を投げないの」
ローゼに正論を諭されてしまった。気をつけます。
ローゼから逃げるようにフェードアウトして行ったルネさんはどこに行ったんだ?
まぁそのうち戻ってくるだろう。鰹節の作業を進めるかな。
「燻製試食会はこれで終わりだよ。今日はもうひたすらこの魚を燻して冷ましてを繰り返すだけだから帰ったら?」
「うわ、あんなに手伝わせといて用が済んだらとっとと帰れってそれでもユウタは人間か!」
「いや別に帰らなくてもいいんだけどね……。ただ見ててもつまらないでしょ?」
魚を取り出して網のに乗せて冷ます。
「確かにやることないけど帰っても暇なの」
「家で自分で燻製作ってみたら?」
「それこそ庭なんかでやったら煮干しの時より大事件だよ?火事って思われたらどうすんのさ。匂いも知らない人が嗅いだら何事だって思うでしょ」
確かに……。ローゼどうしたんだろう。突然まともな人間に進化した。
「じゃあなにするの?」
「……やることない」
口を尖らせてつまらなさそうにポニーテールを揺らしている。
喋ってない時が一番可愛いんじゃないかなローゼって。
そんな会話を続けているとルネさんがいつのまにか戻ってきていた。
「ローゼお嬢様。私は帰りますがどうしますか?」
「あれ? ルネ帰っちゃうの」
「休みとはいえ厨房の方も少しは覗いておきたいですから」
なるほど。早速作って見たいんだな。顔を見ればわかる。凄いワクワクした顔をしてる。
ルネさんが帰るならローゼも帰った方がいいんじゃないのか。
「うーん。帰っても暇だしなぁ」
「いても暇だろ」
「そうなんだよねぇ。帰るかぁ。今度いろんなもの持ってくるからその時燻製祭りね!!」
「枝集めるのもローゼの仕事だからね」
「そこは一緒に集めてよ……。それじゃルネ帰ろ」
「はい。ではお邪魔しました。今日は色々教えて貰ってありがとうございました。また来ますね」
お辞儀してお礼を述べるルネさん。
丁寧すぎる……。どうにかならないもんかね。
「いえ、こちらも人がいた方が楽しいですから。またいつでも来てくださいよ」
「ばいばーいユウタ〜」
ローゼはもうちょっとまともになれ! 2人とも極端なんだよ。
2人を見送ってから日が暮れるまで魚を燻しては冷ましてを繰り返した。





